天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

五機精の目覚め ――翠蒼の双児――

リアクション公開中!

五機精の目覚め ――翠蒼の双児――

リアクション


第六章


・アイン 一


 PASD本隊は、ついに地下四階の最深部へと辿り着いた。ほぼ同じタイミングで、歩達もまたその空間へと躍り出た。
「あ、あたし達は――」
「何、今ここで合流したんだからいいじゃないか」
 PASD本隊とは別動たったものの、ここで彼女達はリヴァルト達と合流する運びとなる。
 しかし、その背後に伊東の姿がある事は、まだ気付かない。そして彼の希望で、歩も話してはいない。
「すごい……」
 初めに目に入ったのは、大樹であった。
 一本の大樹が、五千年の年月をかけて内部からも遺跡を浸食していたのである。魔力汚染下にあったにも関わらず、なぜ樹は成長出来たのか?
 その答えはすぐに明らかになった。
 大樹の根本で横になっている少年のような容貌の少女がいた。
 白い肌に緑色のショートカット。歳はおそらく十五、といったところだろうか。
「誰だい?」
 その少女が目を開く。瞳の色もまた、翠色であった。
「貴女が五機精の一人ですか?」
 ルイが問う。
「五機精、そう呼ばれてるんだね、ボク達」
 少女が答えた。
「じゃあ、やっぱりそうなんですね」
「エメラルド・アイン。それがボクの名前さ」
 元気盛りな少年のような口調で、エメラルド・アインが答える。
「だけど、急にボクを探しに来るなんてね。どのくらい眠ってたんだろうな」
「五千年ですよ」
「そんなに?」
 エメラルドは驚愕の表情を浮かべる。
「――他のみんな、どうしてるんだろ? ボクがこうしてるって事は、多分死んではいなんだろうけど……ねーちゃんどうしてるかな?」
 遠くを見つめる。
「お姉さん?」
「ボクとそっくりな顔だから、双子だったって言われてる。多分こういう身体になる前だから覚えてないけど。だからねーちゃん、って呼んでる」
 そこまで言うと、寂しげな表情を浮かべた。
「ガーナやアンやクリスと違って、ねーちゃんは引きこもってばかりだったからなぁ。ボクもねーちゃんも、周りに与える影響が大き過ぎるからね。ボクはこういう感じだから、一人でも平気だったけど……ねーちゃんは自分から心を閉ざしちゃったから」
 それでも、彼女はずっと「姉」を慕っていたのだろう。他の五機精も。
「ねーちゃんはボクにだけは心を許してくれたんだ。もしかしたら、目覚めてもボクがいなければ外に出るのは拒むかもしれない」
 切実な思いだった。
「あの……」
 それを聞いて声を掛けたのは、由宇だ。
「よかったらお友達になれませんですか? お姉さんも一緒に」
「いいのかい? ボクみたいなのでも」
 ガーネットとは異なり、兵器として造られた自分にかなりの負い目を感じているようだった。
「無理にとは言いませんです。ただ、貴女の事、いえ、貴女達の事をもっと沢山知りたいと思いましたです」
 自分達と見た目にはそう変わらない、少し話しただけだが、彼女達は兵器として造られただけの、道具ではないと実感した。
「ガーネットさんは、会いたがってたよ。やっぱり昔からの友達の事、気にしてるみたい」
 歩がその事を伝える。
「それから――リヴァルトさん」
 リヴァルトの顔を見遣る。
「この人は、ジェネシス・ワーズワースさん――貴女達の生みの親の子孫なんだって。それと、ジェネシスさんは貴女達を救ってくれとあたし達に伝えてきたの」
 彼女の言葉に、エメラルドが反応した。
「おじさんが……」
「そう。ワーズワースは、自分の孤児院の子供達を兵器とする事に酷い負い目を感じていたんだ。キミ達を造って人として接している時も、それは変わらなかった。だから戦いが起こる前に封印して、いずれ普通の女の子として生活出来るようになる目途が立ったら起こそう、そう考えたんだよ。何百、何千年経っても、ってね」
 司城がワーズワースの声を代弁した。
「司城、先生……?」
 リヴァルトが司城を見遣った。いつも彼以上に飄々としているだけに珍しい。
「まだ完全じゃないかもしれないけど、キミ達が目覚めたって事は、もう自由になれるってことだよ。だから――一緒に行こう」
 優しく語りかける司城。
「それでさ、外で一杯遊ぼうよ! 野球っていう面白い遊びがあるんだ。教えてあげるよ」
 巡がエメラルドに笑顔を向ける。
「ボクなんかで、いいの?」
 再びエメラルドがその場の者達を見遣る。
 言葉はいらない。ただ、その場の者達の優しげな表情が、彼女に対する想いを物語っていた。
「行こう!」
 そっと手を取ろうとした。

「そんな事、させないわ」

 ファイアストーム。突如起こった炎の壁により、両者が遮られる。
 その邪魔をした人物が姿を現した。

「メニエスッ!!」