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リアクション
ドサッドサッ。
椎堂 紗月(しどう・さつき)と有栖川 凪沙(ありすがわ・なぎさ)は、食卓で昼食を取る女帝の前に落ちた。
女帝は目を見開いて二人を見ている。
「なぜ、そちはそのような格好なのだ?」
紗月は、女帝に良く似たドレスを着ている。
「なぜって、ウサギから買ったんです、ホホホホー」
紗月は女帝を真似して高らかに笑った。
「黒ウサギ、私を裏切ったな」
女帝は激昂している。
「わらわがそちをメイドにしてあげよう」
紗月に女帝が手を向けたとき、するっと女帝の傍らに寄る紗月。
「あらあら・・・そんな些細なことでお怒りになって・・・・それでよく女帝が務まるものですわねぇ?配下のウサギさんにもいらぎられたようですし?本当に貴女に忠誠を誓った配下などいるのかしら?」
「何を!」
「私にお任せを!」
紗月の前に立ちはだかったのは、レロシャン・カプティアティ(れろしゃん・かぷてぃあてぃ)とネノノ・ケルキック(ねのの・けるきっく)だ。
「私は最強でスーパーなファイター・メイド、レロシャン!そして、こっちがパートナーの愛と破壊のマシーン・メイド、ネノノです!」
「そこまでだ賊共!女帝様に逆らう愚かな者達め・・・クックック、ワタシが地獄に送ってやる!排除!排除!」
二人はポーズを取ると、女帝を護るように武器と取り出す。
「この人たちなんか変だよ、紗月、無茶した駄目だよ」
凪沙が紗月の腕を掴む。
レロシャンの後ろでは、女帝の信任を得ているメイドの高務野々と冬山小夜子が身振り手振りでなにやら訴えている。
「凪沙、なにやら様子がおかしい・・・アイリスを探してこのことを告げてくれ」
頷く凪沙、ずるっずるっと後退して、ドアから外に飛び出す。
「追え!」
女帝の一言でトランプ兵たちが凪沙を追いかける。
室内ではレロシャンとネノノと紗月が対峙している。
「私達は女帝様に忠実な戦うメイド・・・。人は私達の事を“夢と地獄の超絶メイドコンビ”と呼びます!この先に進みたければ我々を倒していくがいいです。もっとも、そんなことは不可能ですけどね!わーっはっはっはー!」
女帝がふわっとあくびをした。
「ロボとメイド・・・この王道で至高の要素2つを併せ持つワタシは無敵だ!くらえ!ロボメイド流・爆炎波!!」
機晶姫のネノノが攻撃を仕掛けようとしたとき、三人の姿が消えた。
テーブルの上には見事なオルゴールが載っておる。
「レロシャンが忠実な僕なのは分かったわ、だけど今は食事中。しばらく戦いは中断じゃ」
オルゴールの曲に合わせて、紗月とレロシャン、ネノノが丸いステージの上でお互いを追いかけている。
凪沙はひたすら外に向けて走っている。
どこかにアイリスさんたちが潜入しているはずだ。
しかし、トランプ兵は以外にすばやかった。
捕らえられた凪沙は、紗月が回るオルゴールに加えられる。
ドサッ。
食後、念入りに化粧を施す女帝の前に落ちてきたのは、マッシュ・ザ・ペトリファイアー(まっしゅ・ざぺとりふぁいあー)だ。
おとなしそうな顔をしているが心は違う。マッシュは、トランプ兵に変えられてる。絵柄はジョーカーだ。
「今頃やってきたのか」
女帝の言葉にニヤッと笑うマッシュ。
「なぜジョーカーなのだ?」
「自ら希望しました」
膝を突き、頭を下げるマッシュ。
「ジョーカーは黒ウサギの『一番のオススメ』のしるしだわ。わらわを愚弄する黒ウサギがそちにジョーカーをつける、どういう意味じゃ」
「まあ、よい。傍に居れ」
「御意」
再びニヤッと笑うマッシュ。
マッシュが来てから、城の中は少しずつ変わってゆく。
なんといっても調度品が増えているのだ。
今、マッシュが手にしているのは本物そっくりのゴキブリのおもちゃだ。
メイドたちが背丈ほどの皿を運ぶ足元にそっと投げる。
「キャー」
一人のメイドが転倒すると他のメイドも倒れる。
皿の割れる音が城内に響きわたる。
「何をしてるのだぁ」
女帝の怒りに、その場に居合わせたすべてのメイドが新しい大皿に変えられた。
人が調度品に変わるたびに、マッシュはうっとりとその様子をながめている。他人が物に変わるのを見るのが大好きなのだ。
どりーむ・ほしの(どりーむ・ほしの)は、落ちてきたときからトランプ兵の人気を集めている。愛らしいミニスカートのメイド姿はフリルがふんだんに使用され、アイドル歌手のようだ。
ちらちらちらっと見える胸元や…にトランプ兵は任務を忘れて見入っている。
時折話しかけてくるトランプ兵もいる。
「いけませんわ、あたしは女帝さまのメイドですのに」
