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パラミタ黒ウサギは、悪夢を見せる

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パラミタ黒ウサギは、悪夢を見せる

リアクション

「アッ!」
  瞬間。黒い穴を避けたとき、ウサギは罠にはまっていた。
 ネットに捕らえられた黒ウサギに、クルードが駆け寄る。
「戦うことなく……話し合いで解決したいのだ……お前なら知っているだろう……」
「駄目だよ、解決したら僕も消えちゃうよ、せっかく大金持ちになったのに。日本にだって行けるのに」
 ウサギがめそめそ泣いている。
「黒ウサギさんは、関係ない人達を巻き込んでますし、それは絶対にダメ……!」
 しょうがなくといった感じで、ウサギが声を出す。
「起こせばいいんだっ、この街の一番偉い女帝を!」
「ヴァイシャリーの女帝って?」
 プレナの頭に一人の顔が浮かんだ。


10 再び城の中

 そのころ城ではトランプ兵によるチェスが行われている。
 広間中央の少し高さのある盤が置かれた。
 パラミタのチームは、栗のパートナー羽入 綾香(はにゅう・あやか)と栗、エレンディラ、葵だ。
 綾香はボーンのトランプ兵に入れ知恵を授けている。
「八列目まで進めば、クイーンになれるぞ。クイーンになれば女帝と同等じゃ、もうドレイではない」
 パラミタチームの士気があがる。
 女帝チームは、トランプ兵が行っている。
 始めのころ、チェスはルールどおりに進んでいた。
 異変が起きたのは、ボーンが敵陣地に進んだときだ。ボーンがクイーンに代わるとき、なにやら景色が揺らいだ。
 本物の女帝がマス上に立っている。
 それを契機に、すべてのボーンがルール無視で、敵陣地に駆け寄る。きがつくと4人の女帝がマス上に立っていた。
 黒い髪の女帝は、武尊だ。影武者一号(スペード)。
 緑の髪の女帝は、パトリシアだ。影武者二号(クローバー)。
 赤い髪の女帝は、真希だ。影武者三号(ハート)。
 そしてピンクの髪の女帝は、ロッテンマイヤー。影武者四号(ダイヤ)。


「ここからは新ゲームだわ。最後まで盤上に残ったクイーンを私の後継者とする。落ちたものは首を刎ねるぞ」
 女帝は高らかに笑う。

 国頭 武尊(くにがみ・たける)のスペードの女帝が、叫んだ!
「冗談じゃねえ、首を刎ねられるのも、女帝になるのも、どっちもいらねーよ!」
 襲ってくるトランプ兵をなぎ倒している。
「ちきしょー!こいつら殺せないんだよな、どうすりゃいいんだ」

 パトリシア・ハーレック(ぱとりしあ・はーれっく)は、盤に昇って来たガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)の援護に追われている。
「これは私の戦いですわ、ガートルード、お願いですから降りてください」
「いやです」
 ドラゴンアーツで武装するガートルード。

 遠鳴 真希(とおなり・まき)はひたすら逃げている。
「あたしもいらないよぉ。助けて!」

 ロッテンマイヤー・ヴィヴァレンス(ろってんまいやー・う゛ぃう゛ぁれんす)だけがこの事態を面白がっている。
「ミナゴロシだ、ヒャッハー!」
 空中に向けて乱射している。
 
 チェス盤から飛び降りた栗と綾香は、盤からトランプ兵を引っ張り下ろしている。
「もう戦っちゃだめです。勝負は終わったのです」

 時間になった。
 外で待機していた、志位 大地(しい・だいち)は花火の導火線に火をつける。爆発音が響く。大広間にいた
 トランプ兵は外に飛び出してゆく。
 約束では、この5分後に総攻撃が始まるはずだった。



 それまで忠実なメイドだった小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が、動いたのはこの時だ。武器はメイド服のスカートに隠しておいた光条兵器を女帝に向け、背後から轟雷閃で攻撃する。
 しかし、既にその場所には女帝はいない。
 女帝は、チェス盤の戦いの中に紛れ込んでいる。
 美羽は、女帝のあとを追う。

 それまで、女帝に忠臣を尽くしてきたナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)も裏切っている。
 ドサクサにまぎれて、女帝の右肩を付く。女帝の長い髪が肩の辺りでスパッと切れた。
「アンタ中々の女帝っぷりだったぜ、7番目ぐらいだなァ下から数えて」
 ナガンは冷ややかな笑い声を残して、混乱する広間から去ってゆく。


