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【海を支配する水竜王】孤島からの救出手段を確保せよ

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【海を支配する水竜王】孤島からの救出手段を確保せよ

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第3章 施設への侵入手段・・・陽動作戦

「ちくしょう気づかれたか、めちゃくちゃ撃ってきやがるな」
 小型飛空挺に乗り瀬島 壮太(せじま・そうた)は海面スレスレを飛び、迫りくる砲弾を紙一重で避けていく。
「あの辺に飛空挺を隠そう」
 見つからないように施設から離れた岩場に降りる。
「イカダを漕いでやってきたやつもいるのか・・・」
 地道にイカダを漕いで岸につける生徒たちの姿を見つけた。
「ふん!いいか!!まだ『何処を攻めるか』決めてない奴は俺様に従え!上陸したら、一番近い入り口に向かえっ!!そこに戦力を集中しろ!!」
 木で作ったイカダに乗りクラッチ・ザ・シャークヘッド(くらっち・ざしゃーくへっど)は島をビシッと指差す。
「おおっ、凄い迫力」
 海賊らしく作戦行動を指示する彼にアスパー・グローブ(あすぱー・ぐろーぶ)が思わず拍手する。
「素敵♪やっぱり海賊って思った通り、いえ想像してたよりずっと素敵だわっ!やっぱり生で見ると迫力が違うわねっ!」
 セレンス・ウェスト(せれんす・うぇすと)も大喜びで生海賊に感激する。
「流石船長をやってただけはあるな。いや、“元”船長か」
 大盛り上がりしている傍らウッド・ストーク(うっど・すとーく)は冷静に呟く。
「あんたの船、壊れて無くなっちゃったしね」
「やかましいわ!!直ぐにまた名を上げて伸し上がってやるわい!船も前よりもっとでかいのを手に入れてな!」
 続けてアスパーに小声で突っ込みを入れられ、地獄耳の如く聞き取った彼は自信満々に言う。
「まぁ、皆・・・。とりあえずこのクラッチ船長の言う通り、上陸まででもいい。なるべく固まって行動しないか?その方が安全なのは確かなはずだからさ!」
 ウッドは岸へ移動しようとオールで漕ぎながらクラッチの方を見る。
「ここから一番近いのは東門のようだな。そこへ上陸しよう!」
 彼らはイカダが流されないようにロープで岩場にくくりつけて上陸した。
「陽動している生徒たちがいるわね、他の生徒が入りやすいようにしているのかしら?」
 セレンスが別の門へ陽動するために作戦を実行しようとしている壮太たちを見つけた。
「作戦開始〜!」
 兵たちを南門へ陽動をしようとミミ・マリー(みみ・まりー)が丸い輝く球体、光術を空に向かって放つ。
 光に気づいたゴースト兵が集まってくる。
「そこに集めていっきに片付けようとしているのか!?」
 クラッチは岩場の陰に隠れているミミを見て様子を窺う。
 集まってきた彼らを眠らそうと、少女が眠りの子守唄を歌い眠りにつかせた。
「ほらほらどこを見ているんだ、こっちだこっち!」
 壮太は兵に星輝銃を発砲し、わざと挑発して集める。
「そらこっちだ!げっ・・・、来すぎだぁああ!!」
「えっ、かなり集めてきたわね。ていうかあんなに大勢無理よーー」
「加勢するわっ」
「あれだけいれば倒しがいもあるというものだっ」
 兵の群れに向かってセレンスが雷術、クラッチは火術を放ち、合わさった2つの術によって大爆発が起こる。
「げほっ、土煙が・・・」
 巻き起こる土煙にセレンスはたまらず目を閉じた。
「ふむ・・・ちとやりすぎたか?」
 クラッチは眉を潜めてどれだけ敵が倒れたか確認しようとする。
「むっ、まだ動けるようだな」
「体勢を立て直される前に眠らせちゃおう」
 立ち上がる前に眠らせてしまおうと、ミミの澄み切った綺麗な歌声で眠らせた。
