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年越しとお正月にやること…エリザベート&静香

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年越しとお正月にやること…エリザベート&静香

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第5章 空京のお寺で除夜の鐘つき

-1月1日 AM0:00-

「早めに待っていたかいがあったな。一番最初に俺がつく!」
 奇跡が起こると信じて皇祁 黎(すめらぎ・れい)は想いを込めて思いっきり鐘を打つ。
 ゴォオーンッ!
 彼の思いと共に鐘の音が辺りに響く。
「誓夜とずっと一緒にいれますように。あわよくばキスされたり、ごにょごにょされたりしますように」
 お願い事は鐘つきのところではなく、初詣の別のところでするだが、勘違いしている黎はそこで祈ってしまう。
 ブツブツとお願い事を言う彼の傍にいる飛鳥 誓夜(あすか・せいや)に丸聞こえだった。
「(いつかね・・・)」
 そう心の中で言い、真剣に祈る黎の姿にクスリと笑ってしまう。
「かつてのパートナーと会いたい。―・・・・・・出来れば・・・じじいではなく、生前の男前な姿で・・・」
 皇祁 万太郎(すめらぎ・かつたろう)は現在のパートナーと同じく、そこでお祈りするものだと思い、元パートナーの日本人の彼に会いたいと願う。
 ずっと順番を待っていたせいで、黎の黒髪に積もった雪を誓夜が手で払ってやる。
「はわっ!?」
 さりげない行動に黎は顔を真っ赤にして驚いた。
「雪が積もっていたから払ってやったんだ」
「そ・・・そうか・・・・・・。うぅっ寒い・・・、―・・・なっ!?」
「寒そうだったからな」
「あ・・・ありがとう・・・」
 突然マフラーを巻かれて照れている黎の姿が可愛らしく思えた。
 まだ寒そうにしている彼のために誓夜は出店に売っている温かい味噌汁を持ってくる。
 ぴとっと黎の冷えた頬にくっつけると、驚いた拍子に転びそうになってしまう。
「すまない、驚かせるつもりはなかったんだ」
 石畳の上に転びそうになる彼の肩を片手で支えた。
「寒がっているから持ってきたんだが飲むか?」
「―・・・あぁ、ちょうど欲しかったんだ」
 器に入った味噌汁を受け取り、冷えた両手を温める。
 温かい飲み物が欲しかったわけじゃなかったが、誓夜からもらって嬉しそうにする。
「リンゴ飴もあるぞ」
 飲み終わった器を渡してもらい、出店のリンゴ飴をあげた。
「(願い事がちょっと叶ったか・・・?)」
 もらったリンゴ飴を食べながら、願い事を思い出す。
 彼らのやりとりを万太郎は羨ましそうに見つめた。
「鐘もつき終わったし、おみくじがあるようだから引きに行こうか」
 黎たちはくじ売り場に立ち寄り、今年一年の運を願ってそれぞれくじを引く。
「小吉か・・・。タロちゃんはどうだった?」
「中吉だな」
「へぇよかったなー!あれ、誓夜は・・・?」
 くじの結果を見て即、御神木にくじを縛る。
「何引いたんだ?」
「あまりいいやつじゃなかったから縛ってきたんだ」
 彼が引いたくじはあまりに酷いくじだったから、2人には見せなかった。
「そうなのか・・・」
「(あんなの見られるわけにはな)」
 誓夜が引いたくじはものすごく最悪な、超ウルトラ最大凶という恐ろしい災厄に遭遇するかもしれないというやつだ。
 開運は災厄を避けるためには、パートナーの傍を離れないことだった。



