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【十二の星の華】黒の月姫(第3回/全3回)

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【十二の星の華】黒の月姫(第3回/全3回)

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 しかし、ミケロットはテロルチョコを一瞥したのみだった。
「みなさんが食べると良い。…僕は甘いものは苦手でね。…いいでしょう。もう、僕も隠し続けるのに疲れました」
 ミケロットが話はじめる。
「ルクレツィア様の一家はイタリアのマフィアのような存在だ。僕はルクレツィア様の兄、ケセアレ様に仕えるため、ルクレツィア様たちの住む城で一緒に育った仲だ。ルクレツィア様はそれは美しく優しい人だった。10才で親元を離れ、仕事を覚えなければならない僕にも、ルクレツィア様は姉弟のように接してくれた」
 生徒達もミケロットの独白を黙って聞いている。
「だがルクレツィア様は自分の家を嫌い、それに執着心の強い兄、ケセアレ様から逃げるため、家を出、大学で考古学を学んだ。そこで知り合ったのが藤野 真一、真珠の父だ。それでもケセアレ様はルクレツィア様を手元に置きたがってね、しかもルクレツィア様の娘、真珠にも心を奪われてしまった。だから、真一のみを殺すつもりで自動車に細工をさせたのに、運悪く、ルクレツィア様まで亡くすことになってしまった。一人生き残った真珠を何とか手に入れようとケセアレ様は手を尽くしたが、藤野 真言がそれを許さなかった。…真言にとっても真珠は大切な跡継ぎだからね」
「それが、全てのことの発端?」
 祥子が冷静に問い詰める。
「…僕はね、この蒼空学園を卒業し、本当はケセアレ様のところへ行くはずだった。だが、ルクレツィア様の死を聞き、ここに用務員として残ることにした。ケセアレ様がいずれは、真珠と赫夜をここに入学させるのが解っていたからね…」
「ケセアレ・ヴァレンティノはおかしな組織にルクレツィア生前から参加していた、そういう情報が静麻から届いている。それは『鏖殺寺院』なのではないか?」
「それにお前、ケセアレとパートナーの契約しているんじゃないのか?」
 邦彦や周、総司も問い詰める。
「その辺はご想像にお任せするよ」
「大体、なんてねちっこい野郎なんだ。そのケセなんとか兄ちゃんってのは! フツー妹の幸せを願うのが兄ちゃんってもんだろ!? 俺には理解できねえや!」
 真っ直ぐな心を持つ周は吐き捨てるように怒りをぶちまけた。
「お願い。真珠だけは解放してあげて」
 と繰り返し懇願する祥子にミケロットは少し眉間に皺を寄せて答える。
「それはできない…真珠は我々の庇護のもとにいるほうが幸せだ…赫夜に当主の座を奪われ、体が弱い真珠を、真言は大切にしてくれなかった」
「それは誤解だ! 真言殿も真珠のことを思っていた!」
 と、駆けつけた静麻が叫ぶが
「いいや。僕とケセアレ様のところにいるべきだった。真珠は…そうしたら、君たちともこうやって争うことがなかったのに」
 と、つぶやくとミケロットはあっという間に生徒達の眼前でまるでするりと、縄を解いてしまう。
「こいつ、体の関節を外して…」
「ケセアレ様のもとでは、僕は体術もスパイ術も学んだからね…」
 と、手を上げると上空からシャープシューターが落ちてきて、すたっとミケロットの手の中に収まってしまうと、銃口を生徒たちに向けた。
「…誰か他に協力者がいるのか!?」
 高月 芳樹(たかつき・よしき)がそれを防ぎながら、説得しようとする。
「だからと言って、真珠をあんな目に合わせるなんて!! 酷いじゃないか!」
 円は前衛を担当し、翡翠は『アルティマ・トゥーレ』を使用しつつ四肢を狙い、ミケロットの機動を削ごうとする。
「僕は真珠を出来るだけ、傷つけないよう、丁重に扱ったよ…でも、多少の犠牲は必要になってしまう。…でも、真珠の心の傷も、体の傷も僕らが癒してみせる。…さて、テロルチョコを差し入れしてくれたお嬢さんもいることだし、くらうがいいよ」
 ミケロットはテロルチョコを握ると、自分たちを囲んでいた生徒に向かって投げはじめる。
「くぅ」
 幸い、テロルチョコにヒットする生徒はいなかったが、それでもミケロットに遅れをとったのは事実だった。
 テロルチョコを差し入れしたリナリエッタは、面倒ごとに巻き込まれたくない、と早々にディテクトエビルで周囲の人間が騒ぎ始めたと察知し、逃げ出す。
「三池 惟人…『ミケロット・ダ・コレーリア』…ふふ、良い男だったわね!」
 リナリエッタはそうつぶやいて、その場を去る。

 その時だった。
 広瀬 ファイリア(ひろせ・ふぁいりあ)小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が超絶ミニのメイド服を風になびかせて、戦闘ヒロインのように美羽の小型飛行艇に乗り、登場したのだ。
「真珠を操る悪い奴は」
「きっちり掃除する!」
 ファイリアと美羽は声を揃え、ポーズを決め美羽は、スカートが短い瀟洒なメイド服を着用し、脚線美全開で周囲の注目を集めた。
「う、鼻血が…」
 周が顔を押さえると、総司が
「しっかりしろ」
 と背中を叩いてやる。
「ダブルメイドアタック!!」
 小鳥遊 美羽と広瀬 ファイリア、2人のメイドによる同時攻撃。美羽はバーストダッシュで勢いを付け、必殺かかと落としを、ミケロットに食らわす。ミケロットは一瞬の差でそれを避けるが、美羽はそのまま、ミケロットのみぞおち目掛けて、足蹴りをかます。
 そこに
「綺麗にお掃除しますです〜っ!!」
 ファイリアが叫んで、攻撃を仕掛ける。
 ウィノナ・ライプニッツ(うぃのな・らいぷにっつ)はファイと美羽が同時攻撃を仕掛ける際、『アシッドミスト』をミケロットの周囲に展開、視界を塞ぐと同時に、注意を別に向けさせるために刹那に攻撃を指示した。同時に魔術を撃ちこみ、足止めを狙い、シャープシューターを叩き落とした。
「キミの目的……成功させるわけにはいかない!」
 広瀬 刹那(ひろせ・せつな)はファイリアとウィノナ、それに美羽をフォローする。
「真珠さんを悪者に仕立て上げようとしたあなたを、私は許せない!! 真珠さんを元に戻せーっ!」

 真紀や邦彦たちも、応戦する。

 さすがの連続攻撃にミケロットも、口の端から血を流し、腹部を押さえている。