 物陰に隠れていた戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)が戦いが時間よりも早く始まったことを知った。目配せをして、リース・バーロット(りーす・ばーろっと)に合図を送る。
 リースは、兵に対して光精の指輪を使って目くらましをした後に火をつけた爆竹を投げ入れる。
 煙幕ファンデーションを使って煙幕もはった。
「トランプ兵は傷つけるな、女帝だけを狙うんだ」
 小次郎は、女帝が飛び乗ったチェス盤の上に飛び乗る。
 トランプ兵は火に弱い。火災を連想した兵たちは、一目散に出口へと殺到している。
 小次郎が逃げ出そうとする女帝を捕まえる。
「ちがうちがう、俺だよ」
 確かに声は武尊だ。
「紛らわしいです」
 再び、女帝を探す小次郎。
 アイリスが飛び込んできた。今度はアイリスを援護するために、ショットガンを構える。弾は警察が暴徒鎮圧用で用いるゴム弾だ。




 宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)は女帝が優勢と見て、女帝を取り囲むメイドたちにウインクをする。既に彼女たちは祥子の味方だ。
 一斉に、女帝から離れ、祥子の背後に隠れる。
「逃げなさい!」
 その一言で、メイドたちは大広間から外へと飛び出した。

 高務 野々(たかつかさ・のの)は、逃げ遅れたメイドたちの手をとって外へと誘導している。足が震えて歩けないものもいる。
「大丈夫、私を信じて!」
 震える肩を抱き、外に連れ出す。

 道明寺 玲(どうみょうじ・れい)は、先ほどボールや風船に変えられたトランプ兵を集めていた。戦況の間をぬって、かごにボールをつめてゆく。
「モノ扱いはかわいそうです」


 冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)は、まだ女帝に忠誠を尽くして戦うトランプ兵を殴り倒している。倒れたトランプ兵は、これ以上怪我をさせないために、廊下に引っ張り出す。
「なんでこんな薄い身体なのに、重いのかしら」
「手伝います」
 正気を取り戻した稲場 繭(いなば・まゆ)が小夜子を援護しつつ、トランプ兵を安全な場所に移動している。


 煙幕が消えたとき、女帝は気が付いた。大広間に一人の味方もいないことを。
 髪の短くなった女帝を他の女帝候補が取り囲む。
 従順なトランプ兵の姿もメイドも消えていた。今回りにいるのは、戦う意志を持ったものばかりだ。
 アイリスが女帝に詰め寄る。

 神代 明日香(かみしろ・あすか)がやってくる。
「あぶなぁーい」
 少し隙を見せた女帝に、後ろからその身を蝕む妄執で女帝に幻覚を見せる。
 女帝の首がぽろっ取れて女帝自身を見上げる悪夢だ。
 悲鳴をあげる女帝。

 鬼灯 歌留多(ほおずき・かるた)が大広間にやって来た。
「わたくしの宝だけが開きませんの、きっとここに何かが眠ってますわ」
 アイリスが歌留多が風呂敷に包んだ宝を切り裂く。
 暖かなオルゴールのメロディが流れてきた。その音は少しずつ大きくなりーーーーーーーーーーー


 そのころ、コタツで眠ってしまった葛葉 明(くずのは・めい)が起きた。人の寝息がする。コタツの中には3才ぐらいの女の子がいる。栗色の髪が愛らしい。
「起きたほうがいいよ、風邪引くよ」
 明が女の子を揺する。
 女の子の表情が険しくなる。青い瞳がひらいた。


11 穴の外


 プレナ・アップルトン(ぷれな・あっぷるとん)は、百合園女学園の校長室にいる。対応しているのは、桜井静香(さくらい・しずか)だ。
「あの…さんに新年挨拶をしたいんです」
「それが、まだ寝てるんだよね」
「どうしてもです」
「ごめん、新年は楽しい夢が見れるから起こさないように言われてるんだけど、ちょっと見てくるね」
 すぐに静香は戻ってきた。
「なんだかすごい悪夢を見てるみたいなんだけど、目を覚まさないんだ・・・」


 リリリリーーーーーーーーーーーーー!
その室内。目覚ましの音が鳴り響いている。
「なんだか嫌な夢をみましたわ」

アイリスがいつの間にか、この部屋に来ている。
「嫌な夢に付き合わされて大変でしたよ」