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リアクション
■□■□■□■□■
森の中に残ったのはホイップとあい じゃわ(あい・じゃわ)の救出に向かう人達のみとなった。
「で? 君は今まで何をしていたんだ?」
ララは再度、ロゼに聞いた。
「森の中で休んでいたでおじゃる」
「なっ!」
大変だった時に一体何を、とララは怒ろうとしたが、ロゼに遮られる。
「それと、マッシュとかいう者を使い魔を使って追わせようとしたのじゃが……使い魔がどうにもやる気がなくての。無理でおじゃった」
期待をしただけに、皆がくりと肩を落とした。
皆、それぞれの捜索を開始した。
何かあったら連絡する事になっている。
「う〜ん、今のところ特に変わったものは見当たらないね」
箒に乗って上空から捜索している五月葉 終夏(さつきば・おりが)が同じく捜索しているニコラ・フラメル(にこら・ふらめる)、エレンディラ・ノイマン(えれんでぃら・のいまん)に話しかけた。
下では馬に乗りながら手掛かりを探している秋月 葵(あきづき・あおい)の姿があるが、大声を出しているわけではないから聞こえてはいないだろう。
「せめて手掛かりだけでもあると良いのだが」
ニコラが呟く。
「葵ちゃん、そちらはどうですか?」
エレンディラが葵に電話をしてみた。
「こっちもまだ何もなし〜。でも、刑事の基本は足みたいだからこうやって探していれば見つかるよ! 私は刑事じゃないけどね〜」
どうやらこちらも進展はないようだ。
「どうですか?」
ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が集中していた国頭 武尊(くにがみ・たける)とシーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)に問いかけた。
「ダメだ……」
「こっちもです……」
2人は石化したホイップとじゃわの持っていた牡羊のペンダント2個の反応をトレジャーセンスで探っていたのだが、どうやら近くにはいないようだ。
「やっぱり地道にやっていくしかないか」
雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)がぼそりと言った。
「巨大甲虫は北西の方向へと向かってましたから……この集落で聞き込みとかはどうでしょう? 目撃している人がいるかもしれません」
シーリルはシャンバラの地図を広げて、近くにある集落を指差した。
4人は頷くと集落へと向かって行った。
「そうですか……ありがとうございました!」
4人が向かったところとは違う集落でクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)は既に聞き込みを開始していた。
「北西の方角に向かっている……と」
弥涼 総司(いすず・そうじ)は話しの終わったクロセルに声を掛けた。
「こっちもだ」
橘 恭司(たちばな・きょうじ)も聞き込みが終わったらしい。
「3人とも同じ結果ですし、もう少し北西の集落に移動して聞き込みしますか」
「ああ」
「そうだな」
クロセルの提案に総司も恭司も同意し、移動となった。
「そうだ、俺が皆に情報を流しますね」
移動しながら、クロセルは他の捜索中の人達に情報をメールで流したのだった。
青い顔で森の中をうろついているのはカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)だ。
大佐の薬を飲んだとはいえ、まだ半日も経っていない為、全快とは程遠い状況。
「ティセラが来るかもって思っていたのに……止める事が出来なかった」
ポツリと言った言葉はいつもの元気いっぱいなカレンからは想像がつかないほど、暗く沈んでいる。
「必ず見つけよう」
ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)は、カレンの体の事を心配しながらも、カレンの行動を止めることができないでいる。
必死過ぎて、カレンの心が痛いほど伝わってきて、止めることなどどうしてできよう。
ジュレールはカレンの側でカレンが倒れないように見守ることしかできなかった。
「ん〜、やはり無理や」
じゃわの携帯の場所を突きとめてみようとフィルラント・アッシュワース(ふぃるらんと・あっしゅ)が試みていたのだが、シャンバラの地方にある携帯のアンテナは少なく難しい。
「では、その事を報告だな」
藍澤 黎(あいざわ・れい)は携帯を取り出し、連絡をする。
一緒に来ていたメールも確認すると、どうやら北西の方角へと向かっていると報告が来ていた。
「このまま北西へと向かって聞き込みとする」
黎はそう言うと駿馬に跨った。
「ホイップ様、待っていて下さいませーーっ」
その後ろを自転車に乗ったロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)と――
「ホイップさん、今行くッスよーっ!」
バイクに乗ったサレン・シルフィーユ(されん・しるふぃーゆ)が付いて行ったのだった。
「あ〜、結局義理チョコも配りきれなかったよ。誰かこの『ティセラさんの義理チョコ』欲しいって人いないかな〜?」
十六夜 泡(いざよい・うたかた)はそう大声で言いながら、本日3つ目の村を歩いている。
