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君を待ってる~雪が降ったら~

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君を待ってる~雪が降ったら~

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第3章 うさぎとだるまとかまくらと
「おお〜、雪! 雪、雪、雪、これが雪かぁ〜!」
 今まで生きてきて、雪というものにほとんど縁がなかった鈴虫 翔子(すずむし・しょうこ)は、はしゃいだ声を上げて白い大地を踏んだ。
「おっ……おおぅ〜? 何か今、スポッといったよ、スポって……」
「そんなにはしゃいでると、転ぶわよ……って、遅かったわね」
 パートナーの八神 ミコト(やがみ・みこと)が思わず天を仰いだ。
「うわっ、冷たい! 見て見てすごい、ボクの人型がついたよ!」
「はいはい。でも、そのままじゃ風邪ひいちゃうし他の人の迷惑だから、ね」
 雪遊びするにも場所を考えましょ、よいしょっと翔子を立たせるミコトの歩みは対照的に、危なげないものだった。
「ううっミコトっち、頼もしすぎ……それ、除雪の道具?」
「ええ。除雪用具のスノーダンプです」
「偉いね、除雪の手伝いするんだ……」
「いいえ、そりとして使います。童心に返って」
「え? あ……そうなんだ」
 唖然とする翔子を尻目に。
「私も子供の頃は『ソリ乗りのミコトちゃん』と呼ばれたものです」
 なんて言いつつ、スノーダンプに器用に乗り、雪斜面を滑り降りるミコト。
「……おお〜、様になってる。……って、ちょっと待ってよ!?」
 後を追いつつ、翔子はその後やはり数度に渡って、雪にめり込んだのだった。
「これ、夢じゃないよね」
「驚きましたが、現実ですね」
クイーンヴァンガードの活動の為に蒼空学園を訪れていた秋月 葵(あきづき・あおい)エレンディラ・ノイマン(えれんでぃら・のいまん)の目は、校舎を出た瞬間、点になった。
 さっきまで普通の校庭だったのに、今は真っ白。
 とすれば、やる事は一つしかなかった。
「用事も済んだことだし、少し遊んでいっても問題ないよね?」
「そうですね、楽しそうです」
 葵の住んでいた地域はあまり雪が降らなかった。
 なので、やはり珍しいわけで。
「うわっ、足がズボッってなる、おもしろ〜い!」
 足跡がつく……というより埋まりながら、葵は隣でやはり同じようにめり込んでいる翔子と目が合い。
「少し冷たいけど、フワフワしてて気持ち良いね〜♪」
 楽しそうに笑み交わした。
「浩くん浩くん、これ不思議……ほら、冷たいの!」
「そんないっぱい乗せたら、手がビショビショになっちゃうよ」
 羽鳥 浩人(はとり・ひろと)は頬を真っ赤にして息を弾ませたフィサリア・リリス(ふぃさりあ・りりす)に、「可愛いな」と口元を緩めた。
「あっ本当……何で溶けちゃったの?」
「フィサリアがかわいいから、恥ずかしくなって消えちゃったんだよ」
「……そうなの?」
「うん、きっとね♪」
「じゃあ私、触らない方が良い?」
「ううん、いっぱい触ってあげたり遊んであげたりしたら、雪も喜ぶと思うよ」
「うん、分かった」
 浩人にしっかりと頷くフィサリア。
「本気にしちゃいますよ、フィサリアちゃん……たくさん遊ぶのは賛成ですけど」
 そんなやり取りに、笑みを含んだ柔らかい声を掛けたのはアリア・ブランシュ(ありあ・ぶらんしゅ)だった。
 後ろのパートナー、リュート・シャンテル(りゅーと・しゃんてる)シオン・リナルド(しおん・りなるど)は妙に緊張感漂わせていたりするのだが、アリアは気付かず。
「わあ……凄い積もってますね……私も雪って初めてです!」
 同じく感嘆の声を上げた。
「折角ですし、一緒に遊びませんか?」
「うん! 浩くん、良い?」
「いいよ、いっておいで。フィサリアをよろしくね」
「はい」
 アリアは浩人に請け負い。
「雪の上を歩いた後は滑りやすいらしいから気をつけないと……雪のこと、ちょっとは勉強してきたんですよ?」
 得意げに説明するアリアを、フィサリアは尊敬の目で見つめたのだった。

「おお、寒い寒い。皆、この寒い中、良くやるねぇ……とはいえ俺も、似たようなもんか」
