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【十二の星の華】湯けむり! 桜! 宴会芸!

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【十二の星の華】湯けむり! 桜! 宴会芸!

リアクション

 桜の下ではお茶を楽しむ人だけではなく、なにやら粉ミルクの準備をしている人までいた。
 リアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)だ。
 傍らでは子アザラシのぬいぐるみソプラニスタ・アコーディオン(そぷらにすた・あこーでぃおん)と精霊で外見がシロクマの赤ちゃんのサンティアゴ・ヤグルマギク(さんてぃあご・やぐるまぎく)が気持ちよさそうにお昼寝をしている。
「なんだかお母さんみたいだね!」
 リアトリス達が目に入ったホイップが近くへと寄り、リアトリスへと声を掛けた。
「えっ!? おか、お母さん!?」
「うん!」
 悪気なく言ったホイップの言葉に少しだけショックを受けたようだ。
「ミルクの準備は出来た? って、え〜と、はじめまして! いつもアリスがお世話になってます!」
「えっ? あれっ!? リアトリスさんが2人!?」
 ホイップに声を掛けてきたのはリアトリスとそっくりのベアトリス・ウィリアムズ(べあとりす・うぃりあむず)だ。
「僕がリアトリス」
「僕がベアトリス」
 同じ顔とタイミングで言われて少々混乱しそうになる。
「ミルクも作り終わったし、僕達温泉掘りに参戦してくるね!」
 2人は全く同じ言葉と動作で温泉掘りに行ってしまった。
「……見分けがつかないかも」
 ぽつりとホイップは呟いたのだった。


「なかなか良い場所がないなぁ」
 水着姿を見られない場所を探してウロウロしているのは円だ。
 その手には大事そうにひよこのエリザベートが握られている。
 先ほど、吹っ飛ばされたのが軽く脳裏に焼き付いてるかもしれない。
 とりあえず、他の人達から離れていて、巨大な岩の陰になるところに目星をつけると則天去私で光輝属性を付加させたスコップで楽々掘っていくのだった。
「おんせーん!」
 1人でやっているが楽しそうだ。


 にゃん丸達が掘っている一番大きな穴では風森 巽(かぜもり・たつみ)菩提 達摩(ぼーでぃ・だるま)も手伝っていた。
 ティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)は女子お茶会に参加中だ。
 にゃん丸とカオルが競うように掘っているのを見て、負けず嫌いの巽も参戦していく。
「負けてられません!」
「ほっほ、これも稽古になるのう」
 達磨は自分がやるまでもなく終わりそうだと見るとティアの方へと行き、一緒にほうじ茶を飲むのだった。


 ケイ以外にも落ち込んでいる者がここにも1人。
 一番大きな穴で黙々と掘り続けているのは狭山 珠樹(さやま・たまき)だ。
「もっと何か出来たはずですわ……もっと台風の被害を少なく出来たはず……」
「タマ……」
 新田 実(にった・みのる)は心配そうに珠樹を心配そうに見つめていた。
「聞いて来ましたよ! あっちの木々が生い茂っているあたりが崖になっていて、その下は何もないので土を捨てて良いそうです」
 鄙に掘った土を捨てる場所を聞いて来たルイが戻って来ると、みんなで掘って出した土を実とルイで捨てて行くという体制が出来た。
 これによって、作業のペースは格段に早くなるだろう。


 パワーブレスを掛けて作業しているのは樹とフォルクス、セーフェルだ。
「楽しみだね! お花見しながら温泉に浸かれるなんて……嬉しいな」
 樹は堀りながら、うきうきしているのがよく分かる。
 その隣では小さく浅く温泉を掘っているショコラッテの姿があった。


 薫が言葉の鞭を受けているとき、その側ではまた違う人達が穴掘りをしていた。
「絶好のお花見温泉掘り日和やね」
 七枷 陣(ななかせ・じん)が隣で作業をしている侘助と火藍に話しかける。
「だよねー。あっ……ごっめーん。手が滑った」
 とてもわざとらしく侘助はショウに掘ったばかりの土を掛けていた。
 ショウは少し離れた場所の綺麗に咲いているしだれ桜の下に掘っていたのだ。
「何すんだ!」
 まともに被ってしまったショウが抗議の声を上げる。
「いや、だってなんか悪巧みしてそうな感じがしたから?」
「疑問形をつけるなよ!」
「当たっているのでしょう?」
「ぐっ……」
 吹雪 小夜(ふぶき・さよ)が言うと、ショウは言葉を詰まらせた。
「違う! のぞきは高尚な趣味なんだ!」
 どうやら開き直るというスキルを発動させたようだ。
「……馬鹿っぽいですね」
 火藍の言葉もショウには効いていない。
 小夜はショウを放っておいて、自分で作った1人くらいしか入れない温泉に湯をひくとそこに持ってきていた玉子を投入していた。


 口笛ふきふきアルフレッドが楽しげに温泉を掘っている。
「こんなに綺麗な桜を見ていると口笛も吹きたくなるのもわかるわ」
「うん! 温泉掘るのは楽じゃないけど気持ち良いよね!」
 シルヴィアとミレーヌは互いに笑い合うと、スコップを持つ手に力を入れ温泉の穴を掘っていく。
 その微笑ましい光景の横では神野 永太(じんの・えいた)が怪力の籠手で増した腕力をフル活用し、トラッパーの落とし穴を掘る要領で掘りまくっている。
 何やら土煙まで立っており、土が本当に掘れているかわからないほどだ。
「労働の汗が流したあとは温泉に浸かりながらゆっくり酒が飲めますね! くぅ〜っ! 今から楽しみです」
 燦式鎮護機 ザイエンデ(さんしきちんごき・ざいえんで)は永太に温泉掘りを任せ、自分はカレーを飲んでいた。
 永太を見て、軽く頬が弛緩するのを感じ、これはどういうものなのかと思案しているようだ。
 永太達に近寄るのはリース・アルフィン(りーす・あるふぃん)だ。
 リースは温泉を掘っている人達に水を汲んで行ったり、ヒールを掛けたりして回っている。
 フェリス・ウインドリィ(ふぇりす・ういんどりぃ)はなんとなく、そのあとを付いていっている。