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【十二の星の華】黒の月姫(第3回/全3回)

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【十二の星の華】黒の月姫(第3回/全3回)

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 しかし、にゃん丸のその手には抜き取った指輪が握られる。
「…刀真、あとは頼む…」
「にゃん丸!」
 みんなが一斉に叫び、にゃん丸の救護に当たる。
 にゃん丸が命がけで奪い取った指輪を丁重に扱う源 紗那(みなもと・しゃな)
 ハンカチの上にそっとのせ、影響をうけないよう、自らと周囲の生徒たちに「庇護者」をかけ、指輪を調べた。
「…今は光も発さない…おそらく、この指輪は真珠と一体であることで、力を発していたのですね」
「真珠は『指輪が離れない』と言っていたからな…にゃん丸の思い切った行動が、指輪と真珠を乖離させたのだろう」
 黒龍が無茶をしてぼろぼろになった漸麗を肩に抱えてやってきた。
「リフルの件もありましたし…でも、問題ないとわかれば…プリムラ、お願いします」
 プリムラ・ヘリオトロープ(ぷりむら・へりおとろーぷ)に、紗那は指輪を破壊させた。
 ガツっと音がして、バラバラになる指輪。
 源 義経(みなもとの・よしつね)はことを見守る。

 その瞬間、「うう!」と叫ぶ真珠。
 そこに刀真と駆けつけた漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が真珠を抱き抱えると、真珠の意識が戻りはじめる。
「…わたし、…何を、したの…!?」
 菅野 葉月(すがの・はづき)が、震える真珠を抱き留める。葉月はあらかじめ、保健室から用意してきた救急箱をにゃん丸の手当担当の生徒達に渡し、一緒に持ってきた毛布で真珠を包んでやった。
「まだ意識が朦朧としているみたいです…それにしても、服もボロボロですね…辛かったでしょうに」
 ヒーリングされるにゃん丸の姿が目に入ると、はっと真珠は体を起こす。
「にゃん丸さん!」
 真珠が血まみれになっているにゃん丸と、自分の手を握っている短剣に驚く。
「な、なんなの、これ!」
 真珠はうっすらと記憶を取り戻す。
 ザラザラとした画像のなか、短剣を自分が駆けつけてきたにゃん丸の体に突き刺した画像が脳裏にありありと浮かび上がる。
「きゃああああ!」
「おちついて、真珠!」
「にゃん丸さん! にゃん丸さん! 死なないで!」
 真珠はぼろぼろの体でにゃん丸のもとに駆けつけると、その手を取った。
「…真珠、記憶が戻ったのか…」
 苦しい息の下から、にゃん丸はにやっと笑ってみせる。
「真珠ちゃん、落ち着いて…僕たちがにゃん丸を助ける…それに、どうやら君もボロボロのようじゃないか…」
「漸麗さん…!! にゃん丸さんを助けて…!」
「大丈夫だよ!」
 漸麗が見えない目で、にゃん丸にヒールを施していく。
「そうよ、私だっているもの!」
 月夜もそれに加わる。
 ガクガクと震える真珠は、周りの惨状を見、自分のしてきたことを理解し、恐れをなす。
「…み、みんな、ごめんなさい!」
 発作的に飛び降りようとする真珠を駆けつけた御凪 真人(みなぎ・まこと)は、真珠の手をぐいっと引き、屋上へと引き戻した。それはまるでアクロバットのようでもあった。
「何を考えているんですか!」
 バシッ!
 あえて、真人は真珠の頬を撲った。倒れる真珠。
 真珠は真人に撲たれた頬を手で覆い、真人を見上げる。
「だって、私の汚いこころが…姉様を恨む気持ちが、結局あの指輪をつけることになったのだもの、それに、みんなをこんな酷い目に合わせたのだもの」
「…指輪は誰に貰ったんですか」
「地球の家で病気で伏せっているとき…声が聞こえたの…『ルクレツィアの娘、真珠よ、お前に素敵なものをあげよう』って…『強くなれるよ』って声に私、知らない間に外へ出ていた。…その間の記憶はないの。ただ、言われたわ。『赫夜に当主の座を奪われ、祖父にも冷たくされている、お前はそのことで自分を責めている、それが体を悪くさせているんだよ』って…その通りだと思ったわ…だから、指輪が欲しいと思ったの…強くなれる、指輪を持てばって…」
「そんなのは、本当の強さじゃない。…君はもうすでにそれが解っているでしょう?」
「…でも、みんなにひどいことを…」
「償うのなら生きて償えば良いんです。それに君は一人じゃないのですから。みんな理解してくれますよ」
 セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)も励ます。
「真珠、確かに、あなたの言っている強さは本当の強さじゃないわよ。誰かを傷つける力は自分自身を傷つけるのよ。私はね、本当に強いヤツってのはただひたすらに諦めないヤツだと思うわ。どんなに辛くても立ち上がるそんなヤツよ。あなたもそうなれるはず!」
「私も、そう思います」
 ミュリエルとロートラウトも真珠の周りに集まってくる。
「…ありがとう…みんな…」
 真珠がボロボロと涙を流す。