 赤城 仁(あかぎ・じん)はパートナーの一人であるナタリー・クレメント(なたりー・くれめんと)に半ば強引に引っ張られてきた己を顧みて、白い息を吐いた。
「大方、みんなで雪かきしてっから、俺らもやるべきだとか言い出すんだろうなー」
 それはナタリーの性格を考えれば如何にもありそうだった。
 けれど、校庭にやってきたナタリーの口から出たのは、予想外の提案だった。
「さて、折角ですし、皆で遊びましょうか」
「……え……えええええ〜、ナタリー熱でもあるのか……うげっ?!」
「失礼な。私だって遊びたくなる事もあります……四六時中気を張ってたら、疲れちゃいますよ」
 額に怒りマークを浮かたナタリーから雪玉をくらい、仁は気付いた。
 ナタリーがチラと玉白 茸(たましろ・きの)を窺った事に。
 そう……ナタリーが言い出したのは、茸の為なのだと。
「うはー……、寒いし眠いぜー……。……ここんとこ、変な夢ばっかで、ちっとも寝た気がしないんだよなあ」
 その茸はどこかぼんやりと、佇んでいた。
 仁と契約してからそう日は経っていない。
 そして仁やナタリーと出会った時、茸は何も覚えていなかった。
 過去の思い出も、大切な人の存在も、自分の名前さえも。
 仁とてそんな茸が気にならないわけではなかった。
 ただナタリーはより、気にかけているのだろう。
(「本人は隠し通してるつもりみたいだけど、寝ながら涙する所を見てしまったら、とてもそうには見えませんよ」)
 そんな茸に、掛ける言葉が見つからなくて。
 ただ、伝えたかった。
「私達が一緒だから……って」
「……ん? 何か言ったか?」
「ナタリーが、早く遊びましょうってさ」
 仁はナタリーと茸に一つウィンクを投げると、スコップを手にした。
 多分除雪用の備品だが、この際借りてしまおう。
「雪もたくさんあるし、かまくらでも作ってみるか。遊べもするし、寒さも凌げてくつろげるしで、俺には合ってるぜ」
「私は茸さんと一緒に雪ウサギを作って見ましょうか。こう見えても、作るの結構得意なんですよ」
「そう、だよな。オレの知る限り初めての雪だしな、遊ばなきゃもったいないかもな」
 ナタリーに手を引かれた茸は小さく呟いた。
 眠気がまだとれない。
 だけど、せっかくナタリーと仁が誘ってくれたのだから。
「お〜、面白いように足跡つくなぁ」
「真新しい雪ですからね」
「って、何でオレのは猫に見えるんだ? ナタリーのはちゃんとウサギなのに」
「えっと……味というわけで」
 そうしてみると、雪遊びというのも面白かった。
 憶えていないのにどこか、不思議と懐かしくて。
「そういや、今朝の夢……俺と似た顔の子供らが出てきて、雪を投げあったりしてたっけ」
 ふと茸の脳裏をかすめる、ぼやけた景色。
 それは捕まえようとするとスルリと逃げてしまい。
 その度に胸がチクリと痛むけれど。
「その前は、机に向かう男の夢とか、誰かに抱かれて暖かかった夢もみたな。ありゃ、やっぱり昔の……」
 ぽすっ。
 知らず項垂れた頭に、軽い衝撃。
 びっくりして顔を上げると、雪がパラリと落ちた。
「こらーっ、仁! スコップから雪飛ばすんじゃねーよっ」
「おっ、悪い。見えなかった」
「ったく、人が感傷に浸ってるってのにこいつと来たら……」
 ぶつぶつ文句を言いながら、雪ウサギらしきもの作りに再チャレンジを始めた茸。
 仁とナタリーは気付かれぬようそっと、微笑みを交わしたのだった。
「むぅ……あっちの雪ウサギも中々……ていうか、雪ウサギって可愛いわよね」
 ひとしきり雪の感触を堪能した葵もまたエレンディラと共に、雪ウサギを作りまくっていた。
「それにしても随分と沢山作りましたね。……大家族さんですね」
「んーとね、こっちの大きい子がお父さんで、これが……」
 それはそれは嬉しそうに一つずつ指し示す葵に、エレンディラは優しく目を細め。
(「ちょっと勿体無いですし、お土産として雪うさぎをお持ち帰りしましょう」)
 氷術を使えば出来るでしょうし……葵の喜ぶ顔を思い浮かべつつ計画を練ったのだった。
「お隣は大家族さんだね。こっちも負けてられない、かな」
 浩人もまた、まったりと雪ウサギを作りつつ、雪原のフィサリアを眺めた。
「とにかく習うより慣れろ、論より証拠、百聞は一見にしかず……ということで」
 視線の先。アリア・ブランシュとフィサリアは雪玉作りを敢行していた。
 アリアが予習しておいた、雪の日の楽しみ方その1。