「向こうから人がくるぞ」
 ウッドが近づいてくる人影の姿を見ようと目を凝らす。
「この警戒網の中、侵入口が上手く確保できるか・・・裏方としての腕が問われるな」
 人影の正体は生徒たちのために門の鍵を開けようとやってきた虎鶫 涼(とらつぐみ・りょう)だった。
「鍵を開けようとしているのか・・・」
 風によって土煙が消され、涼がピッキングで鍵をこじ開けようとしているのを確認する。
「それなら私たちがサポートしてあげるわ」
「あぁ東西南北の4方向全てから入れるのにこしたことはないからなっ」
 光精の指輪で目晦ましをくらわしながら、迫りくるゴースト兵の頭部を狙いウッドはロングスピアで突きを繰り出す。
「ならば敵をこっちに集めろ!」
 クラッチが声を上げて指示する。
「さすがに構造が難しいな・・・」
 涼は鍵穴を睨みつけ開錠用の道具を使って開けようとするがなかなか開かない。
「くぅっ、道具が曲がってしまった・・・」
 道具箱の中に手を突っ込み新しい工具を取ろうとする。
「焦ってしまうと余計に手元が・・・」
 鳴り響く術の爆音を聞きながら、プレッシャーを感じてしまう。
「よし開いたぞ」
「おぉっ開いたか!」
 火術で向かってくる兵の銃弾を防いでいたクラッチが涼の方へ顔を向けた。
「出来れば北門も開けて欲しいんだが」
「あぁ分かった」
 壮太に言われ涼は急ぎ北門へ向かった。
「何か派手に暴れているようですね」
 サンタのトナカイに乗り、見つからないように海面スレスレを飛び、影野 陽太(かげの・ようた)は双眼鏡を覗き込み島の様子を見る。
「あの煙の中に飛び込んで侵入しますわよ!」
 エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)が煙に紛れ込もうと空飛ぶ箒に乗り突っ込む。
 トナカイと箒から降りた2人は兵たちに発見されないために急ぎ南門から侵入した。



「そろそろ幸姐ぇたちが追いついてくる頃かな」
 佐々良 縁(ささら・よすが)は突入時間に合わせようと、小型飛空艇に乗り島の付近を低速飛行している。
「命綱ちゃんとつけている?」
 小型飛空艇から落ちないようにきちんと命綱を腰に巻きつけているか佐々良 皐月(ささら・さつき)の周囲を旋回して確認した。
「うん、大丈夫みたいだね」
「来たみたいだよ」
 ボートの上から手を振る幸の姿を見つけて縁に伝える。
「さて・・・それじゃ打ち合わせ通り、派手に始めますか」
 銀色のマスクと赤いマフラーを身につけ、仮面ツァンダーソークー1に変身した風森 巽(かぜもり・たつみ)が先陣を切って進む。
「さぁ、暴れて、暴れて、暴れてまくってやんぜぇ!」
 フゥ・バイェン(ふぅ・ばいぇん)は彼の後に続き、嬉々として挑みかかる。
「ゴーストの兵士・・・・・・姚天君みたいな実験を他にもやっている奴がいるのか?」
 眉を潜めて巽は自分たちを墜落させようと見上げている兵の姿を睨む。
「ったく、死者は大人しく、土の中で眠ってろってんだよ!」
 考え込んでいる巽を他所にバイェンは追ってくる兵に向かってターニングダガーを投げつける。
「ほらほら〜。しっかり避けねぇと、身体のあちこちが風通しよくなっちまうぜ!」
 幸たちを北門から侵入させるために、わざと引き寄せようと西側へ移動していく。
「この仮面ツァンダーソークー1、逃げはしても隠れはしない!」
 光術を放ちゴースト兵に自らの位置を知らせる。
「ツァンダー連続閃光キック!」
 侵入しようとしているカガチに銃を向けている兵に低空飛行で接近し蹴りをくらわす。
「まぁー大した効果ないかもだけどねぇっ!」
 縁は南門の方へ兵を陽動しながら星輝銃のトリガーに指をかけ、星のように輝く銃弾を放つ。
「さすがに数が多いね・・・」
「もうっ・・・よすがっうしろーっ!」
