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【十二の星の華】湯けむり! 桜! 宴会芸!

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【十二の星の華】湯けむり! 桜! 宴会芸!

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 ティセラがタオルを巻き直してから少し遠くで温泉に入っていると、泳いでいたティアにお湯を掛けられてしまった。
「すいません、うちの子がご迷惑を!」
 慌てて、巽がティセラに謝る。
「ごめんなさい! 人がいるとは思ってなくて!」
 ティアも急いで頭を下げる。
「これくらいなんでもありませんわ」
 ティセラはにこりと笑って、気にしていない。
「連れが迷惑かけたのう。べっぴんさん、日本酒などいかがかな?」
「ありがとうございます。お気持ちだけいただきますわ」
 達磨の好意をやんわり断った。
「おねーちゃん、凄く髪の毛きれーい!」
 ティアはお湯を掛けた事を忘れているのか、ティセラのつやつやヘアーを触りだした。
「ふふ、有難うございます」
「そーいえば、おねーちゃんはどうしてここに来たの?」
「ちょっと傷を癒しに来たのですわ」
「怪我させるなんて酷いなぁ。そーだ! 今度からタツミが守ってあげれば良いよ! キレイなおねーちゃんを守るのもヒーローのお仕事だよ!」
 ティアが目を輝かせて言うと、巽も頷いた。
「そうだ、ホイップさんとはどういう関係なんですか?」
「……ホイップは裏切り者ですわ」
 ティセラは鋭い視線をホイップへと向けた。
 その視線を逃れるようにホイップは旅館の中へと入ってしまった。
「ん〜……あまり聞ける話じゃなさそうですね。お時間を割いて頂きありがとうございました。そうだ、お名前……は、今度お会いした時にお聞きしますね」
 そう言うと、巽達はティセラの元を去って行った。
 どうやらティセラと知って接触したわけではなかったらしい。


 気が付けば、ティセラの周りは人が集まって来ていた。
 タオルを巻いて入っていた終夏とオウロはティセラが来る前からこの近くでまったりしていたらしい。
 大勢で入るのが恥ずかしくて人気のないところを選んでいたらしいが、気が付けばこんなところに。
「あぁ〜、えーっと……温泉卵食べる?」
「さきほど貰ったので大丈夫ですわ」
 終夏は一緒に入って作っていた温泉卵を勧めたが、あえなく撃沈。
(終夏もホイップの嬢ちゃんにお洒落の方法でも教わったら多少ましになるんやないか?)
 その横では日本酒を持ちこんで1人で酌をしているオウロの姿があった。


「はじめまして、ボクは桐生 円。いつもパッフェルくんとは、よく遊ばせてもらってるよ」
 円は挨拶をすると、ティセラの横に入ってきた。
 水着は貧乳を必死に隠そうと胸にフリルをふんだんに使ったものと、下はホットパンツのような作りのものを組み合わせている。
「これからも宜しくお願いしますわ」
 優雅に挨拶を返したティセラ。
 その豊満なバストに円は目が留まったが、すぐに視線を顔へと戻した。
「ねぇねぇ、パッフェルくんとセイニィくんってさ、どういう関係なの?」
「あの2人は親友ですわ」
 自分の仲間と仲良くしている人だからなのかだいぶ友好的だ。
「そうなのかぁ」
「そのアヒルちゃん、可愛らしいですわね」
 手にしていたアヒルのおもちゃを褒められると円はなんとも嬉しそうな表情を見せた。


