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【怪盗VS探偵】闇夜に輝く紫の蝶

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【怪盗VS探偵】闇夜に輝く紫の蝶

リアクション

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「乙女の心高ぶる時……」
「あ、現われたる正義の女神!」
 月をバックに名乗り口上を上げ始めたのはエミリア・レンコート(えみりあ・れんこーと)稲場 繭(いなば・まゆ)だ。
「マジカルエミリー!」
「み、ミラクルコクーン!」
 2人に気がついた男性が足を止める。
「可愛い女の子に手を出す不届き者は!」
 おへその出る水着にマント、そして仮面を付けているのはエミリア。
「えっと……せいばいしちゃうぞ?」
 胸のところに『いなば』とひらがなで書いてあるスクール水着にマント、仮面を付けているのは繭だ。
 その水着のせいで、繭は顔を真っ赤にし、大変恥ずかしそうにしているが、エミリアはそれも楽しんでいるようだ。
「まずは一発……マジカルサンダー!」
 エミリアは威嚇用に雷術を放ったが、見事に周りを囲んでいた男性陣に当たっている。
「あれ……? 威嚇だったんじゃ……?」
 聞いていた話しと違うので慌てる繭。
「君……可愛いねぇ」
 そう声を掛けてきたのはかなり太ったにやけ顔の男だった。
「み、ミラクルファイアー!」
 繭はあまりの気持ち悪さについ必殺技を繰り出した。
 太った男は良い感じに焼けてしまった。 

 そんな中、人が多く集まっているという理由で広場の中でビラ配りをしているのはフレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛い)だ。
 バイトして溜めたお金でお兄さんを探す為のビラをカラーにしたらしい。
「これって一体なんのイベントなのかしら? とてもまともなイベントには見えないけれど……」
 首を傾げながらも必死にビラを配っていく。
「兄を探してるんです! 宜しくお願いします!」
 しかし、せっかくカラーにしたビラもなかなか貰ってはくれない。
 そもそも来ている人が怪盗、探偵、出会い系男子、警察官という一般人とはちょっと違った人達ばかりだからだろう。
「宜しくお願い――きゃっ」
「せっかく今、怪盗のやわ肌が見えたのに……邪魔するなよ!!」
 出会い系男子に突き飛ばされ、尻もちをつく。
 その瞬間に持っていたビラを落としてしまった。
 すぐに拾おうとしたのだが、青太の生肌を見ようと押し寄せた出会い系男性に

踏まれてしまった。
「カラーにすれば絶対に何かわかると思ったのにぃ………どうして? 私、何か悪い事した?」
 フレデリカは顔に手を当て、泣きだしてしまった。
 その顔は頬が上気し、息が上がってきている。
 ビラを配る前、体調が悪くなり、掴まされた怪しい薬を飲んでしまったからだろうか。
「うふふふふ……」
 突然、泣きやみ怪しげな笑いがこぼれる。
「お兄ちゃんとの絆を裂こうとする空気読めないのは誰かなぁ!? お兄ちゃん、でも大丈夫。そいつ成敗するから。あはははは……」
 その顔は生気がなく、目が据わっている。
「あいつらだよね……うふふふふ!」
 その目に映ったのは、名乗り口上を上げていた繭とエミリアだ。
「あはははは! 邪魔者は排除するからね……兄さん」
 笑いながら爆炎波を放つ。
「きゃっ!」
「何事!?」
 繭とエミリアは何が起きたのかと、辺りを見回しフレデリカと目が合った。
「……逃げるわよ!」
「ええっ!?」
 その形相に驚き、エミリアは繭の手を引いて逃げ出した。
「うふふふ……逃がさないんだから!」
 笑顔で爆炎波をぶっ放しながら追いかけていくフレデリカだった。

「なんか、あれって良いのかな……?」
 傍観していた綺人はびっくりしていた。
「アヤに危害が加わらないなら良いんじゃないですか?」
「そうだな、無理矢理関わる必要もないだろう」
 クリスの言葉にユーリが同意する。
 その側で頷いているのは瀬織だった。