 彼女の背後を狙うゴースト兵に向かって火術を放ち、ターゲットの全身を黒焦げにする。
「気をつけないと殺されちゃうんだからねっ」
「悪いね、ちょっと油断しちゃったみたいだよ」
 怒る皐月に縁はへらっと笑いかけた。
「北門の方に生徒たちが来ているな。俺も侵入の手伝いをするか・・・」
 大野木 市井(おおのぎ・いちい)は双眼鏡で上陸してくる生徒たちの姿を見つけ侵入の手引きをしようとする。
「やーい!!絞りカスのみそッカスー!!今更仕事しても意味無いぞー!」
 門を守る兵たちに向かって大声を出し挑発する。
 手斧を持って怒りまくった兵が彼を追いかけてきた。
「侵入者だしまくって上司に叱られちまぇー。そんなしょっぱいやつらにはこいつをくれてやる!」
 人差し指で眉と眉の間をぐいっと上げ、小ばかにしたようなウザイ笑顔で追ってくる兵に向かって塩を投げつける。
 施設の周りを1周し、味方の集団の方へ入っていく。
「なんですかあれは・・・誰か大量のゴーストを連れてこっちに来ているようですけど・・・」
 仲間の生徒たちと共に陽動役をしていたリュースの方へ30人の兵が怒りまくっている形相で向かって来ていた。
 目を凝らしてよく見てみると、兵たちの前を1人の生徒が全力で駆けてくる。
「まとめて倒すためにわざと引き寄せているみたいですね」
 片手で市井に“伏せろ”という仕草をし、高周波ブレードを鞘から抜き、柄を両手でぎゅっと握り締めた。
「調理方法はとりあえず乱切りにしておきましょうか」
 迫りくる亡者の群れの中に突っ込み、空気の刃で斬り刻むように剣風を飛ばす。
 ドシュッ、シュバババァアッ。
 リュースの乱撃ソニックブレードによって四肢と胴体が断裂する。
「おや、まだ余力があるようですね」
 腸が千切れてもなお殺そうと狙う銃を持つ手を踏みつけた。
「脳を破壊すれば動けなくなりますか?」
 片足で反撃しようとする死者の顎を持ち上げ、脳を真っ二つに斬り裂く。
「ちょっとやりすぎましたか?なんて・・・」
 鮮血がべっとりついた剣を振るい鞘に納めクスリと笑った。



「それでは少し暴れて来よう」
 四条 輪廻(しじょう・りんね)は内部情報を得ようと、北門にいる敵兵に向かってハンドガンを撃つ。
 捕まっても脱出する手段を確保するために、予め大神 白矢(おおかみ・びゃくや)を孤島の森の中で待機させている。
「大神は、森の影に潜み、俺が捕まったらその後をつけろ。施設内に潜み、ころ合いを見て救助を頼む」
「了解でござる、任せるでござるよ・・・」
 すでに2人の間で段取りが組まれていた。
「俺が引き付けている間に、早く鍵を開けるんだ!」
「あぁすまない」
 兵の注意を輪廻が引き寄せてくれたおかげで、涼は北門の前にたどりついた。
「陽動をしてくれているおかげで、ここの守りは手薄のようだな」
 侵入する人々のために鍵を開錠しようとする。
「くそっ、気づかれたか!」
 ガチャガチャと開けようとしている彼の存在に気づいた兵が機関銃を乱射させる。
「ここはボクが防ぐから頑張ってっ」
 迫りくる銃弾をウィノナが火術を放ちガードした。
「させないですーっ」
 涼の背後を狙い斬り殺そうとするゴースト兵を、ファイリアが薙刀で胴体を断裂させる。
「―・・・っ」
 刃で斬り落とされながらも這いながら向かってこようとする兵に、少女は悲鳴を上げそうになってしまう。
「油断してしまうと殺れてしまいますよ!」
 恐怖で動けない彼女を守るためウィルヘルミーナは鞘からブロードソードを抜き頭部を破壊する。
「そうですよね・・・。ここで怖がってちゃ、オメガちゃんのお友達を助けられないですっ」
「えぇ・・・皆さんが侵入できるように頑張りましょう」
「ファ、ファファファファイたちはこっちですよ〜!」
 ファイリアは恐怖心を抑えながら兵を引き付ける。
「開いたぞ!」
「やりましたね!ファイたちが防ぐですっ。急いで中へ!」
