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【DD】『死にゆくものの眼差し』

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【DD】『死にゆくものの眼差し』

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第二〇章 夢の終わりの後始末

「おいっ! しっかりしろっ!」
「ねぇ、どうしたの、朔ちゃん!? 美央も、ちょっと!」
「こらっ! どうした!? 悪夢の世界は終わったんだぞ!?」
 「死にゆくものの眼差し」の前では、騒ぎが起きていた。
 夢から戻ってきた者の内、数人が虚ろな眼をして、外界からの刺激にもほとんど反応を示さず、かぼそい声で「もうどうでもいい」「死にたい」などとブツブツ呟くようになっていたのだ。
 その者達は、藤原 優梨子、朱宮 満夜、ミハエル・ローゼンブルグ、鬼崎 朔、赤羽 美央、アイン・ディアフレッド、ジークフリート・ベルンハルト。
 共通点は、夢の中で「吸精幻夜」を使った事である。
 各自の顔見知りや手空きの人間が総出でそれぞれにつき、声をかけたり頬を張ったりしている。が、反応は鈍い。「アリスキッス」程度ではどうにもならないようだった。
「……こりゃあまた救急車呼ぶか?」
 峯景がそう考えていると、陽太が「すみません」と声をかけてきた。
「調整をお願いしたいのですが、よろしいですか?」
「どんな事を?」
「まず、この周りをもっと片付けて、多くの人が入れるようにしたいんですが」
「……それで?」
「あと、美術館側に連絡して、これから何十人か来館者が来るかも、という事で」
「ちょっと待った。何をした?」
「彼ら二次被害者の助けを呼びました。現在、彼らの身内知り合いが全速力で空京美術館に向かって来ている筈です。彼らは絶望に満ちた悪夢の世界を、言わば食べたわけですから、彼ら自身が身も世もない絶望に囚われているはずです。それを救うのは、彼らを慕う人々しかいないでしょう」
「どうやって連絡をつけた? 君が携帯電話とかをいじったようには見えなかったが?」
「携帯電話のサービスで、電話帳やスケジュールなどのデータを電話会社のサーバーでバックアップするサービスがあります。
 さっき、電話会社に連絡して、鬼崎さん達被害者の分の電話帳データを確認して、そこにある連絡先全てに、『命が危ないから今すぐ空京美術館に助けに来い』というメールを送信するよう依頼を出しました」
「……」
「どうしました?」
「その力業をやってのけられるのは、御神楽環菜の御威光かね?」
「人の命と魂とがかかっています。使えるものは何でも使いますよ――環菜校長も、きっとそうするはずです」
 ――数十分もしないうちに、空京美術館の周囲には何十もの人が集まっていた。
 「吸精幻夜」を使い、画家の絶望を直接取り込んだ者達は、彼らを慕う者達の尽力により再び生きる気力を取り戻した。
 が、この時の事をネタにして、しばらくからかわれる事になる。