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【十二の星の華】黒の月姫(第3回/全3回)

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【十二の星の華】黒の月姫(第3回/全3回)

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「くっ!」
 さすがに苦戦する赫夜。
 その戦況をさとったのか、アリアは『ブライトグラディウス』から通常の光条兵器へと切り替える。虹七がアリアに
「想いの力よ、お姉ちゃんの剣に輝きを!」
 と、剣を届ける。
「赫夜さん、あの時の言葉、私の心に届いたよ。でも1つだけ間違ってると思うの…1人で光と闇を等価に扱うことなんて、出来ないと私は想うの。だから、みんな、手を取り合って支え合うの! 貴方にもその力があるはずよ! 一緒に歩いて行こうよ、明るい道へ!」
「アリア…」
 アリアの言葉に、恭司も霜月も頷いた。
 心が揺れるのか、赫夜の手が止まる。しかしまたしても、声が響く。
「ねえさまぁ! 早くしなさい! あなたの大事な真珠が死ぬわよ!」
 ケラケラと笑い、自分の小指を囓る真珠。ポトポトっと真珠の小指と唇からその血が滴るのが見えた途端、赫夜は
「済まない!」
 と、剣を再び振り上げた。
「…やっぱり、真珠さんの意識が戻らないと説得は難しいの…!?」
 アリアは悔しさと、そして真珠と赫夜をこんな目に遭わせている人物達に怒りを覚える。
 
☆   ☆   ☆   ☆   ☆    ☆   ☆   ☆   ☆   ☆

 一方、リリィは静麻から聞いた真言の言葉を、携帯でにゃん丸に告げた。
「そんなことが…」
 事情を聞いて絶句するにゃん丸。
「急いで、にゃん丸! どうやらミケロットものぞき部メンバーや邦彦くんたちがつかまえたみたい!」
「解った!」
 にゃん丸は校舎の屋上へ向かって駆け出していた。
「真珠をあの指輪から、解放さえすれば…!! 赫夜もきっと、襲撃をやめるはずだ!」



【第三章 三池 惟人】



 校舎の裏側の一角に、人が集まっていた。
 三池 惟人はその中心に置かれ、生徒達に囲まれている。
「…穏やかじゃないね、君たちは」
 手と足を拘束された惟人は、いつものような笑顔を浮かべる。それに一瞬ぞっとする生徒達。
 勇は『蒼空学園特別会館を襲ったアッサシーナ・ネラ』と惟人が同一人物であるという証拠を突きつけた。
「それに、貴方、いえ、惟人さん。その整った肌、姿…日本人ではないよね? 『ミケロット・ダ・コレーリア』それが惟人さんの本当の名前なんじゃないのかな?」
 黙り込み、うすら笑みをたたえたままの惟人に勇は詰め寄る。
「ボクはただ本当の事が知りたい。貴方が何を思って行動したかを貴方自身の口から聞きたいんだ。ルクレツィアさんっていう人を愛していたと聞いたよ。人を愛した事のある人がこんな事をするのは絶対何か理由があるんだと思う。…貴方はもしかして赫夜さんを憎んでいるんじゃないのかな? だから彼女にあんな事をさせているの?」
 その瞬間、三池 惟人、いやミケロットははじめて表情を変えた。
「僕は赫夜を憎んでいない。…むしろ哀れと思う」
「そしたら、これはなんなの?」
 宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)は真珠から預かったロケットをミケロットの眼前に差し出すと、さすがのミケロットも顔色が変わった。
「三池惟人、いえミケロット。貴方の目的は何? 吉備津老の言葉から察すると、真珠の母親の死に原因がありそうだけど。それとも藤野家に真珠の母が嫁いだ事自体が原因? このテロが復讐というならそれは貴方の自由だけど、それに真珠を巻き込む必要はないはずよ。それに、あんな真珠の姿を真珠の母、ルクレツィアが望むとは思えないわ」
 ミケロットは祥子が目の前に差し出したロケットから目を反らしている。それは幸せだったころの思い出から目を反らしているように、祥子には思えた。
「ねえ、ミケロット。子を遺して逝く親の望みは我が子の健やかな成長と幸多き人生なの。せめて、真珠だけは解放してあげて」
 祥子はそう言いながらも、最後の手段としてミケロットを『忘却の槍』で刺し、記憶を奪い、真珠を助けるよう言いくるめてしまう策も冷静に考えてもいた。
 騎沙良 詩穂(きさら・しほ)がミケロットを説得する。
「ミケロットさん、この蒼空学園を卒業して6年かな、ずっと蒼空学園にて真珠お嬢様が入学してくるまで、三池 惟人として待っていたのでしょう? それほど、愛してるんでしょう?」
 セルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)
「ミケロットさん、あなたは本当は真珠さんと赫夜さんの兄弟ではないのですか?」
 と問いかける。
「僕と真珠、それに赫夜がかい!? あはは、それは驚いた。…君はルクレツィア様とどこか面影が似ているね…美しく、優しそうなところかな。しかし、それにしてもその推理はありえないよ。僕とルクレツィア様は12才ほどしか歳が違わない。ルクレツィア様が生きていればまだ36才だ。僕のような大きな子供を持つのは無理だよ」
 シャンバラ教導団の比島 真紀(ひしま・まき)は冷たい視線をミケロットに送っていた。
「ごたくはいい。真実を話してもらいたい」
「話す気がない、と言ったら?」
 ニヤっと笑うミケロットの瞳をじっと見つめると、真紀は至って冷静に
「誰だったかな…『鳴かぬなら、殺してしまえ、ホトトギス』と詠んだのは」
「おだやかじゃないな」
 総司はつぶやくが、別に止めようともしない。

 翡翠と円も同様にミケロットの真意を探るべく、その場に立ち会っていた。
 そこに雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)が地味で暗い女「里奈」となってテロルチョコを差し入れしてくる。
「あああ、あの…みみ、みなさん。少し、お、おちつきましょう」