「ありがとうございます。兵たちが仲間を呼び集めるかもしれません、早く中へ侵入しましょう!」
 門の鍵が開錠された瞬間、幸たちが駆け込んでいく。
「アウラネルクさん、救出の為遙遠も力になります。遙遠だってアウラネルクさんやオメガさんの友ですから。一緒に頑張りましょう」
 侵入前に緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)はアウラネルクの方を見て言う。
「あぁ、頼む」
 彼を見て妖精がこくりと頷く。
「幸姐ぇたち無事に侵入したみたいだね」
 縁は開かれた北門から幸たちが中に入っていく様子を見届ける。
「ここまで引っ張れば十分かな?後は頼みますよ、皆・・・・・・」
「そんじゃ、後はあいつらが戻ってくるのを待つばかりってか?」
 施設内から幸たちが戻ってくるまで待機することにした。
「あ・・・・・・皐月ーー!」
 胴体が断裂してもなお動いている亡者が皐月の腹を撃ち抜こうと狙っている。
「(無理だ・・・間に合わない。こうなったら・・・!)」
 皐月を守るために縁は自ら飛空艇ごとゴースト兵に突っ込んでいく。
 グシャァアアッと死者の身体が潰れ、着地した縁は落下の衝撃で気を失いかけていた。
「我々の施設に侵入しようとしている者どもの手引きだけでなく、狙撃の邪魔までするとは・・・。覚悟は出来ているんだろうな・・・小娘!」
 駆けつけた兵が縁の頭を掴み、わき腹を思いっきり殴りつける。
「ふぐぅっ、あがぁあっ!!」
 玩具のように殴られ続け、あまりの激痛に悲鳴を上げてしまう。
「よすが・・・よすがに何するんだよーっ」
「待て、ここはいったん退こう」
 数十人の兵が銃を向けている危険地帯から離れようと巽は向かっていこうとする皐月の身体を抱えた。
「い・・・いやだ、いやだよ離してっ。ワタシのせいでよすが・・・。よすが・・・よすがー!」
 少女の泣き叫ぶ声も虚しく、彼女は兵に捕まり牢獄へ入れられてしまった。
「しまった弾切れか・・・」
 ハンドガンの弾を切らした輪廻も捕縛された。
「(視界を封じるのか!?)」
 布で目隠しされた輪廻は予想外のことに慌てる。
「(いや落ち着け・・・移動する足音を耳で聞くんだ・・・)」
 施設内の構造を知ろうと、感覚で覚える。
「(ん・・・止まったのか・・・)」
 目隠しから開放された輪廻は簀巻きにされたまま牢へ放り込まれた。
「ふむ・・・GPSがきかないようになっているな・・・。まぁいい、移動している間に少しは構造を覚えたからな」
 助けのパートナーが来るまで、そのまま大人しくしていることにした。



「誰か捕まってしまったようですね」
「これ以上、被害者がでないようにいっちょ頑張るか」
「いきますですよっ、派手にどっかーんとっ、ファイアストーーム!!!」
 シルヴィット・ソレスター(しるう゛ぃっと・それすたー)が演出用のファイアストームを放つ。
「な、何だ今の音は!また侵入者か!?」
 これ以上侵入させまいと警戒していた兵の眼前で、いきなり紅の爆炎が空高く燃え上がり地面を焼き尽くす。
「貴様ら、イルミンスールの学生かっ」
 炎をバックに突然現れたウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)の方へ振り向く。
 光精の指輪を両手に持ったシルヴィットが光の妖精を呼び出し、彼の周囲を飛び回る妖精たちがキラキラめき華麗に輝く。
 質問に答えず小ばかにしたように笑う彼へ銃口を向ける。
 スイッチを入れたマイクを手にしたウィルネストはふぅと深呼吸をする。
「俺様のっ、歌を、きっけええええええええええ!!!!」
 悲しみの歌を大音量で歌い始めた。
「ぎゃぁああっ、何だこの歌声は・・・耳が耳がぁあっ」
 痛覚がないはずのゴーストたちが、耐えきれず両手で耳を塞ぐ。