 寒そうに順番を待っている清泉 北都(いずみ・ほくと)に、クナイ・アヤシ(くない・あやし)が白のマフラーを首に巻いてやる。
 黒のセーターの上に茶色のダッフルコートを羽織り、下も色を合わせて黒のデニムと、ショートブーツを履いている。
 クナイの方も北都と似た服装で鐘つきにきていた。
「ありがとうクナイ。あ、次は僕たちの番だね」
 北都は紐を引き、力いっぱい鐘をつく。
 コン・・・・・・。
 あまり力がないせいか悲しい小さな音が出た。
「えぇー・・・・・・おかしいな。なんでちゃんと音が出ないんだろう」
 もう1回チャレンジしたそうな顔をして紐を見つめる。
「次は私ですね」
 ゴォオーン・・・。
 クナイが紐を引き、鐘をつくと綺麗な音色が響く。
「むぅっ・・・・・・」
 煩悩を落としに来た北都は、なるべく悔しがらないように我慢していたが、クナイの方がいい音が出たためムゥッとする。
 不服そうに眉を吊り上げて悔しがる北都の姿は、クナイにはとても可愛らしく見えた。
「おみくじでいいやつ引いてやるんだからっ」
 くじで気分を晴らそうと、おみくじ売り場に行く。
 番号を書いた棒が入っている箱をカラカラと振って1本出す。
 書かれた番号のくじを渡している巫女のところへ行き受け取る。
「うーんと・・・え・・・・・・。えぇ!?」
 見間違えかと思って何度も見直すが、大凶以上の恐ろしい結果を引いてしまう。
「私は中吉のようですね」
「―・・・。(超凶・・・クナイには見せられないな)」
 すぐ御神木に縛り、悪いのが抜けるようにお祈りして帰った。



 弐識 太郎(にしき・たろう)も除夜の鐘を鳴らそうと順番を待っている。
 袴ではなく黒い武道着を着て腰に黒帯を巻いていた。
 ここへ来る前に引いたおみくじは凶だったから、拳で突かせてもらえるか不安だった。
「やっと順番が来たか・・・。拳で試してみたいんだが・・・」
 格闘家の修業の一環として、寺の和尚に頼む。
「修行?そのようなことに使うことはならぬ!」
 強い口調で和尚に叱られてしまった。
「―・・・修行と言うと絶対、こう言われるだろうな・・・」
 言い方を変えようと言葉を考える。
「和尚・・・去年の煩悩を今年に持ってこないようにしたい」
「ほう・・・・・・?していかように」
「その鐘を拳で打ち鳴らし、煩悩を拳で砕きたいんだが・・・」
 太郎の言葉に和尚はしばらく考え込む。
「―・・・ふむ、いいじゃろう」
 許可が出た太郎は壊さないように加減しようと、鐘に手を触れて強度を調べた。
 鐘に一礼をして盛夏の骨気によって右の拳に闘気を纏わせて黒色の双眸を閉じ、心頭滅却して全ての雑音が耳に入らないように精神を集中させる。
「せいっ!!」
 ゴゥゥウーーンッ。
 棒でついたではない拳で突いた100回目の鐘の音が周囲に響き渡る。
 頑丈な鐘はまったく無傷の状態だった。
 大怪我しないように女王の加護を発動させたおかげで、手が痺れる程度で済んだ。
 鐘を突き終わった太郎は一礼をして帰っていった。



「ソーニョ、一緒につこうよ〜」
 順番がマグたちに回り鐘をつく。
「えぇっ?ちょっとマグさん!?」
 マグの頭から鐘をつく棒に乗せられ、不安にかられて声を上げる。
「ソーニョ君、そんなトコに乗ってて大丈夫・・・っ」
 プレナが声をかけるのと同時に、棒から手を滑らせたソーニョが勢いよく頭から鐘へ突っ込む。
「あぁ〜・・・」
「・・・あわわ、ごめんソーニョ、ついノリで・・・!」
 慌ててマグはぺちゃんと鐘つきの棒の上でぐったりしているソーニョを頭に乗せ直した。
「でも、いい音がする・・・。これ、マグとソーニョで鳴らしたんだよ、すごいでしょ♪」
「たしかにいい音でしたね・・・。(鐘のステキな音色と、僕の頭の音・・・)」
「よぉし、次はプレナが!」
 お掃除でしつこい汚れを落とす時のような気合を込めて紐を引き鐘を鳴らす。
 綺麗な音色が冷たい空気を振動させて響く。
「やったぁ〜、綺麗な音が出たよぉ」
 少女は満足そうな笑顔になる。
「おみくじがあるようですから引きに行きません?」
「そうだね、行こうー」
 3人はおみくじ売り場へ走り、受け取ってくじの紙を開く。
「ちょ・・・超凶!?」
「ひぇええ、何ですかこれぇえっ」
「たぶん・・・もうその結果が出たかも」
「あ・・・」
 鐘にソーニョが飛ばれたのを思い出し、今年の運は不運に見舞われやすいと悟った。