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 本物の愛美がいる木の側には、火焔と橙歌、マリエル、珠樹、ソア、ベア、リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)ロゼ・『薔薇の封印書』断章(ろぜ・ばらのふういんしょだんしょう)セシル・レオ・ソルシオン(せしるれお・そるしおん)、愛美に変装したアスティ・リリト・セレスト(あすてぃ・りりとせれすと)カイルフォール・セレスト(かいるふぉーる・せれすと)セディ・クロス・ユグドラド(せでぃくろす・ゆぐどらど)がいた。
「さっきから見ていると、火焔は何もしていないように見えるのだ」
 火焔はリリの言葉にぎくりとなる。
「そんなことは――」
「ありやがります……ですの」
 否定をしようとしたが、橙歌の言葉で黙らされてしまった。
「でも! 火焔さんの鼻は確かですよ! 必ず役に立つはずです!」
 ソアがフォローをしようとするが、鼻以外は役立たずに聞こえなくもない。
「ロゼからもなんとか――」
「そなたは犯人じゃ!」
 リリはロゼに同意を求めようとしたが、ロゼの方はベアを怪盗扱いしていた。
「違うっ!」
「うごっ!」
 ベアが否定すると同時に、リリはロゼに肘鉄を食らわされた。
「その人は……いや、そのゆる族は犯人ではないのだ」
 リリが言うが、ロゼはもう聞いてはいなかった。
 目を奪われていたもの、それは……青太の生肌だった。
 ちょうどカレンが青太を使って色々とやっていたところだった。
「……ちょっと行ってくるでのじゃ!」
 言うが早いかロゼはカレンと青太が向かっていた先へと走っていってしまった。
 リリは溜息をついた。
「とにかく、愛美を守るのはこっちが先に依頼を受けたのだ! 鼻しか役に立たない素人探偵は引っ込むのだ」
 依頼とはマリエルから連絡を受けてのことを言っているのだろう。
「リリ様、見たところ体力は全くなさそうですが、逃げたらどうやってそのトロイ足で追いかけやがる気で……? 何か秘策でも持っていやがるのかこの野郎……ですの」
「うっ……」
 リリは橙歌の氷の視線と言葉に貫かれ黙ってしまった。
 そこへ火焔が肩をぽんぽんと叩く。
「ここは共闘でどうでしょう? リリくんは頭脳担当……本当はオレがやりたかったですが……で、オレは体力……というか鼻での捜査担当ということで。何より優先すべきは愛美くんの無事ですからな」
「確かに一番大事なのは盗まれない事なのだ」
 2人はがっしりと手を組み不敵に笑い合った。
 そんな事をしている間にロゼが上機嫌で戻ってきた。
 というか、ロゼの前を走って逃げているのは青太だ。
「もそっと寄りゃれ。うい奴じゃの〜。怯えずとも良い、わらわは優しいぞえ」
「やだー! なんか怖いよーー!」
 青太は全力で逃げているのだが、何もないところですっ転んだ。
「それ、捕まえた」
「うわーん!」
 抵抗空しく青太はロゼの魔の手に掴まってしまった。
 捕まえると同時にロゼは小人の小鞄の小人達に寝床を隣に作るように指示している。
「僕別に眠くないよ!」
「ああ、反応が初々しいの〜。わらわはそなたと寝たいのじゃ」
「……」
 貞操の危機に声が出ずにいる青太。
「うちの弟に何してるのかしら」
 ロゼが振りかえるとそこには顔をひきつらせてる蝶子の姿があった。
 トレンチコートを着ているが、真夏にコートは違和感があり過ぎる。
「……さっきから言ってるけど、思い切りが足りないわ! やるなら徹底的に! いじるならトコトン!」
「そうじゃ! やるならトコトンじゃ! では、寝床に――うぐぅっ」
 背後からかかと落としを食らわせたのはリリだった。
「何をするんじゃ!」
「その人こそ犯人なのだ!」
「関係ないのじゃ!」
 ロゼにとってはもう犯人だろうと、そうじゃなかろうと関係がないらしい。
「話しが合う人と出会う確立は非常に少ないのじゃ……その出会いを大切にしなければ――」
 最後までセリフを言わせてもらえるわけもなく、ロゼはリリからの鳩尾パンチをもらっていた。
「怪盗パープル・バタフライですね。愛美くんを盗もうだなんて、させませんよ! この探偵火焔の名に掛けて!」
「はぁ……普通過ぎる口上ね。もっと勉強してこないとつまらないわ」
 蝶子はうんざりした表情をした。
「そ、そんな……」
「確かに平凡すぎる名乗りで面白みも格好よさも表現出来てねぇ……ですの」
 ショックを受けた火焔に橙歌の痛恨の一撃が決まった。

