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【2020年七夕】Precious Life

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【2020年七夕】Precious Life

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●第十ニ章 真夜中の露天風呂

「ふふふ……ここが俺の戦場!」
 露天風呂に国頭 武尊(くにがみ・たける)はやって来た。
 目的は、のぞき。
 しかし、国頭が入っていったのは混浴の方であった。
 先ほど女性専用から混浴になったのだが、札をかけ忘れたスタッフのせいで国頭は気が付かなかったのである。
 国頭は風呂場を覗いた。さすがに12時を過ぎると誰もいない。
 もっと早い時間に来るつもりだったのだが、疲れて寝てしまったのだった。

 だが、残り物には福がある!

 国頭はそれを信じた。
 ダンボールを持ち込むと、国頭はそれをガムテープで繋げた。そして、それを被り、棚の上を見る。
(くっくっく……俺の、のぞきスポットォ!)
 さて、のぞきの準備をと棚に乗ろうとした瞬間、誰かが入ってきた。
(チッ、邪魔が!)
 国頭は光学迷彩で姿を隠す。
 だが、入ってきたのは坂上樹だった。
「あれ、何でダンボール?」
「気にするでない、少年よ!」
 そう言ったのは、のぞき小人・七人衆だった。
 ゾロゾロと入ってくる。
「このような時間のこそ、最高のものが見れる! おりしも今日は七夕! カップルは夜に活動中じゃっ♪」
「まあな〜。ヤるの、夜だし」
「いい汗かいた恋人同士が分かれて風呂場に! 色っぽいおねーさんをチェケナっ★」
「じーさん、古いね。今時の深夜番組でもいわねーよ」
「それはともかく。このダンボールを使おうぞ」
「ばっかやろう! それは俺のだ!!」
「わあああああ!」
 樹と爺さんは飛び上がった。
 振り返れば、そこには銃を構えた国頭がいる。
「し、師匠〜〜〜〜〜!」
「何してるんだよ」
「師匠もっすか?」
「何がだよ」
「のぞきっしょ?」
「そうだ。それ以外に何があるんだよ」
「ですよね〜」
 国頭は坂上樹の心の師匠。樹は運命を感じた。
「撮影戦隊†冥倶楽部 隊員、坂上樹でありまっす! 師匠とご一緒させてください!!」
「なんだ、それ」
「あ、俺たちのことッス」
「そうか。じゃあ、俺はこれに入ってのぞくわ。お前はどうするんだ?」
「良い場所無いなあ」
「しかたねーな。俺ンとこに入れよ」
「ありがとうございまーーーっすv」
「わしらはどうするんじゃ!」
 爺さんズは言った。
「知るか、ボケ!」
 国頭は言い返す。
「ロッカーに湿気抜きの穴が開いてるだろうが」
「おお、そうじゃのう」
「それぐらい自分で気付けよ」
「さて、準備するぞ」
「はーい♪」
 二人でダンボールに入って脱衣所を観察することにした。
 のぞき小人七人衆はダンボールに入れてもらえず、ロッカーそのものの中に隠れる。

 ガラッ!

 引き戸を開ける音がした。

 どきどきどきどき♪

 そして、誰かが入ってくる。

 どきどきどきどき♪

 小柄な人影が見える。

 どきどきどきどき♪

「やっぱり誰もいないなあ」
 入ってきたのはコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)

 男はいらんのじゃあ。ヴォケがああああああ!!!!!

 心の中でブーイングを飛ばす、国頭、坂上、爺七人衆であった。
 そんなことにも気が付かず、コハクは脱ぎ始めた。
 ロッカーに着替えを放り込むと、風呂場に向かう。
(男はみんな、氏ね!)
 見たくないものを見て、国頭たちは心の中で毒づいた。

 そして、しばらくして……神はこの者たちに祝福を与えたもうた。ように見えた。

 ガラッ!

 引き戸を開ける音がした。

 どきどきどきどき♪

 そして、誰かが入ってくる。

 どきどきどきどき♪

 小柄な人影が見える。

 どきどきどきどき♪

「わーい、美羽ラッキー☆ 貸しきり状態だよーん♪」

 女・の・子っ! きゃほーーーーーい☆

 国頭たちは快哉を上げた。
 ありがとう神様。信じてないけど。
 どうせ日本人だし。
 神仏混合のお国柄。クリスマスも正月も祝っちゃうよ☆
 夜中に暑さで目が覚めた美羽は露天風呂を満喫しにきたのだった。
「暑ぅ〜〜い」
 そう言いながら、美羽はバスタオルをロッカーに突っ込む。
 期待が高まる中、ブラウスを脱いでいく美羽。

 もうちょっと。もうちょっとオ〜〜〜〜♪

「へっへー♪ 恥ずかしいから水着だもんねー♪」

 ぬわんじゃ、こりゃーーーーーーー!!!!!

 裸体は拝めず、国頭たちは心で叫ぶ。
 そんなことに気が付かず、美羽は風呂に入っていく。
 国頭たちは寂しく脱衣所に残された。


 露天風呂は色々なものがあり、複雑になっていて、死角になる場所が結構ある。
 その一つにコハクがいた。
 むろん、美羽と同じお風呂にいることは気が付いていなかった。そこは美羽からは見えない。
 鼻歌でも歌いながら近付く気配。
 コハクは聞こえてきた歌声に反応した。

(み、美羽っ? ウソっ!?)

 湯煙の向こうに見えたのは、間違いなく美羽だ。
 水着を着てはいるが、そんなのは関係ない。
 なにせ、自分は着ていないのだから。
 そして、何も知らない美羽はこっちに歩いてくる。

(だ、ダメだ! こっちは……)
 そんな思いは無情にも届かない。
 美羽はコハクの方に歩いてきていた。
 コハクは小さくなって隠れた。それはほとんど無駄でしかなかった。
「あ、先客いたんだ〜。誰かなぁ。クロスさん? ……って、コハクーーーーーーーーーーー!」
「あ、ごめっ」
「ちょ、ちょっとォ! まさか、コハクがのぞきっ」
「ご、誤解……あっ!」

 ガラッ……

 どっぽーーーーーーーん!!!

 派手な水音に二人は飛び上がった。
「ひ、人が来たっ!」
「やだっ!」
 美羽は小さい声で言った。
 二人は仕方なく、その場に座り込む。
 互いの姿が見えないように、二人は背を向けた。