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五機精の目覚め ――翠蒼の双児――

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五機精の目覚め ――翠蒼の双児――

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終章 ニ


「ほんとは幻覚にかかってなかったんでしょ?」
 メニエスは、目の前の人物に向かって問う。
「おや、気付いていたのですか」
「ミストラルを軽くあしらっておいて、そう易々と幻覚にかかるとでも?」
「買いかぶり過ぎですよ」
 その男は慇懃にメニエスに接していた。
「それで、目的は?」
「少々我々に協力してもらいたいのですよ。勿論、全てが終わったらそれは差し上げますよ。もし宜しければ、主ならばもっと強い『力』も可能かもしれませんがね」
「引き受けるとでも?」
「悪い話ではないと思うのですが?」
 互いに出方を窺いながらだ。
「どうしてもこれが必要なの?」
 ロザリアス、ミストラルで押さえつけているエメラルドを指差す。
「それの能力が必要なのですよ。あれを蘇らせるためには」
 それが何かについては、まだ告げない。
「もし信用できないなら、見てから決めても構いませんよ?」
「大した自信ね」
 実際、目の前の男は本当の強さが分からない。彼より上がいるとなると、敵に本陣に乗り込むのはリスクが大きい。
「力づくでここでそれを奪い取ってもいいのですよ?」
「いいわ。でも、これはあくまで取引よ。これを『貸す』代わりに、そちらの持ってる魔導力連動システムだとかいうものや魔道書の情報をあたしに提供する」
「交渉成立、ですね」
 男――伊東は笑みを浮かべた。
「で、あなたはどうするの、ナガン」
 メニエスが陰から様子を窺っていたナガンに問うた。
「仕方ねぇ。ここはナガンの腕の見せどころだぜ」
 一行は、伊東の後に続いていった。

            * * *

「いいのか、五機精は確保出来なかったんだぜ?」
「うん、これでいいんだよ。ほんとは確保出来れば上出来だったんだけどね。ノルマは達成したよ」
 傀儡師と協力者達は、拠点に向かう最中も話していた。
 情報を引き出そうという魂胆もあるのかもしれない。
「僕は今回、あくまでも囮だよ。前に機晶機械を操ってみせたし、多分PASDとやらも僕は当然得意分野の方へ行くと思っただろうさ」
 さらに続ける。
「本命は、イルミンスールの方へ行ったよ。まあ、彼はこれまでも情報収拾とか頑張ってたし、何よりも人を騙すのがうまい。さすがは策士だよ。まあ、ちょっとトラブルに遭ったみたいだけどね」
 それが何かは、ヒラニプラにいた傀儡師は把握していない。
「さて、アインの確保には成功したし、次は依頼主自ら動くかもね」
 
 突風が吹き抜けた。
「外って、今日はこんなに風が強かったんだね。これじゃ、操糸は難しいな。ほんとに良かった、戦場が遺跡の中で」
 傀儡師の糸がその手元を離れ、片腕しかない袖から風によって流されていった。