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天御柱開放祭

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天御柱開放祭

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03:演習其ノ壱 開戦
(それでは、演習を開始する)
 コリマ校長のテレパシーで開始が宣言される。
「こちら【ルーラーヘッド】。【ルーラー中隊】準備よろし?」
 オリガが尋ねる。
「こちら【チャーリー1】。【チャーリー小隊】準備よろし」
 孝明が答える。
「こちら【アルファ1】。【アルファ小隊】準備よろし」
 リオが答える。
「こちら【エコー1】。【エコー小隊】準備よろし」
 天御柱の生徒が答える。
「こちら【デルタ1】。【デルタ小隊】準備よろし」
 綾が答える。
「こちら【ブラボー1】。【ブラボー小隊】準備よろし」
 春人が答える。
「よろしい。では【チャーリー中隊】戦闘開始。教官たちに目にもの見せて差し上げましょう」
 オリガはコクピット内で微笑んでバーナーに点火した。
「【フリーダムヘッド】より【ルーラーヘッド】へ。【フリーダム中隊】も準備は整っています。【ルーラー中隊】は右、【フリーダム中隊】は左の教官を相手にしましょう。
 杏がそう通信を入れてくる。
「こちら【ルーラーヘッド】了解。聞こえましたわねみなさん。【ルーラー中隊】は右翼の教官を相手にします」
『了解!』
「アルファ1から各機へ。作戦通りに仕掛けるよ!」
 リオがそう呼びかけると各機は了解と答える。
「こちら【ホークアイ】敵機接近中。射程範囲突入まであと僅かです。【ブラボー】、【エコー】各少隊は弾幕の準備を」
「【ブラボー1】、了解。ブラボー各機は発射体制に入れ」
「【エコー1】了解」
 奏音の呼びかけに晴人と学院の生徒が応答する。
「晴人君、イコンでの白兵戦は殆どが空中戦だ。空中って事は360度何処へでも動く事が出来るって意味だね。だから、射撃手に求められるのは精密さでも視力でもなく、視界の広さと行動予測。つまり射手としての感性だと言う点だ。常に敵機と味方機が次どう動くか、を考えてトリガーを引くんだ。トリガーを引いて半秒、着弾まで更に半秒、この1秒で戦況は全く変わる」
「了解です御空先輩!」
 一学年先輩としての御空のアドバイスを晴人は素直に聞くと、「射撃よーい!」と無線で叫んだ。
「【アルファ】【チャーリー】【デルタ】の各隊へ、こちら【ブラボー2】、3カウント後に該当ポイントへ集中砲火を仕掛けます、射線上の各機は速やかに散開して下さい」
『了解』
 各小隊は速やかに散開し、射線を開ける。
 接近する教官機にブラボーとエコーの両小隊が中心部に向けてキャノンを放つ。
 だがそれは教官機が散開することによって回避される。
 しかし、これで目標の第一段階は達成だ。
「こちら【ルーラーヘッド】。【アルファ小隊】は予定通りに行動してください」
「了解」
 オリガの呼びかけにリオが答える。
 そして各機は作戦通りに動き出す。
「こちら【セレナイト】。予定通り行きます」
 秋穂がそう告げるとユメミが精神感応で
(操作ミス装い、了解ー)
 と答える。
 【セレナイト】はわざとバランスを崩し小隊から離脱する。
 まだ教官機の射程圏内ではないので教官機のシュメッターリング3機が秋穂の【セレナイト】に向かって飛んでくる。そして頭部バルカンの射程圏内に入ったので3機のバルカンが【セレナイト】に集中するが破損判定は受けない。
(セレナイト胴部被弾ーけど損害はなしー)
 しかし着弾の衝撃で【セレナイト】は大きくバランスを崩す。
(うわわわわ)
(落ち着いて、ユメミ)
(了解ー)
「こちら【コキュートス】わざわざイーグリットの射程圏内に入ってきたものを、見過ごすのはもったいないのではないでしょうか?」
 機体の色をアイスブルーに塗装し氷の翼のエンブレムを描いたシフの【コキュートス】がライフルを構える。
「食いついた!? 【セレナイト】はそのまま誘い込んで! 残りはカバーに回って! フェル、ライフルの射撃を!」
(了解)
 リオの言葉にフェルクレールトが答える。
「こちら【アイビス】。【コキュートス】に同意。弾幕を張る!」
 智宏は模擬刀をしまいライフルを両手で持って安定させると、シュメッターリングに向かってライフルを発射した。
 三つのライフルから発射されたペイント弾は、しかし教官の操るシュメッターリングに軽く回避される。
(これが練度の差なの?)