 アップテンポのズレた破壊的な歌声で歌い続ける。
「なぜだ・・・涙が止まらない・・・・・・」
「へたなりにあいつが一生懸命に歌っているせいなのかっ」
 懸命に熱唱している姿に兵が涙を流す。
「一生懸命・・・こうやって働いてるけど、どうせ捨て駒扱いなんだよな・・・」
「まぁ、そのうちいいこともあるって。あんまり落ち込むなよ」
 歌をやめて慰めるように、待遇の悪さに嘆く兵の肩にポンッと手を置く。
「折角なのでイルミンいちのろりっこ美少女シルヴィットの歌、楽しんでってくださいですよ〜!」
 ウィルネストと交代してシルヴィットがのんびりとした癒し系の歌い始める。
「まぁ、いきなよ、ぐっと」
 彼は持ってきた酒を兵に勧めた。
「紙コップですまねーけどどーぞどーぞ」
 他の兵たちにもコップを手渡し酒を注いでやる。
 可愛らしい少女の歌を聞きながら酒を飲み、つまみを食べながら宴会気分で盛り上がり始めた。
「この島でいいみたいですね」
 アシッドミストで海上に霧を発生させ、島に上陸した御堂 緋音(みどう・あかね)が北門付近にたどりつく。
 目的地に見失わないように持ってきた方位磁石で位置を確認する。
「何か向こうの方が騒がしいようですけど・・・」
「騒ぎ声が聞こえるけど、争っている感じとは違うわね」
 シルヴァーナ・イレイン(しるう゛ぁーな・いれいん)は足を止めて訝しそうに見つめた。
「兵たちがお酒を飲んでいるようだけど、あんなところで宴会でもやっているのかしら」
「宴会・・・?」
 緋音が岩場の陰からこっそり覗くと、ゴースト兵の引き付け役をやっているウィルネストたちの姿があった。
「すでに陽動作戦をやってくれている人たちがいたから、光の指輪で注意をそらす必要もなかったですね」
「えぇ、ここも突破できそうよ」
 気配を隠そうとブラックコートを羽織った2人は、そっと北門から侵入することに成功した。
「あの場所が入りやすそうね」
「行きましょう!」
 どの門からが中へ入りやすいか慎重に選んでいた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が続けて侵入した。



「オメガさんを孤独にさせる理由は何なのだろう。何の目的があってそんなことを・・・」
 綺人は妖刀で兵を斬りつけながら疑問を抱く。
「それも謎ですけどレヴィアさんを捕まえたのはあの姚天君なのでしょうか?もしくは関係者でしょうか・・・」
 眉を潜めてクリスも考え込む。
「彼女の力を利用しようとしているのかもね」
「―・・・・・・力を利用・・・ですか」
「それが何か今は分からないけど、今は侵入の手引きをしないとね!」
 雷術の気を刀身に纏わせ兵の身体を刺し感電させる。
「うぁっ、風向きがこっちだとキツイね」
 焼け焦げた身体が地面に転がり嫌な異臭を放つ。
「かなりの数がいるようですが負けませんっ」
 バーストダッシュのスピードで空へ飛び上がり、クリスが爆炎波の炎で焼き払う。
「多いな・・・まだ来るのか」
 門から出てくる兵たちの人数に綺人は顔を顰めた。
「き・・・機関銃を持っているやつが・・・30人!?あわわっ」
 銃口を彼らの方を向けていっせいに撃つ。
 火術と爆炎波でなんとか防ぐが、銃弾が綺人の両足と脇腹を掠めた。
「あいたた・・・さすがに避けきれなかったか」
「大丈夫ですかアヤ!」
「うん、なんとかね・・・」
 空飛ぶ箒に乗り敵に見つからないように海面スレスレを飛び、アシャンテ・グルームエッジ(あしゃんて・ぐるーむえっじ)ラズ・シュバイセン(らず・しゅばいせん)は施設付近に上陸し、入り込む隙を窺っている姿が綺人の視界に入る。
「生徒たちが入りやすいように頑張らなきゃ。ここでへばってなんていられないね」
 背の高い草の中に身を潜めている2人を見つけ、綺人たちは門から離そうと引き寄せる。
