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【金鷲党事件 一】 ~『絆』を結ぶ晩餐会~ (第1回/全2回)

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【金鷲党事件 一】 ~『絆』を結ぶ晩餐会~ (第1回/全2回)

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第五章 身代わり

「円華様は、どうしていらっしゃる」
「はい、お部屋にいらっしゃいます」
侍女は、由比景信の問いにそう答えた。
「そうか」
 景信はそれだけいうと、侍女には眼もくれずに、大股で扉に歩み寄った。
「円華様、少々よろしいですか」
「どうぞ、開いています」
 室内にいたのは、五十鈴宮円華1人だった。上品な作りの椅子に腰掛け、窓の外に広がる真っ黒な水面を見つめている。
「もう、終わったのですか」
「はい。侵入者は、全て成敗致しました」
「そう……。お客様や警備の方達は?」
「ご無事です。少々お怪我をされた方はいらっしゃるようですが……」
「よかった……」
 そういう円華の顔に、喜びは無い。
「しかし、円華様もお人が悪い」
「……何の事ですか?」
「影武者を立てるのであれば、一言私にご相談下さってもよさそうなものを」
「やはり……気が付かれましたか」
「例えどのような姿をしておったとて、父娘ですからな」
 その言葉に、どこか寂しそうな顔をする円華。
「しかし、全て思惑通りに行きましたな。見事なものです」
「思惑通り?」
 円華の眉が、ピクリと動いた。
「そうではありませんか。予定通りテロリスト共おびき出し、完全に制圧してしまわれた。一度にこれだけの同志を失っては、金鷲党もしばらくは表立った行動は出来ないでしょう。しかも出席者には1人の死者もおらず、要人連に至ってはかすり傷1つ付けられてはいない」
 円華は、だまって景信を見つめている。
「交流を求め、融和を進める理想家。困難に立ち向かい、対処し得る政治家。そして何より、危険を顧みず、常に人々を導き続ける事の出来る指導者。その全ての能力を兼ね備えている事を、貴女様は世界に証明して見せた。これを思惑通りと言わずして、何といいましょう?」
「いえ。思惑通りではありません。……どうしても来て頂きたかったお客様に一人だけ、来て頂けませんでした」
「一人?一体、誰ですかな?それは?」
「……貴方です。叔父様」
 円華の言葉に、凍りつく景信。
「お嬢様、何故それを……」
「先ほど、貴方が自分で言ったではありませんか。『父娘だから』と」
 一瞬、虚を突かれた様な顔をした後、男は嘆息した。
「なずなか……」
「はい」
 どこか嬉しそうに笑う円華。
「やれやれ、バレてしまったのでは仕方がありません。茶番は、ここまでにしましょう」
 男は、晴れ晴れとした顔で肩を竦めると、真剣な顔になって言った。
「一緒に、来て下さいますか」
「はい、もちろん。そのために、私はここにいるのですから」
「もう、戻れないかもしれませんよ」
「えぇ、分かっています。でも、これが私の運命なのです。私は、運命から逃げたくはありません」
 円華は決意に満ちた眼で、はっきりと答えた。
「分かりました。では、お連れ致します」

 男は、部屋を出ると、円華の先に立って歩き出した。
 円華は、何も言わずに男の後に続く。途中一度だけ、廊下の向こうを振り返ったが、その後は、もう二度と振り返ることは無かった。

 こうして『絆』を結ぶ晩餐会は終わりを告げた。
 円華のの一番欲しかった『絆』を結べないまま。

 まほろば船内から突然姿を消した五十鈴宮円華の行方を求めて、すぐに大々的な捜索が行われたが、彼女の行方は遥として知れなかった。
 さらに、金鷲党から五十鈴宮円華の拉致を認める犯行声明が出された事から、事態は大規模な救出作戦の実施へと発展する。
 こうして、後に『金鷲党事件』呼ばれる事になる、一連の事件の幕が上がったのである。

担当マスターより

▼担当マスター

神明寺一総

▼マスターコメント

 皆さん、こん○○わ。神明寺です。神明寺担当シナリオ第2弾、
「【金鷲党事件 一】 〜『絆』を結ぶ晩餐会〜 (第1回/全2回)」
 のリアクションをお届け致します。
 第1回とは比べ物にならない位多くの方々にご参加頂きまして、大変嬉しい悲鳴を上げさせて頂きました(ギャー!)。
 
 今回、『テロ』と『私服警備』というキーワードがあったためか、非常に多くの方々が内部潜入によるテロを警戒されていましたが、一昨年のインドのムンバイにおける同時多発テロなどの例もある通り、武装したテロリストによる外部からの襲撃という例も、実は結構あるのです。
 
 さて、なんだかんだと大変風呂敷を広げまくった(笑)シナリオとなりましたが、皆さんいかがだったでしょうか。掲示板からでも構いませんので、是非、皆さんのご感想をお聞かせ下さい。
 では、第2回のシナリオで、皆さんにお会いできることを楽しみにしております。

平成庚寅 春皐月

神明寺 一総