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【十二の星の華】悲しみの襲撃者

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【十二の星の華】悲しみの襲撃者

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 なかなか進まない時計の針がようやく3周ほど回り、待ちに待った昼休みがやってくる。一日で一番学校が活気づく時間帯だ。今日は新しい顔がいるということで、教室はいつも以上の盛り上がりを見せていた。
「リフルさん、お昼ご飯はご用意してありますの?」
 リフルの横でさけが尋ねる。
「もしないのでしたら、わたくしのお弁当をお分けしますわ。毎日たっぷり二人前はあるお重を持たされるので、量は大丈夫ですの」
 さけが立派なお重を机の上に広げる。それを見て、リフルは今日初めてぴくりと体を動かした。
「ダーリン、古代シャンバラ史専攻ってことは、あの転校生きっと昔の遺跡とかに興味あるジャン? どうやったら仲良くなれるかな」
 リフルを囲む輪を横目に、自称美少女トレジャーハンターのイーディ・エタニティ(いーでぃ・えたにてぃ)は、なんとかリフルと交流を図れないものかとパートナーの葛葉 翔(くずのは・しょう)に助言を求める。
「そうだな、まずは転校生の前の席の椅子に座って、向かい合う形で話しかけるんだ。次にそのパンを渡して、彼女が食事をしにいくという逃げ道を塞ぐ。後はイーディが持っている古代シャンバラに関するアイテムを見せて興味を引け。無視されてもめげるなよ」
「分かったよ、ダーリン。ありがとうジャン」
 アドバイスをもらったイーディは、翔にウインクをして輪の中へと入っていく。
「私イーディっていうの、よろしくジャン。あ、パン多めに買ってきたから、私もどっちか一個あげる。ここの場所代だと思ってくれればいいジャン」
 イーディは翔の指示通りリフルの正面に陣取ると、こんなこともあろうかと購買で買っておいた焼きそばパンと蒼空きなこパン、そして牛乳を差し出した。
 リフルは左手の箸を重箱に伸ばしたまま右手で焼きそばパンを受け取り、片手だけで器用に袋を開けていく。
「古代シャンバラ史専攻だよね、古代の遺跡とかに興味ある? 私こういうの集めてるジャン」
 パンを渡すことに成功したイーディは、すかさず古代の食器や書物、通貨を取り出す。食べ物をせっせと口に運ぶリフルは、興味があるのかないのか、無表情でそれらを見つめていた。
「わあ、すごいですね」
 イーディのアイテムを見て代わりに感嘆の声を上げたのは、六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)だった。
「私のパートナーのアレクさんも、シャンバラ古王国の滅亡時に何が起こっていたか調べているんですよ。リフルさんはどんなことを調べているんですか?」
 優希もリフルに話題を振ってみるが、無心で食事を続けるリフルはそれどころではないようだ。
「すみません、ゆっくり召し上がってください……」
『スマシタ顔シテ、食イ意地ダケハハッテルヨウネ!』
「福ちゃんたら、そんなこと言ったら失礼よー」
 福ちゃんを取り戻して復活したカナが茶々を入れる。
 そこに、一歩引いたところから様子を見守っていた誠治が加わった。
「きゃー、福ちゃん逃げて!」
「そう警戒するなよ、さっきは悪かったって。――ところでみんなに提案なんだけど、学校じゃあまりゆっくり話もできないし、リフルさんの歓迎パーティーをやらないか? つってもラーメン屋で食事するだけだが」
 そう言って誠治が教室のクラスメイトたちを見回す。
『女ノ子ヲラーメン屋に連レテクナンテ、センスナイワネ』
 そんなことを漏らす者もいたが、生徒たちは概ね賛同した。
「というわけでどうかなリフルさん? 無理にしゃべらなくてもいいし、お近づきの印に」
「……ラーメン……」
 誠治の誘いに、リフルはHRでの自己紹介以来初めて声を発する。
「そう。オレとにかくラーメンが好きでさ、有名な店を知ってるんだ。来てくれたらおごるぜ」
「おごり……」
「替え玉もつけちゃおう」
 誠治が更なるサービスを申し出る。リフルはしばしの沈黙のあと、静かに口を開いた。
「行く」
「よっしゃ、決まりだな! それじゃあ今日はリフルさんも転校初日で色々あるだろうから、明日にしよう。来るやつは放課後正門前に集合な」
 こうして誠治たちはリフルと歓迎パーティーの約束をとりつけたのだった。
「あの転校生意外に面白いな。見かけによらず食欲は旺盛なようだ」
 離れたところからイーディを微笑ましく見守っていた翔は、リフルの様子を見て楽しげに携帯電話を取る。
「円にでもメールしてみるか。きっと興味津々でやってくるぞ」