 凜が精神感応で囁やく。
(焦るな。まだチャンスはある)
 三機のイーグリットはライフルを連射するが、やがてシュメッターリングは射程から離れていって隊列を組み直した。
「こちら【セレナイト】。隊列に復帰する」
「こちら【シュヴァルべ】。了解」
 こうしてセレナイトが戦線に復帰する頃、【デルタ小隊】は未だシュメッターリングと離れていたシュヴァルツ・フリーゲを攻撃しようとしていた。
「こちら【ホワイト・ライトニング】。デルタ各機はロッテでシュヴァルツ・フリーゲに圧力をかけてください」
 【デルタ小隊】は2機ずつに分かれるとブースターに点火して一気にシュヴァルツ・フリーゲに近づいた。
 当然シュヴァル・フリーゲはマシンガンで反撃をしてくる。
 それは側面から近づいていた佐那の【クレーツェト】の右足に命中する。
 右足に破損判定が出て右足が使えなくなった。
「なに、足など空中戦ではただの飾りだよ。陸戦では重要だろうがな」
 義輝がそう言ってそのままイーグリットを接近させる。そしてライフルの射程に捉えたところで停止すると
「佐那、今だ!」
 佐那にライフルの発射を促した。
 佐那はライフルを発射するが教官はそれを避けてしまう。しかし反撃しようとする教官の行動は【クレーツェト】の背後に控えていた双子の牽制射撃で未発に終わる。
(そこよ、彩華!)
(わかったよ〜、彩羽〜、えぃ!)
 双子の機体【イロドリ】は虹色グラデーションの鳥の卵のエンブレムを書いている。
「こちら【イロドリ】。【クレーツェト】は今のうちに退避を」
「は、はい!」
 そして【クレーツェト】が退避をすると今度は【イロドリ】が前に出てライフルを発射する。
 しかしそれも教官機に紙一重で避けられ、二人は悔しい思いをする。
 と、そこに【ホワイト・ライトニング】と雪香の【フレイヤ】の2機が攻撃を仕掛ける。
 しかし2機がかりでも教官はその射線を見ぬいてペイント弾をかわしてしまう。
「こちら【ルーラーヘッド】。【アルファ】【デルタ】各小隊へ。敵は戦列を組み直しつつあり。貴下も隊列を整えて戦線に復帰すべし」
 オリガの指示を受けて【アルファ】と【デルタ】小隊は後退し戦線に復帰する。
「いえーい。支援は忘れないよ」
 景勝がそう叫びながら【ブラボー小隊】の面々と共に後退を支援する。
 その砲撃は教官たちの周囲を囲んだため、教官たちの合流は早くなったが反撃を受けることはなかった。
「【クサナギ】より【ムラクモ】へ。【チャーリー小隊】による牽制を頼むぜ」
「こちら【チャーリー1】。了解」
 小隊内でのみ呼び合うTACネームと部隊間や管制で使用するコールサインの間違いを榊は指摘しないままに訂正すると、部隊へ指示を出した。
「こちら【ムラクモ】チャーリー各機はライフルを三連斉射、当たらなくてもいい。牽制だ」
「こちら【イルマ】……ってこのTACネームはずかしいな。ともかく了解」
 昇が照れながら返答する。
 そしてライフルを三連射すると即座に後退する。教官機は再び散開しその攻撃を避ける。
 何も無い空間をペイント弾がむなしく通りすぎていった。
「【ルーラーヘッド】より【フリーダムヘッド】へ。敵の随伴飛行歩兵は現在どの位置か?」
「こちら【フリーダムヘッド】随伴飛行歩兵は教官機の後方。接敵まで1分前後と予想」
 オリガの質問に杏が肉眼で確認した範囲で答える。何しろ随伴飛行歩兵はレーダーに映らないので伏兵として非常に恐ろしいのだ。
「【フリーダムヘッド】よりフリーダム各小隊へ。左翼の教官機とは20秒後に接触と予測。警戒されたし」
 杏はレーダーで敵味方の位置を味方に通信で流している和眞とともに高高度から戦況全体を把握する。
「こちら【パンプキンヘッド】。了解よぉ……」
 茉莉は蠱惑的な笑みを浮かべると艶っぽい声でそう言った。
「こちら【パンプキン2】。教官殿、せっかく苦労して持ち帰った機体なんだから壊さないでくださいよぉ」
 秀臣が教官に通信を入れて挑発する。