「まずは雪だるま、大きい雪球と一回り小さい雪球を重ねて作る雪像です。小さい雪球を上に乗せたら枝を刺して手や顔を作るらしいです」
「えっとこう……こんな感じでしょうか?」
「雪玉はしっかり固めた方が良いと思うの」
初めて、と言う事でぎこちないフィサリアを見かねたのは、遊雲・クリスタ(ゆう・くりすた)だった。
小さな手で器用に雪玉を作る。
「うんうん、上手上手♪ 夜魅も虹七ちゃんもこうやって雪玉作って、そうそう、こーやって転がして……」
 ジュジュに促され、怖々といった感じで雪を手に取る夜魅と虹七。
「せっかくだし、夜魅ちゃんと遊びに行っておいでよ……私も後から行くから、ね?」
 そんな風に虹七はアリア・セレスティから送りだされたのである。
 夜魅と同じく、虹七もこんな体験は初めてで。
「……ゆき……ゆき……あうぅ……つ、つめたい……」
「ひゃっ! 本当だ、冷たい?!」
 雪を見るのが初めてな二人の気持ちが、怖々から段々とドキドキわくわくへと変化していくのがジュジュにはよく分かった。
「でね、これを二つ重ねて、木の枝でこうすると……ね、これなら簡単でしょ」
 木の枝で顔を作ると、ステキな雪だるまさんの出来あがり。
 子供たちの目が大きく見開かれる。
 やってごらん、と言うジュジュに夜魅も虹七も大きく頷き。
「これを転がす……こ、転がらないよ?」
「平地で難しいなら、こういう所を使うの」
「……あ、コロコロする」
 遊雲のアドバイスで斜面を使うとあら不思議、小さな雪玉がどんどん大きくなっていくではありませんか。
「はい、そこで一枚ちょうだいね♪」
 和気あいあいとした子供三人を、羽入 勇(はにゅう・いさみ)は早速パチリと写真に収めた。
「ん〜、いい写真。今日はたくさん良い写真が撮れそうね♪」
「勇〜、こっちも写真を撮って」
 刀真と白花と一緒に作った雪だるまを示し、月夜が手を振る。
「分かったわ、ちょっと待って」
 と答えつつ勇は思いついて夜魅の前に膝を落とした。
「夜魅ちゃん寒くない? 使い捨てカイロあげるよ」
「? 何これ、あったかい!」
「……知ってる……これ、カイロ」
「文明の利器なの」
「お〜、でもこれ貰っちゃってもいいの?」
「うん、大丈夫♪」
チラと見せた勇のポケットには成る程、沢山のカイロが入っていた。
「えへへ、ボク寒いのちょっぴり苦手なんだ。でも身体動かして写真撮ってると寒くないよね」
「あっあたしも、寒い筈なのに何かポカポカかも。虹七、遊雲、手がかじかんだらコレ貸してあげる」
「あはは♪、じゃあみんなに一個ずつあげるよ」
 勇はカイロを子供たちに渡してから、さり気なくシャッターを切った。
 ジュジュやコトノハや誠治や壮太や……みんなに見守られながら、同じくらいのちびっ子の虹七や遊雲と仲良く笑っている夜魅。
 その姿を撮るのはとても嬉しい事だった。
 大変な戦いの後だから余計に、夜魅や皆の楽しい写真が撮りたかった。
「よぉ〜し、今日はたくさん撮るぞ!」
 とりあえずは、月夜達から行こう、勇は意気揚々とカメラを構えた。
「よ〜し、誰が一番大きな雪だるまを作れるか競争しようぜ♪」
 残された雪原ではニッと楽しげに告げる誠治に、夜魅や虹七は顔を見合わせてから、「うん!」と頷き。
「いやー、ホントはシロップ持ってきてかき氷作ろうとしたけど、汚いからってミコトっちに止められたー」
「止めてないですよ? お腹壊す危険性があると指摘しただけで」
 サラリと釘を刺された翔子はやはり天然カキ氷は諦める事にし。
 代わりに手で固めた雪玉を転がし始めた。
「あれ〜? 何かちょっとバランス悪いけど……まっ、これも味ってコトで!」
 ドドン、上下にくっついた二つの玉。
 胴体部分がやけに大きくなってしまったのは御愛嬌。
 そのまま頭にバケツを設置、胴体には二本の棒を刺し、更に軍手をつけてみる。
 ただ、顔部分に木の枝でメガネを作ったのは、翔子オリジナルだ。
「最近、校門前で、目つきがちょっと悪い眼鏡の人見ないから……」
 言って、翔子は携帯を手にし、写真に収めた。
 そうして暫く。
「おおっ、すごいカッコいいじゃんか」
 誠治は完成した雪だるまに、マフラーや手袋を装着すると、満足げに周囲を見回した。
 小さかったり、大きくてもちょっと不格好だったり。
 それでも、自らの雪だるまを示す、誇らしげな夜魅達。
