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なし

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蒼空とプールと夏のお嬢さん。あと、カメ

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蒼空とプールと夏のお嬢さん。あと、カメ
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リアクション

 SCENE 05

 所変わって、ウォータースライダーに視点を移そう。
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は頬が弛みっぱなしだ。
「可愛いでしょ? フードもあるの」
 満面の笑みとともに恋人の鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)に披露するその姿は、なんとペンギンの着ぐるみパジャマだ。先日、ショッピングモールでのペンギン騒動にて着用したものである。(シナリオ『ペンギンパニック@ショッピングモール!』参照)
 だけど真一郎は戸惑ったりしない。
「ルカルカらしくて可愛いよ」
 素直にそう言ってうなずいた。ルカルカが選んだものであれば、どんなものであれ受け入れる度量の広さが彼にはある。
「そう言われると照れちゃうなあ。でもね、これで泳ぐのはさすがに無理だから……」
 ふふっと笑いながら彼女はパジャマを脱ぎ去った。
「ちゃんと下に着てるよ、水着」
 現れたのは、シャープなラインの真紅のビキニ、それも、あれこれきわきわのマイクロ水着だ。よく育ったナイスバディ、ボリュームたっぷりの胸にこの水着は、大変けしからん組み合わせなのである。腰にトロピカル柄のパレオを巻いているが、これとて泳ぐ際には外してしまうことだろう。
「そうか……それは、良いな」
 真一郎は彼女の十歳以上年長だ。セクシーな姿でもそうそうに動揺はしないが、真っ正面から見るのもいささか気恥ずかしいので軽く視線を落とす。ちなみに、黒いTシャツに丈長めのパンツ姿というのが彼の服装だ。
「あれ、動揺した?」
「そういうわけじゃない」
 でも、そんな彼が軽く早口なのがルカルカには嬉しい。
「水着よ水着。平気平気」
 と言って真一郎の手を取り、指と指を絡めるようにして握った。
 さあ、楽しもう。プールのデートを!

 偶然というのはあるもので、ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)黒崎 天音(くろさき・あまね)はばったりと会場で出会っていた。それも、さあ泳ごうとプールサイドに近寄った瞬間に、である。
「天音おにいちゃんです!?」
 ヴァーナーは気恥ずかしそうに両手を組んでもじもじとさせた。その水着はフリルがあしらわれており、上は胸元をカバーするようなキャミソール、下はスカート付きとなっている。青と白のカラーリングも可愛らしい。
「え……ああ、ヴァーナーじゃないか。パラミタイルカを見に行った時以来かな」
 天音の水着はシンプルだ。黒地の上に、白いメーカーロゴが入ったサーフトランクス型である。
「あの……天音おにいちゃんも、招待券もらったんですね。ボク、一人なんですけど……おにいちゃんは?」
「僕は……」
 連れがいる、と言おうとする天音であったが、振り向くとブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)の姿が忽然と消えている。ついさっきまで一緒にいたはずなのに。
「あれ?」
 きょろきょろと見回すと物陰から、鱗に覆われた黒い手がにゅっと伸び、左右に力強く揺れた。まるで「早く行け!」とでも言っているかのようである。
(「天音め、基本的には切れる男のはずだが、ときおり妙に察しの悪いときがあって困る。あの子を誘え、と言っているのがわからんのか。ほら、さっさとしろ! ここは狭いのだ!」)
 彼の体型にはあきらかに小さすぎるゴミ箱に隠れ、ブルーズは歯がみするのである。ここでようやく天音も彼の気遣いを悟ったらしく振り返って、
「うん、僕も一人で来たんだ。ヴァーナーさえよければ、今日も一緒に過ごさないか」
 とヴァーナーに右手を差し出した。
「え! ほんとうですか! おにいちゃんがまたいっしょに遊んでくれるなんて嬉しいです!」
 ヴァーナーは飛びつかんばかりの勢いで、天音の掌を両手で包み込むのである。

 クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)は、深いプールの梯子に手をかける。
「私は先に上がって休息するとしよう。エイミーとパティはどうする?」
 シュミット家は代々軍人の家系である。クレア自身、その運命を疑うことなく受け入れていた。女性でも軍人とあれば、鍛えすぎで脚や二の腕が丸太のように太くなるのは珍しくないものだが、彼女に関してそれは当てはまらない。体のラインがはっきりでる水着ではあるものの、引き締まった体は戦闘者のそれというよりモデルのシェイプに近いのだ。シンプルなワンピースタイプ、流線型した体のラインが艶やかだ。
 本日、第一師団少尉ことクレアは、部下二人の慰労を兼ねてここにやってきた。彼女としてはゆったり骨休みしたいところだが、エイミー・サンダース(えいみー・さんだーす)はそうではないらしい。
「オレはまだまだ遊び足りない! こんなのは肩慣らしだ! 次はあれに行くぜっ!」
 びしっと指さすその先は、例のウォータースライダーなのである。
「うわー、あれですか〜。がんばってくださいね〜。私はもう少し、ここでボ〜〜〜っとしてます」
 ぷかぷか、機晶姫のパティ・パナシェ(ぱてぃ・ぱなしぇ)は仰向けの姿勢で水面にうかびながら、手をグーパーしてエイミーを送るのである。
「なんだって!」
 エイミーが不満げな声を上げると、それをどう聞きちがえたか、ふよふよしたままパティは答えた。
「おや、驚いてますね、機晶姫の私が水に浮いていることに? 細かいことは長くなるので言いませんが、こう見えて私は完全防水、しかも軽量ボディなので沈まないのです。エッヘン☆」
 浮いたまま胸を張るが、エイミーは即座に反撃した。
「完全防水ってたって、今時ケータイでもそれくらいできるだろ? それに、軽量ボディで沈まないならなんで浮き輪持ってるんだ?」
 その通り、パティの胴にはマーブルカラーの浮き輪が装着されているのだ。
「う……それは気にしてはだめなのです。さて、私はの〜んびりモードですが、ウォータースライダーの成功は影ながらお祈りしておりますよ〜」
 しかしそうもいかないようだ。
「何いってんだ、せっかく来たんだ、他所じゃできないことしないでどーすんだよ!」
 言うなりエイミーは、パティを引っ張って水から上げるのだった。
「よーし! じゃ、ウォータースライダーで爆速と行くか! 最高時速102キロ? そんなもの軽く更新してやるぜ!」
「えっ、そんな〜」
「問答無用!」
 ぐいぐい引っ張ってエイミーは恐怖の象徴へと向かう。
「まぁ、たまにははめを外して楽しむのもいいだろう」
 二人を見送りつつ、クレアはビーチパラソル下のチェアに腰を沈め、持参した医学書を開くのであった。