「他の生徒たちは中へ入っていったようだな。パートナーを連れている者も多いようだ」
 アシャンテは侵入していく生徒たちの姿を確認する。
「あぁ自分も君だけを危険な場所にいかせるわけにはいかないな」
 アシャンテが要塞に侵入すると聞き、同行することにした。
「侵入する側の人ですね、なんとか手助けしてあげないと・・・」
 タイミングを見計らっている彼女たちをヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)も見つけ、煙幕ファンデーションを兵たちの周りに投げる。
 視界を奪っている隙にバニッシュを放ち、フェイスフルメイスで殴りつけた。
「ゴースト兵たちの気を引き付けてくれている間に行こう」
 光学迷彩による幻惑の霧を発生させ、アシャンテとラズは施設内へ北門から侵入した。
「上手く侵入出来たようだね」
 綺人は隙をついて光学迷彩で姿を隠し、無事に入り込むアシャンテたちの姿を見る。
「えぇ、他にもくる人がいるかもしれませんから。通りやすいに片付けましょう」
 彼の背後を守るようにクリスが亡者へ剣を向ける。
「私も協力します!」
 敵の数を減らそうとヴァーナーは地面を蹴り、メイスを振り下ろす。
「チビガキが、いきがってんじゃねぇえっ」
「そのただのガキにやられて泣かないでくださいね」
 メイスの柄を短く持ち、パワーブレスで強化された則天去私の拳を、ゴーストの両腕に叩き込むように砕く。
「わるだくみはやっつけないとですね」
 ターゲットの後ろ首を狙い止めを刺す。
「あれ、怪我していますか?」
「ん、あぁ・・・これくらい大丈夫だよ」
「ボクが治してあげます」
 綺人の傷をヴァーナーがヒールで癒してやる。
「侵入に成功していない生徒さんたちもいるかもしれません。なるべく数を減らしましょう」
 まだこれからやってくる生徒たちのために道を作ろうと敵の群れに挑みかかる。



「ほとんど侵入に成功しているようね」
 四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)は南側から反時計周りに、空飛ぶ箒に乗り低く飛ぶ。
「協力して陽動しているようですよ」
 彼女の傍からエラノール・シュレイク(えらのーる・しゅれいく)が陽動を行う生徒たちの姿みつける。
 敵前でSPを切らしてしまったウッドとクラッチが大群に囲まれてしまっていた。
「あの辺に敵兵が群がっているようですが・・・」
「陽動側のようね」
「どうします?」
 エラノールは助けるのかどうか首を傾げて言う。
「助けてあげたいけど人数がちょっと・・・」
「―・・・あぁっ、敵がこっちに気づいたようですよ」
 迫りくる機関銃の弾丸を火術の火柱でガードする。
「私たちを捕まえようとしているのねっ」
 捕縛しようとしている兵から逃れるために唯乃が光術を放つ。
「はぁ・・・倒しても倒してもきりがないわ」
「いったいどこから沸いてくるのですか」
 再現なく向かってくる敵兵を倒し続け、SPの残りが限界にきていた。
「あの方たち捕まってしまいますよ!」
「ここからじゃあもう助けられないわ・・・」
 彼女たちは捕まっていく2人の姿を見つめる。
「やっぱ、“鮫頭”じゃなぁ」
 捕縛されたウッドが深いため息をつく。
「やかましいわっ!!貴様、ぶっ潰されたいかっ!この“赤猿”があぁっ!!」
 簀巻きにされてしまったクラッチは、ぎゃぁぎゃぁと声を上げる。
「他にも2人いたと思うけど、上手く逃げたようね」
 唯乃の視線の先にはセレンスとアスパーが兵から逃れるため施設から離れていく姿があった。
「酷い目に遭わなければいいですね・・・。まだ来ますよ!」
 じたばたと暴れる簀巻きにされたウッドとクラッチの2人が施設内に見届ける間もなく、やってくる兵から逃げようとエラノールたちもそこから離れた。