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【十二の星の華】黒の月姫(第3回/全3回)

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【十二の星の華】黒の月姫(第3回/全3回)

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 そっと弾幕の中を進み、影から三池惟人を確保しようとするが、突然、総司の携帯が鳴って惟人に気取られてしまう。
「そこに誰かいるのか!」
 惟人がシャープシューターを今度は総司に向けようとするのを、一瞬の隙をついて、特技の柔道で組みつき、シャープシューターを握っている腕をねじ上げようとするが、予想以上に惟人の力が強く、もみ合いが続く。
「覚悟はいいか? オレはできてる! 絶対にお前を捕らえる!」
 総司は叫ぶ。
 そこに斎藤 邦彦(さいとう・くにひこ)が隠れ身を使用し、『バーストダッシュ』で一気に接近して仕掛けて、総司の手助けをする。
「大丈夫か、総司!」
「問題ない、邦彦さん、それよりも惟人のシャープシューターを取り上げてくれ!」
「解った!」
「そうはさせない!」
 そういうと惟人は利き手ではない左手からも、シャープシューターを取り出す。
「両利きか!」
 しかし、邦彦は接近戦を予想しており、ショットガンで惟人のシャープシューター二丁を上手く狙い撃ちして、破壊してしまう。
「く…」
 だが、その瞬間、惟人はまだしぶとくスプレーショットを繰り出そうとする。
 しかし、それは唐突に上空からの攻撃で防がれ、惟人はスプレーショットを叩き落とされた。
「『最強のナンパ師、女の子の笑顔の味方』! 鈴木 周(すずき・しゅう)参上!」
 周は飛行艇を使い、怪しい人物を捜し出そうとしていたところに、弾幕が上がっていることに気がつき、この現場へ急行したのだ。
 飛行艇をふわっと着地させると、惟人を拘束している邦彦、あざみ、玖朔、総司の前でニカっと笑ってみせる周。
「さすがのぞき部部長! 総司やるじゃん! 『のぞき部』としての面目も立ったし、あとはにゃん丸が真珠ちゃんを救い出すだけだな!」
「…この状況で、『のぞき部』とは連呼しない方がいいと思うが。あとは如月佑也さんに赫夜を説得して貰い、黒脛巾 にゃん丸(くろはばき・にゃんまる)さんに真珠を救い出して貰うだけだな…」
 総司はここへ向かう前、二人に依頼していたのだ。
 総司の言葉に佑也はこくり、とうなずき、にゃん丸は「当たり前だ!」と意気込んでいたのだった。

☆   ☆   ☆

 にゃん丸は、パートナーのリリィと話していたことを思い出していた。
 リリィ・エルモア(りりぃ・えるもあ)はにゃん丸の真珠への思いを打ち明けられ、驚いてしまう。
「え! あんたの好みってあたしじゃなかったの?」
「い、色々あって…なんていうか、真珠の力になってやりたくって…」
「まさか…、あんた敵に味方する気?」
 鬼崎朔から送られた写真を見つめ、思い悩むにゃん丸にリリィは詰め寄る。
「あたしはパラ実送りなんて絶対に嫌だからね!」
 長く続く沈黙。川辺の土手でスミレが風にそよぐ。
(スミレの花言葉が『真実の愛』って知って…るわけ無いか)
 リリィはスミレの花をたまたま、摘んで真珠のところへ持って行ったにゃん丸の行動に不思議な縁を感じる。
「ねえ、にゃん丸。あんたは真珠さんの外見に惚れたの? 違うでしょ。あんたの言う通りの娘なら、今の状況を本人は望まないはずよ」
 ため息をつくリリィ。
「仕方ないわね〜。あたしは三池惟人と事故の真相について調べてみるから。何もしなかったら、一生悔やむわよ! さっさと行きなさい!」

☆   ☆   ☆

「リリィ…すまねえ! その代わり、絶対に真珠を助けてみせる…!」



【第二章 ミルザム】



 時は少しさかのぼる。

 ネル・マイヤーズ(ねる・まいやーず)は三池 惟人の探索にあたっている斉藤邦彦のため、ミルザム襲撃の現場で時間稼ぎをしていた。
(私としては危なっかしいから、邦彦の護衛したいんだけどね…確かに邦彦ほど、上手く隠れたり出来ないから妥当な線だわ。邦彦、あなたの思いに付き合ってあげるわ、ええ
『相棒』だからね。…気をつけて。私は現場で時間稼ぎに徹する。邦彦、あなたは赫夜のために、この因縁の連鎖を断ちきろうとしているのね…あなたらしいわ。…いいわ、ミルザムや生徒達、そして赫夜も真珠も、私が護ってみせるわ…邦彦! あなたの願いのためにも…!)


 赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)は、『要人警護』でミルザムを守りながら、なんとか赫夜に暗殺を思いとどまって貰おうと説得に挑んでいた。
「赫夜さん、こんなことをしても無駄だ。あなたは恐らく『ミケロット』なる人物に真珠さんを人質に取られ、仕方なく、ミルザム様襲撃をしているのでしょう? ですが、意味のないことだ。なんとか思いとどまってくれないでしょうか?」
 それに対して、赫夜は無言を貫き通した。
「…説得に応じて貰えないなら、仕方がありませんね」