「またホイップを傷付けに来た……ようには見えませんね」
 ティセラ達の様子を見ていた刀真が横に入ってきた。
 黒地に銀の蔦が描かれたトランクスタイプの水着を着ている。
「ええ、今日は骨休めに来ただけですわ」
「電話では挨拶しましたが……はじめまして、樹月刀真クイーン・ヴァンガードです……今日は休みですけど」
「ティセラ、私この前電話でシャガの事について失礼な事を言ってごめんなさい。私が漆髪 月夜」
「あなた達が……そうでしたの」
 挨拶をしてきた2人を見て、ティセラは少し目を細めた。
「え〜と……シャガはいないよね?」
 キョロキョロと不安げに辺りを見回す月夜。
「連れて来ていませんわ」
 タオルを巻いた月夜の様子を見て、ティセラはくすりと笑った。
「あの人は……苦手」
「確か……シャガを踏みつけた方……ですわよね?」
「う……刀真が踏めって無理矢理」
 月夜は刀真を睨む。
「いえ、あの……悪かったですよ。で、ティセラに聞きたい事があるのですが、良いですか?」
 話題を転換した。
「構いませんわ」
 ティセラはどうぞと促す。
「眠りから覚めた人達の多くは記憶が曖昧なのですが君はどうです?」
「はっきり覚えていますわ」
 ティセラは強い眼差しで言う。
「星剣ではない君自身の光条兵器は何ですか?」
「十二星華の光条兵器は星剣ですわ」
「星剣を含めて女王器は使用者の身体能力を強化するんですか?」
「それは、女王器や星剣次第ですわ」
 ゆっくりとティセラは答えた。
「最後に君はアムリアナ女王の事が好きですか?」
 この質問を聞くと、ティセラは無言でビックディッパーを出して切っ先を首筋に突きつけた。
「すみません」
 刀真は降参と手を上げ、謝るとティセラはすぐに武器をしまった。
「これ以上は無粋ですね。温泉を堪能することにします」
 刀真は質問をやめ、ティセラの近くで月夜をまったり温泉を楽しみだした。


 ティセラの割と近くでは、呼雪、ファル、天音、ブルーズが桜を眺めながらまったりと温泉に浸かっていた。
「僕も温泉は好きだけど、早川も相当好きだよね」
 そう天音が問う。
「そうだな……。特に今回はホイップから誘ってもらったものだし、楽しみにしていたよ」
 呼雪は落ちてきた桜の花びらを1枚つまみながら返した。
「ホイップは十二星華だったよね。あまり詳しく無いな………」
 天音はホイップが入って行った旅館を見て言った。
「ああ、ホイップは大切な友人で牡牛座の十二星華だ」
「あくまでも大切な友人なんだな」
「勿論だ」
 呼雪は断定した。
「そうそう、早川はティセラを女王候補宣言の時以外に見た事あるの?」
「ホイップの事件のときに会った程度だが……どんな粗暴な奴かと思っていたが、実際は気品のあるお嬢様って感じだったな。困った事に印象はそう悪くないんだ。誰から恨まれようと、悪し様に言われようと揺るがない決意や信念を持っているのだと思う」
「ふ〜ん……お嬢様か。それにしても……ミルザム・ツァンダも大変だね。地球人の女王候補に対する認識もまちまちだし、あんな厄介そうな女王器を好んで持ち逃げしたように言われたり、恨まれたり」
「誤解だろう?」
「まあ、そうなんだろうけど。実際、生贄の遺跡でシリウスと朱雀の女王器と関わったけれど、僕は噂の様に自分勝手な人だとは思えないし……そういえば、白虎の女王器はヨサークが入手したのか。あとは麒麟と玄武だね。麒麟の方は少しヒラニプラの貴族と知り合う機会があったから追っているけど、結構ややこしそうだよ」
「それじゃあ、あとは玄武の行方だけが分からないわけか……」
「そうなるね」
 そんな呼雪と天音の会話をよそに、ファルとブルーズは隣で遊んでいる。
 ブルーズがタオルの中に空気を入れて、ぷっくりと膨らんだクラゲを作っているのだ。
「こうすると……クラゲになる」
「わぁーーーっ! スゴイや!」
 そのクラゲを目を輝かせてファルは見つめる。
 自分でも作ろうとするが、なかなかうまくいかない。
「しかし……呼雪は――」
「コユキがどうかした?」
 ファルが聞いたが、ブルーズは言葉を濁してしまった。
 どうやら目のやり場に困って、ファルと一緒に遊んでいるようだ。
「楽しそうですわね」
 そんなドラゴニュート2人に話しかけたのはティセラだ。
 いつの間にか、近くに来ていたのだ。
 ファルはびっくりして、口をぱくぱくしながら呼雪の方を見たが普通に接しているのを見て、更にびっくりしていた。
「丁度良い。聞いてみたいことがあったんだ」
「なんでしょう?」
 呼雪の言葉に笑顔で応える。
「『十二星華の使命』とはなんなんだ?」
「シャンバラ女王の血によって作られた女王器『星剣』の守護者ですわ」
 ティセラはしっかりと言葉を発した。
「僕からも、携帯のメアド教えて? あ、別にナンパではないから」
「そうですわね……わたくしの味方になるのでしたらお教えしますわ」
 天音はその答えに、う〜んと考え込んでしまった。
 そのまま、答えは出ないままティセラは元居た場所へと戻ってしまった。