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リアクション
第4章
女性は旅館の中にあった更衣室、男性はルカルカ・ルー(るかるか・るー)が温泉掘り中に用意していたテントの中で着替えることとなった。
テントにはきちんと男性用と書かれている貼り紙がされている。
女性が更衣室に入っていく中、ホイップが入ろうとすると、ルカルカが抱きついてきた。
更衣室の戸の前でパステルイエローの超ミニビキニを纏ったルカルカはのぞき対策として見張り役を買って出ていたのだ。
パッと見裸に見えるぐらい過激なビキニ姿のルカルカに抱きつかれ、驚いていたホイップ。
「石化の時は心臓止まりそうだった……。もうしないでルカ達を信頼して相談して……?」
親友として、ホイップが石化してしまったことに大変心配していたようだ。
「うん……ごめんね。今度はみんなに相談するね」
ホイップはルカルカの胸の中に顔をうずめる形となりながら、そう言ったのだった。
「絶対ね!」
「うん」
ルカルカはホイップを放すと更衣室へと促した。
(子猫が二匹……)
青のビキニを着たダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)はその様子をくすりと笑いながら見ていた。
ルカルカのパートナーカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)と夏侯 淵(かこう・えん)は先に見回りに出ている。
「ばっちりだな」
旅館の更衣室の天井ではなんと総司が板の隙間から覗いていた。
そうとは知らず、皆安心して服を脱いでいく。
「おおっ!」
ホイップも一枚、また一枚と素肌が露わに――。
「こんなところがあったんですね」
「よくやるよなぁ」
総司の背後を取ったのは真紀とサイモンだ。
2人は皆が更衣室に入る前にチェックはしていたのだが、どうやら見落としがあったようだ。
真紀は前もって黒の競技用っぽい水着を着ていたようだ。
「くっ」
2人は総司の首根っこを捕まえ、外へと引っ張りだした。
「ネズミを一匹発見」
真紀はルカルカとダリルの前に突き出した。
サイモンが総司の後ろ手を捕まえ、動けないようにするとルカルカと真紀は同時にキックを後頭部に食らわせた。
その衝撃でルカルカの胸の水着がはらり。
「し、死して悔いなし……がくっ」
ダリルが慌ててタオルで形の良い大きな胸を隠したが、総司には何かが見えたのかもしれない。
鼻血を出し、幸せそうな表情で気を失った。
「何かあったの?」
騒ぎを聞いてホイップが出てきた。
「ネズミ退治だ」
サイモンが簡潔に答える。
「ずいぶん着替えるの早かったね! 水着可愛い!」
ルカルカはホイップの着ているフリルと大き目リボンを使った桜色のビキニを褒めた。
「ありがとう! ルカルカさんも、真紀さんも似合うね! 着替えはね、陣さんに前もって着替えていった方が良いって教えてもらってたの」
なるほどね、とルカルカと真紀は頷いた。
他の人達も着替えが終わったようだ。
ルカルカとダリル、真紀とサイモンは二手に分かれ温泉を巡回しにいったのだった。
■□■□■□■□■
「着きましたよ」
司が振り返り、ティセラに告げると、ティセラは小型飛空艇から降りる。
「有難うございます」
優雅にお辞儀をすると、2人は旅館の中へと入っていった。
更衣室を過ぎ、温泉へと出ると鄙が出迎えた。
「久しいな」
「お久しぶりですわ」
ティセラと鄙は抱擁を交わす。
鄙はティセラが到着していたことに気が付いていたのか、いつの間にか目を覚ましていた。
「お世話になりますわ。……なんだか人が多いんですのね」
「ああ、今日はホイップ殿が友人達と来ていてな」
「……そうですか」
ティセラはホイップの名前を聞くと目を少し細めたが、すぐに元に戻した。
軽く言葉を交わしてからティセラは着替えに更衣室へと入って行った。
