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08:演習 ―苦戦―
「こちら【カムパネルラ】! 随伴飛行歩兵が手強いです!! これ、レーダーに移りません!!!」
 オルフェリアが叫ぶ。
「【ルーラーヘッド】より【フリーダムヘッド】へ。随伴飛行歩兵の位置情報を求めますわ!」
「こちら【フリーダムヘッド】観測すれども随伴飛行歩兵は様々な場所に居り逐一の報告は不可能です」
 オリガと杏のやりとりに、やませが割り込む。
「こちら【パンプキン4】。敵随伴飛行歩兵は敵機に取り付き目の代わりをしています。せっかくセンサーを潰したのに、こっちの攻撃が回避されてます!」
「こちら【フリーダムヘッド】。随伴飛行歩兵は目視で対処してください」
「【ルーラーヘッド】了解。【ルーラー中隊】各機へ。随伴飛行歩兵にやられないように注意してくださいませ。各自目視で確認。バルカンの射撃で敵は落ちます。素早い対応を!」
「こちら【エコー2】。味方機との間に随伴飛行歩兵が! 【ブラボー2】、機晶ランチャーを打たれるぞ。」
「こちら【ブラボー2】りょうか……うわ!」
 景勝の乗る【ブラボー2】こと【クサナギ】は腕関節部分に機晶ランチャーの攻撃を受けて関節に破損判定を受けた。
「こちら【クサナギ】腕関節が破損した。正確な狙いがつけれねー」
「随伴飛行歩兵か……やっかいだぜ。こちら【クラッシャー】後退して隊列を組み直す。随伴飛行歩兵の速度なら付いてこれないはずだ」
「【ホークアイ】了解……御空、<殺気看破>を使用してください」
 奏音が要請すると御空は<殺気看破>を発動する。
「近くにある敵意2。急いで逃げよう」
 御空はそういうと方向転換をしてバーニアを吹かす。近づいていた随伴飛行歩兵は噴射炎に巻き込まれまいと慌てて身をかわし、その隙に距離が取られていく。
 他の部隊も真似したため随伴飛行歩兵の脅威は去ろうとしていた。だが……
「こちら【フリーダムヘッド】! 教官機は掌に随伴飛行歩兵を入れました。繰り返します。随伴飛行歩兵を掌に入れました」
「ちくしょう。こちら【エコー1】イーグリットによるコームラントの撤退支援を要請する」
「こちら【チャーリー1】了解」
 孝明が部隊としての意思決定をする。
「こちら【ムラクモ】イーグリットで敵の足止めだ。当たらなくてもいい。とにかくライフルを打て」
 射程距離外からの威嚇射撃。それでも効果はあったようで教官機の足が止まる。
「こちら【ムラクモ】要件は達成した。こちらも撤退する」
 撤退するイーグリット達。そして隊列が整えられ、仕切りなおしとなった。
「こちら【デルタ1】の水城。次の攻撃で指揮官機を落としたい。いけますか?」
「こちら【ルーラーヘッド】。まずは随伴飛行歩兵の殲滅が肝要と思われますわ。本来の作戦に入るのはそれからでいいでしょう」
「【デルタ1】了解」
 やがて教官機がこちらのキャノンの射程に入ってくる。
「コームラント各機、一斉射撃!」
 オリガの指示と
「コームラント、キャノン斉射!」
 杏の指示が重なる。
 8機ずつのコームラントによる一斉射撃。
 だが教官機はそれを散開して回避すると即座に隊列を整えて再突入してくる。
「さすが、教官……かな」
 和眞が感心する。上空から動きを見ながらでも冷や汗をかいている。
 そしてマシンガンの射程になると一斉に攻撃をしてくる。
「こちら【パンプキン3】。撃墜」
 佑一がもともとセンサーを潰されていたこともあって撃墜判定を受ける。
「ちっ、【キャスパー】仇はとるよ」
 茉莉が舌打ちする。
「回避先を予測して射撃している!?」
 雪香は避ける方向に打ち込まれる射撃を必死に避けながら驚愕していた。
「どうなっているの!!」
「種明かしをしておこうか【フレイヤ】。現状の軌道から数秒先の軌道を割り出してるんだ。もちろん直感と計算でな。先読みをしろ、そして先読みをされないように動け。隊列を崩さない程度でランダムに動き回れ。それが生き残るコツだ」
「了解であります。教官殿!」
 教官機の掌から随伴飛行歩兵が放たれると、今度は生徒たちも慌てずに対処できた。敵の射程に入られる前にこちらからバルカンの射程に入りバルカンを斉射する。
 それで随伴飛行歩兵は大半が撃墜扱いを受ける。
「教官殿、先読みをすると言っても、どうすればいいのですか?」
 直哉が尋ねる。
「まず現在どの方向に動いているかそれが判断材料だ。そして敵機の可動範囲それが第二の判断材料だ。いくらアクロバティックな飛行ができると言っても限界がある。そして第三に敵のフレームの微妙な移動。それは筋肉の動きを見て先読みを行うのにも似ている。武道の達人になれとは言わんがこれくらいはできるようになっておけ。技量の問題にもなるから今すぐできるようになれとは言わん。だが、頭の隅に入れておけ」
「はい。ありがとうございます」
 そんな会話をしていると隊列を離れて単騎で突撃してくるイーグリットがあった。それはイレイン・ハーストの機体だった。
「イーグリットの動きを確かめます」
 薄茶色の髪をオールバックにした、緑色の瞳を持つ精悍で強そうな少女近衛 涼子(このえ・りょうこ)が宣言する。
 イレインは武器をしまうと教官機をイーグリットで殴りつけた。
「バカモン! 何をやっている!」
「イコンが殴れるか試してみたのです」
「馬鹿が! マニュピレーターを見てみろ!」
 教官に言われてマニュピレーターを見ると見事なまでに潰れていた。
「あとで整備に謝っておけよ。それから、演習終了後に腕立て1000回だ」
「はい……」
「イコンは格闘できるようにはできておらん。それから、チェックメイトだ」
 教官4機からそれぞれマシンガンが放たれる。
 それはコクピットブロックに命中し……
「イレイン・ハースト撃墜!」
 撃墜判定が出る。
「そんな、もっと試したいことがあったのに……」
「どんなことだ?」
 教官が尋ねる。
「アクロバティックな機動を試したかったのですが……」
「そんなもんは曲技飛行隊にでも任せておけ。とにかく撃墜だ。イコン格納庫に戻れ」
「……了解です」
 イレインは悔しそうにつぶやくと格納庫へと戻っていった。
「イコンが何機かもどってくるわね。撃墜された機体かしら? やはり格納庫へ行ってみるべきね……」
 メニエスはそういうと格納庫へと向かった。