「なかなか現れませんね」
リィム フェスタス(りぃむ・ふぇすたす)は泡の胸ポケットの中から話しかけた。
「あのおやじならきっと飛び付いてくる! ……はず。もう少しやってみようよ」
「あの人なら確かに、近くにいれば来てくれると思います。頑張りましょう!」
泡はこうして村や集落を歩いていったが、どうやら近くにはいないらしくおやじが現れることはなかった。
「どうだ?」
ある程度回復したレンが隣で狼の耳と尻尾を生やしたアシャンテ・グルームエッジ(あしゃんて・ぐるーむえっじ)に問いかけた。
「……まだ北西の方角だ……。もしかして……キマクか?」
アシャンテはマッシュの流した血の匂いを自分の超感覚で探っていたのだ。
もうすでに森を抜けている。
上空では御陰 繭螺(みかげ・まゆら)とエレーナ・レイクレディ(えれーな・れいくれでぃ)が上から何かないかと探しながら付いてきている。
「もう少し行ってから皆に報告だな」
まだ、顔色の悪いレンが言う。
「……無理はするな」
「ああ」
心配してアシャンテは声を掛けた。
レンはそれを冷や汗つきの無理矢理笑顔で答えた。
「早くみつかってくれないかしらねぇ」
欠伸をしながらメニエス・レイン(めにえす・れいん)は言う。
メニエスはホイップの向かった場所を探している黎達の後をついてきていた。
勿論、ロザリアス・レミーナ(ろざりあす・れみーな)の隠れ身を使用し、こっそりと。
「おねーちゃん、楽しみだねぇー!」
「うふふ……そうね」
メニエスは黒い笑顔を作ったのだった。
■□■□■□■□■
石化ホイップのある、とある屋敷の中。
ある一室では意識を取り戻した者がいた。
縄で縛られているじゃわだ。
「ここはどこなのです!?」
きょろきょろと辺りを見回すが、黎の姿もホイップの姿も見当たらない。
縄で縛られているハムじゃわ状態を冷静に見て、行動へとうつった。
小さく火術を発動させ、ゆっくりと縄を切っていく。
5分ほどで、じゃわの縄は完全に解かれ、晴れて自由の身となることが出来た。
「たぶん、ここはホイップ殿のつれてこられた場所なのです。だからホイップ殿を探しだし、必ずお守りするのです!」
決意をみなぎらせ、自分の居た部屋の扉を開ける。
廊下はしんとしていて、少しの音でも響いてしまいそうだ。
木で出来た床も、使われていなかった為か痛んでいる。
気をつけなければ軋んだ音がしてしまうだろう。
じゃわはゆっくりと慎重に廊下を歩く。
光学迷彩も使用している。
部屋を1つ1つゆっくりと見て行くが、使われた形跡のある部屋は見つからない。
上の階へと上がると、少し大きめの扉を発見。
そっと中を覗いてみると、そこには石化したホイップが居た。
ちょうど、トイレにでも行っているのか他には誰もいない。
「ホイップ殿……もうすぐ黎が……みんなが来てくれるです」
そう耳元でホイップに言うと、じゃわはホイップの頭上に乗っかり、しっかりと気配を消した。
■□■□■□■□■
グランを乗せたメンバーは平原を突っ切っていた。
「あの〜、ついでなので聞いても良いですか?」
「はい、何をでしょう?」
志方 綾乃(しかた・あやの)はファルのソリに乗っているグランに近付いて言葉を交わした。
「ホイップちゃんについてどう思います?」
「え? そうですね……大切な女性……でしょうか」
少し照れながらグランは答える。
「ホイップちゃんが好きなの?」
そんな様子を見た綾乃が更に突っ込んで質問をした。
「……はは、ホイップちゃんを困らせるような答えは持ち合わせてませんよ」
グランは頭を掻き、真っ直ぐに綾乃を見て言った。
「?」
箒で付いてきているヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)はこの答えがよく分からないようだ。
「じゃあ、エルお兄ちゃんについては?」
ずいっと近付いて、更に突っ込む。
「エルさん……ですか。…………ホイップちゃんの大切な人……ですよ」
「ん〜? グランおにいちゃん、なんだかむずかしいです。好きなら好きで良いんじゃないですか?」
ヴァーナーの言葉にグランは苦笑いをしてみせた。
(なんだかちょっと入っていけないな……モテたこととかないからよく解らないよ)
グランの護衛できている琳 鳳明(りん・ほうめい)はそんな事を考えながら、メンバーの前を飛空挺で飛んでいた。
「そうだ! グランさん! 薬の調合の仕方を教えて! 空京に着いたらすぐに取り掛かれるように!」
ファルがグランに聞くと、グランは直ぐに説明を始めた。
それをバイクに乗った四条 輪廻(しじょう・りんね)もしっかり聞いている。
一番最後尾ではロザリンドが皆の荷物を担当していた。
少しでもスピードアップが図れるように。
■□■□■□■□■
イルミンスール魔法学校のある図書館の中、巨大台風対策本部。
そこでは、既に台風対策に集まった人達がいた。
狭山 珠樹(さやま・たまき)が校内放送で集った生徒も大勢いる。
100名はいるだろう。
「ホイップさんのこともありますが、台風の被害を出さない為にも明日には攻勢に出ようと思っていますわ」
集まった人達に珠樹が自分の考えを伝える。
皆、真剣な表情で頷く。
(タマ、ミーもしっかり協力するからな)
新田 実(にった・みのる)はそんな珠樹を見つめて誓うのだった。
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