「あれが本物の愛美さんですね……出し抜くなら今です!」
 木にぐるぐる巻きになっている変装している愛美目がけて走りだしたのはルナティエール・玲姫・セレティ(るなてぃえーるれき・せれてぃ)夕月 綾夜(ゆづき・あや)だ。
 ルナティエールが動いたのを確認するとセディは愛美を縛っていたロープを切った。
「セディ兄ーー!? 怪盗側に行ったルナを止める為にここにいるんじゃなかったのかぁーー!」
 セシルの声が響く。
「すまない」
 セディはそう言うと、愛美を抱きかかえてルナティエール達の元へと走り出していた。
「あとは宜しく」
「任せてね」
 セディは愛美を綾夜に渡す。
 綾夜は持っていたセディの槍と交換をした。
「くっそーーーーっ! ルナなんかの尻に敷かれてるんじゃねぇ!!」
 セシルの叫びなど聞こえないと言う様に、セディは耳をふさいだ。
「僕は気が付いてたけどね」
 アスティはさらりと言った。
「気が付いてたら言ってくれよ!」
「だって、そんなことしても非効率で美しくないもの」
 アスティがきっぱりと言い放つとセシルはがくりと肩を落とした。
「気が付いていたのか……」
 ここにも少しショックを受けた者がいた、カイルフォールだ。
「愛美さんは双子の怪盗『雪月蝶』が頂いていきます!」
 3人のやりとりの途中でルナティエールは雷術をぶっ放し、ついでに煙幕弾も叩きつけて逃げてしまった。
「うああーーーーーーっ!!!」
 セシルの苦悩の声が響いたのだった。
「あなたが愛美さんね! って、もう1人?」
 探偵とのやりとりで出遅れた蝶子はアスティと近くに居た美羽を鞭で引き寄せると青太と円と共に走り出していたのだった。
「アスティ!?」
 煙幕のせいで追いかける事が出来ないカイルフォールはしばらく呆然としてしまっていた。

「愛美、どこか怪我はない?」
 こちら、先に走り出していた綾夜。
 セディから愛美を受け取ると、お姫様抱っこをしていた。
「……」
「愛美?」
 反応がないのが気になり、愛美の顔を覗き込む。
「運命の人なんだわ!」
 すると突然、元気よく運命の人発言をかました。
「うん、そうだったら嬉しいね」
「マナミンは我が守りますわーー!」
 なんとくっついてきていた人が1人。
 珠樹だ。
「やっと発見!」
 なんと、まだくっついてきている人が2人もいた。
 郁乃と千種だ。
 どうやら今まで、出てきてしまった警察の気を反らす事をやっていたようだ。
 バーストダッシュで一気に間合いを詰めると、綾夜から奪う事に成功してしまった。
「ああ、運命の人がぁぁ!」
 愛美の言葉に少し驚いていたが、郁乃は愛美を担ぎあげたまま遠ざかってしまった。
「そうはさせませんわーーー!」
「マナを放してー!」
 執念か、千種にくっつき珠樹とマリエルはそのまま一緒に行ってしまった。
「追いかけないと……っと」
 綾夜は直ぐに追いかけようとしたのだが、バナナの皮と氷術によって凍らされた地面に行く手を阻まれてしまったのだった。