その様子を見ていた司は自分の役目はとっくに終わっていた事に気が付き、ふんどし型の水着を着て(シオンが買ってこさせた)、透け感のあるショートパレオ付ビキニ水着を持ってシオンの元へと向かって行ったのだった。
シオンの元に到着した司は遅いと罰ゲームを受ける羽目になっている。
皆の言う事を1つずつ聞いてこい、と。
「あの、鄙さん」
鄙が起きているのを見て、スクール水着を着たカッチン 和子(かっちん・かずこ)が声を掛けた。
「ん? なんだ? 何か用でもあるのか? 我はこれから眠るので忙しいんだが?」
なんだか少し不機嫌に返されたが、臆することなく、自分が聞きたかった事を口にする。
「ホイップさんとは昔からの知り合いなんだよね? ホイップさんの昔話とか聞きたいな」
「そうか。ホイップ殿は……そうだな……昔から変わらないな。今こうして目の前で明るく朗らかに笑っている。昔も女王様と十二星華達がこうして、この温泉に浸かりにきていたが、態度が変わっておらん」
「へぇ!」
目を輝かせて自分の話しを聞いている和子に気を良くしたのか、鄙はホイップの話しを続ける。
「5000年振りくらいだというのに嬉しいことだ。我の作ったトマトを使った和風料理をそれは美味しそうに頬張ってくれていた。そういえば、ホイップ殿はお酒が入ると少し困った癖が……」
ふむ、と左手を顎の下にもっていった。
「どんな癖!?」
「……いや、それならきっと後で見られるのではないか? どうやらお酒を持ってきておる者もいるようだし……ホイップ殿にも勧めるのだろう?」
にやりと笑うと、鄙はまた桜の下の定位置へと移動し、欠伸をしてから眠りにおちてしまった。
和子はホイップの方へと目を向ける。
まだお酒を勧めてはいないようだ。
そこへ、ティセラが着替え終わって、外へと出てきた。
大判の白いタオルを巻き付けただけの姿だ。
「あ、ティセラさん! 聞きたい事があるんだけど良い?」
「ええ、なんでしょう?」
「ズバリ! ティセラさんの好物は?」
「そうですわね……スコーンやドーナツですわ」
すぐに返ってきた。
「甘いものとか?」
「ええ、甘いものは好きですわ」
「そっか! 有難う!」
柔和な笑みを返すとティセラは温泉へと入って行った。
しだれ桜のすぐそばでは、ルイが借りた大きな桶の中に水を入れていた。
水が入ったら、そこに氷術で作った氷を浮かべ、持ってきていた大量の飲み物を投入していく。
「これでいつでも準備オッケーです。ワタシが若い頃体験したあの感動を今の世代にも分けて差し上げます!」
ルイは歯を煌めかせて笑うと、近くの温泉に足を浸からせていた。
ここからなら温泉から上がる人はよく見えるし、温泉から上がった人はルイの事がよく見える。
温泉に上がった人の為にキンキンに冷えた飲み物を用意していたのだ。
瓶牛乳類、ソフトドリンク、ビールやカルーアミルクまで入っている。
保冷バッグに入れているのはどうやらワインのようだ。
グラスまで持ってきている。
「こんなに沢山もってくるなんて凄いですねー」
足湯状態のルイに話しかけたのは永太だ。
「皆さんが喜んでくれればこれほど嬉しい事はないですよ」
キラリと歯を見せ、スマイルをした。
「永太も日本酒持ってきたんで、良かったら一緒に――」
「ごめーん! こっち熱いから氷で冷やしてくれない?」
カレンがそう呼ぶとしぶしぶ永太は温度の調整に向かった。
温度の調整が終わり、今度こそゆっくりと酒を飲もうとしたが、またしてもお声が掛かってしまった。
「これじゃあ、ゆっくり出来ないよ……ま、皆が喜んでくれればこれほど嬉しいことはない……ですよね?」
「はい!」
永太はそのまま三助役を買って出たのだった。
同じく、薫も温泉同好会のノボリを立てて三助役を大人しくしているのだった。
イリスは薫の働きを見ながら温泉を思う存分堪能している。
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