どりーむは軽くいなす。
その様子を意地悪そうにみているのは、マッシュだ。
「ほぃ」
どりーむが女帝の前を通り過ぎるとき、いつものゴキブリおもちゃをほうり投げる。
が、どりーむは動揺すらしない。
足でポンっとマッシュに蹴り返した。
次にマッシュが仕掛けたのは、ピアノ線。
これもどりーむは、周囲の取り巻きトランプ兵を犠牲にすることで、難なくクリアしてします。
「なんとしても調度品に変えて見せます」
その機会はすぐにやって来た。
どりーむのまわりのトランプ兵が次々と調度品にかえられ、トランプ兵が足りなくなってきたのだ。
「もうよい、そちたちは勝手に遊べ!」
女帝の一言で、どりーむは城の外にある噴水の台座に変えら、マッシュは女帝の杖に変えられた。
「せっかくのジョーカーであったのに…」
女帝はブツブツ文句をいっている。
ドサッ。
そのころ、やっとドリームのパートナーふぇいと・てすたろっさ(ふぇいと・てすたろっさ)が城にやってきた。
「どり〜むちゃん!どり〜むちゃん!どり〜むちゃんはどこっ!」
大騒ぎだ。
どりーむは、落ちた場所のすぐ前にいる。噴水の台座がどりーむに似ていることに気がついたふぇいとは、濡れるのもかまわず、どりーむに抱きつく。
「どり〜むちゃんなの?そんな…きっと元に戻してあげるからね たとえどり〜むちゃんがどんな姿になっても、ずっとそばにいるよ。好き……うん、大好き…あいしてる…」
ふぇいとはドリームの台座に撥ねる水滴を綺麗にふき取っている。
「絶対助けるからね!」
ぽろぽろ、ふぇいとの涙がどりーむにかかる。
5 城の外
ルイ・フリード(るい・ふりーど)は一人森の中を歩いていた。アイリスが黒ウサギを締め付けていたところを見ていたルイは、うっかり穴に足を踏み外し落ちてしまった。
黒ウサギはアイリスから逃れようとジタバタしていたので、穴は巨大だった。
皆がたぶん城に連れて行かれたのに、自分が森にいるのはそのためかもしれない。
「まあ、勘を頼りに歩けば、なんとかなるでしょう」
城があると思われる方向をあてずっぽうに決めて歩き出す。よく見ると道らしきものや矢印のような看板もある。
「住人がいればいいのですが」
周囲を見回してみるが、人の気配はない。
神楽坂 有栖(かぐらざか・ありす)も森の中にいた。
一緒に散歩していたミルフィ・ガレット(みるふぃ・がれっと)が黒い穴に落ちてしまい、途方にくれていたとき、アイリスと黒ウサギの話を聞いて、穴の中に飛び込んだのだ。
「どこかで見たような景色です。大きな芋虫さんとか縞々模様の猫さんとかいるんでしょうか」
「いないよ、ウサギならいるけどね」
ピョンと有栖の前に飛び出してきたのは、帽子を被った黄色いウサギだ。
「これからお茶会をするんだ、招待するよ。そっちの人もね」
有栖はウサギが声をかけた後方を振り返ってみる。そこにはルイが立っていた。
黄ウサギは野原にテーブルと紅茶セット、シフォンケーキを置くと、有栖とルイを無理やり座らせる。
「何しに来たんだい?」
黄ウサギが自分のカップにだけ、紅茶を注いで、おいしそうに飲んでいる。
「黒い穴に落ちた大切な人を探しに来たんです」
「私は、偶然おちてしまって家に戻る道を探しています」
ルイは空っぽの紅茶カップを眺めている。
「今日はボクのなんでもある日なんだ、おめでとうといってくれるかい」
また黄ウサギが自分のカップに紅茶を入れ飲み干す。
「嫌な黒ウサギが失脚したらしい、万歳だ!」
「なんでワタシのカップには紅茶がないのですか」
ルイが問いかける。
「何でだって、見れば分かるだろっ」
有栖が自分の前に置かれたカップを持ち上げる。
「キミの大切な人はどんな外見だったんだい?」
「髪は銀色で、目は青く、肌は抜けるように白くて・・・」
有栖は手にしたカップを見る。
美しい白地に銀と青の細工が・・・
「もしかして・・」
「お城からもらってきたばかりだよ、さっき出来たてなんだ、料理が不味かったらしい」
クククッと黄ウサギが笑う。
「ミルフィ・・・ミルフィなの?」
両手に包んだカップがかすかに揺れたようだ。
有栖の瞳から大粒の涙がこぼれる。次から次へと流れる涙がカップを満たす。
カップから涙が零れ落ちたとき、
「有栖お嬢様、重くありませんか」
ミルフィが有栖の膝の上に現れた。
「せっかく貰ってきたのに。まあ今日は何でもある日だ。一緒に祝ってくれた御礼にあげるよ」
ルイは自分のカップをみている。
褐色で青と黒の模様がはいっている。
「これも・・」
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