「てか、みんなこんなカッコいいんじゃ、勝ち負けなんて付けられねぇよな」
 頭を撫でてやると、子供達は皆、嬉しそうに頷いた。


「やっちゃん、やっちゃん、この辺でいいかなぁ?」
「いいんじゃないか?、雪、集めてくれたみたいだし」
 霧雨 透乃(きりさめ・とうの)霧雨 泰宏(きりさめ・やすひろ)の言葉に、大きく頷いた。
「というか、本当にやるのか?」
「勿論♪」
 一輝達の集めてくれた雪を前に、腕まくりをする透乃。
「……ま、仕方ないか」
 本当は除雪作業のほうに行きたいが、ここは透乃にあわせておくか……思った泰宏は早速、雪を固め始めた。
「頑張ってかまくら作ろうね、そして……」
 うっとりと頬を染める透乃を見、泰宏は苦笑を浮かべ……テキパキと作業に入った。
「うわぁ、結構積もったねぇ。これだけ積もれば、かまくら作れるんじゃないかな? 除雪組が集めた雪を使ってさ。結構体力仕事だから、自己鍛錬にもなるだろうし」
 という事で、十倉 朱華(とくら・はねず)もまたかまくら作りに精を出していた。
「すごいやる気を感じます。そのやる気の半分は、夜魅さんに雪の暖かさを知ってもらおうという気持ちから来ているようですが……」
パートナーであるウィスタリア・メドウ(うぃすたりあ・めどう)がそうもらしていると、丁度その夜魅がジュジュ達と共にやってきた所だった。
「雪って冷たいけどあったかいんだよ。知ってた?」
イタズラっぽく問うと、夜魅はビックリしたように首をふるふると横に振った。
その反応を楽しみつつ、朱華は十分に慣れた動作で、先ずはと円形に地固めしていく。
「十分に固まったら、雪をかまくらの形に積んで、固めて、積んで、固めて……」
 指示に従い、夜魅やリネンもやってみる。
「……上、手が……届かない」
「そこは任せて下さい」
「白花、無理はしないで下さいね。ダメだと思ったら俺を呼んで下さい」
 虹七や白花や刀真もそれぞれ、少しずつ固めて積んでを繰り返す。
「皆さん、お上手ですよ」
 ぎこちないながらも徐々に丸く固く、らしい感じに仕上がっていくのをウィスタリアは嬉しそうに眺め。
「適度な大きさになったところで、入り口を決めて掘り進めるんだけど、この時入り口を大きくしすぎないのがポイント、なんだってさ」
「どうして? これって中に入るんでしょ? 小さいと遊雲ちゃんや夜魅ちゃんはともかく、ルオシンちゃん達は入り辛いと思うの」
「うん、そうだね。でも入り口を上に向けて作れば作るほど、崩れやすくなるから」
「……崩れるの?」
「丁寧に固めながら作れば大丈夫だよ。壁は最低でも拳一つ分以上の分厚さで。頑丈にする為に、少し厚めに作った方が良いね」
「……了解」
リネンは朱華に応え、慎重に質量を図っていく。
子供達を危険な目に遭わせるわけにはいかないのだから!
 やがてどうにか出来あがった時は、子供達の寒さはどこかに吹き飛んでいた。
「ほら、入ってご覧」
「うわぁ温かいね」
「……不思議」
「触ると冷たいんだけど」
「ね、不思議でしょ?」
「ふしぎれす、すごいれす」
 とそこに現れた不思議生物……樹さん家の林田 コタロー(はやしだ・こたろう)くんだった。
 体長35cmのコタローに目を瞬かせる夜魅。
「朱華おにーちゃん、コレ何?」
「う〜ん、しゃべるカエル……あぁ、ゆる族さんだね」
「そうれす、はじめまして、こたれす。おなまいは?」
「夜魅だよ。コタちゃん、よろしくね」
 ちっちゃな手(足?)を握って貰ってコタちゃんご満悦。
「やいたん? いっしょにあそぼーれす。ねーたんが、あっちにいるれすよ」
 と、近くで賑やかな声。
 樹達はどうやら小休止をする事にしたらしい。
「なら、おちゃするれす」
「うん。朱華おにーちゃんも行こ?」
「ん〜、もうひと頑張りしてから行くよ」
 コタローに連れられた夜魅達を機嫌良く送りだす朱華。
 と言っても多分、ここが飲食スペースになるのだが。
鼻歌交じりで再び自己鍛練……つまりかまくら作りに勤しむパートナーを見つめていたウィスタリアはふと、眉根を寄せた。
「は、朱華? ちょ……貴方いくつ作るつもりなんですか。雨後の筍じゃないんですから」
「うん。でも、折角だし……楽しくなっちゃったしね」
「……無理はしないで下さいね」
「大丈夫、明日筋肉痛になるほどヤワじゃないよ」
「そういう意味じゃないのですが」
 元気いっぱいな朱華に、ウィスタリアはふぅと溜め息をついた。