「こちら【パンプキンヘッド】教官、タイマンを受け入れてくれないかしら?」
 茉莉の言葉に教官が答える。
「なんだ、ずいぶんと余裕だな」
「ええ、なんてったって【ハロウィン小隊】ですもの。トリック・オア・トリート。どうします?」
「ならトリートだ。いたずらっ子にはプレゼントをやろう」
 教官機がそう言って握っていた手のひらを開くと、そこからヴァルキリーと機晶姫が飛び立った。
 突出していた【ハロウィン小隊】の面々は目の前に伏兵というプレゼントを貰った。
 そして機晶ランチャーが発射される。
『【パンプキン1】、【パンプキン3】、センサー部に命中。以後センサーの使用を禁止する』
 判定役の教官の音声が無線に響き渡る。ナギサと佑一はセンサーのスイッチを切ると以後レーダーのみの戦いへと相成った。
「【フリーダムヘッド】より【ハロウィン小隊】へ。バルカンのチャンスです。それで目の前の飛行歩兵は全滅します」
「こちら【パンプキン4】了解!」
 そして【ハロウィン小隊】のイーグリット達は頭部バルカンを発射すると機晶姫とヴァルキリーを掃討した。
 1秒間に60発。それを移動しながら5秒発射した。それだけでトリートされた随伴飛行歩兵は全滅した。
「こちら【バンシー】。タイマンは怖いのでやっぱり逃げます〜」
 やませはそう言って逃げに入った。
「こちら【キャスパー】。こわいこわい〜」
「こら、逃げるな!」
 教官から通信が入るが、佑一は「キャスパーですから〜」といって逃げまわる。
 しかし教官たちはあえて深追いしようとせず、【ハロウィン小隊】の目論見には乗らなかった。
「なんで付いてこないんだよ」
 茉莉が愚痴ると、教官は
「そんな見え見えの撤退ににのるやつはいないぞ」
 と注意した。
「チッ……」
 茉莉は舌打ちすると海面すれすれを高速飛行し衝撃波で大波を起こして閲覧席を水浸しにする。
「それがトリックか【パンプキンヘッド】。あとでお前ら全員腕立て伏せ1000回だ」
「上等。こうなりゃ真正面からぶつかるまでよ! いくわよ、レオナルド!」
「了解。5秒後にバルカンの射程に入る。3秒後にはマシンガンの射程に入るがなんとかかわせ。センサーを攻撃すればセンサーに破損判定が出るだろうよ」
 そう言っている間にもマシンガンの射撃が襲ってくる。ビームサーベルを持っている腕がやられた。他の連中も似たようなものだった。
 だが、そのおかげで貴重な時間が稼げた。
 レオナルドがその天才で見抜いたとおり頭部センサーにバルカンで攻撃すると、教官たちのイコンはセンサーに破損判定を受けた。
「流石に教官達の動きは全然違うな、鏖殺寺院の奴らよりも上手いか? まぁ、教官達との違いはイコン操縦経験くらいなもんだ、実戦が増えるだろう今度、生き抜いていきゃ直ぐに追い抜けるわな」
 白虎はそう言ってやませに離脱を指示する。
「こちら【ガンナー1】。【ハロウィン小隊】の離脱を支援する」
 コームラントの支援砲撃を受けて【ハロウィン小隊】の面々は戦線を離脱する。
「【アーチャー小隊】も砲撃開始。教官たちに攻撃させる暇を与えないでください」
 媛花が小隊を率いて砲撃を行う。
 さすがに2小隊のコームラントの砲撃には教官たちも高機動で逃げまわるしかなかった。
「こちら【スプリング】。【コンフュ小隊】は突っ込め!」
 直哉は【コンフュ小隊】を率いて教官たちが混乱している隙を突いた。
 【スプリング】のライフルはシュヴァルツ・フリーゲのマシンガンに命中し破損判定を与える。
 小隊員も視界を奪われ、レーダーに依存して行動するしかなくなった教官たちの足を奪うなどして戦果を上げると一撃離脱で引き上げてきた。
 コームラントの支援を受けるのも忘れない。
 そして30秒後――
「こちら【フリーダムヘッド】。随伴飛行歩兵とエンゲージする。各機注意してください」
 レーダーに映らず小回りがきくゆえに伏兵として恐ろしい随伴飛行歩兵と接敵してしまったのである。
 そして、そんな緊張の一瞬を下で祭りの見物客達は楽しんでいた。