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リアクション
「この大きな赤ピーマン……良い感じの隠し味になるかも! それと……シャンバラ地鶏をメインにして……うん! 美味しいカレースープが出来そう!」
ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)は必要な食材を取ると調理を始めた。
調味料の棚から持ってきた香辛料を調合していく。
クミン、カルダモン、ナツメグ、コリアンダー、タイム……その他諸々のスパイスを独自の配合で調合していく。
「カレーはターメリックが必須だよね!」
最後にターメリックを入れ、ルーが完成した。
これだけで、すでに周りにはカレーの良い匂いが漂う。
「シャンバラ地鶏から鶏ガラスープを取りたかったけど、さすがに時間がないからコンソメで代用っと」
残念そうにしながら固形のコンソメを用意する。
タマネギがしんなりするまで鍋で炒めて、鶏や他の材料も入れていき、水を投入して煮込んでいく。
もちろん、隠し味にと取ってきた大きな赤ピーマン(?)も入れている。
ニンニクや月桂樹の葉、生姜、コンソメも加えた。
最後に調合したルーを入れ、かき混ぜていくとカレーの香りが屋敷中に広がった。
「良い匂いだな。さすがカレー屋をやっているだけある」
「ありがとう! 食べるの楽しみにしててね!」
大佐はネージュを褒めるとカメラで鍋をかきまぜている所を撮影したのだった。
鍋の中でカレースープを掬い、落すとさらさらとしたスープであることがよくわかる。
最後に醤油をひと垂らしとシナモンを入れて完成となった。
「うん! 会心の出来だよね! これなら、新しくメニューに加えても大丈夫そう!」
ネージュは満足そうに鍋を見つめた。
大きな赤ピーマンがこのあと、自分の首を絞めるとも知らずに……。
「えーと……なになに……フライパンに米と出汁スープ……魚介類と踊るきのこ、野菜……っと」
レシピ本片手に料理をしているのは芦原 郁乃(あはら・いくの)。
その横では、そわそわはらはらしながら荀 灌(じゅん・かん)が見ている。
灌は何やら、ずっと自分のポケットを気にしている様子で、ポケットを触っては郁乃を見つめていた。
お米を灌が研ぎ、海老やホタテの下処理を郁乃が担当している。
灌がお米を研ぎ終わると、郁乃が今度は野菜を切るように指示を出していた。
使う野菜はアスパラ、タマネギ、ピーマン、パプリカ、トマトだ。
魚介類の下処理が終わると郁乃は踊るシイタケの石づきを落とし、手で割いた。
材料の下準備が全て終わると、両側に取っ手のあるフライパン……要するにパエリア鍋にオリーブ油を入れ野菜や魚介類を入れ、郁乃が炒めていく。
炒め終わると、米、塩、出汁スープ、サフランを加え、10分ほど煮込む。
「うんうん! このレシピ本通りに作っているんだから失敗なんかしない……はず!」
「そう……ですよね」
10分経つと今度はオーブンで10分加熱をする。
「なんか……本の写真と違って青紫になってた気がするけど……気のせいだよね!」
「えっと……」
郁乃は鍋をオーブンに入れてから、そう言い聞かせているが、灌はなんとも複雑そうな顔をして、言葉に詰まってしまっている。
10分するとオーブンから取り出し、最後にとろけるチーズを上に載せ、パエリア……そう、たぶんパエリアが完成した。
何故か青紫から赤茶色へと変色してしまっている。
「で、できたぁ〜!」
完全にレシピ本の写真と違ってしまっているものが出来た。
レシピ通りに作っていたはずなのに……。
「あのぉ……これ貼るように伝えるよう託けられたのですが……」
そう言って、灌はおずおずとポケットに入っていたものを差し出した。
ポケットの中から出てきたのは……バイオハザード、放射線の危険マーク、ドクロや「!」の危険マーク、不良品、危険物、取り扱い注意……そんな危険・注意を喚起するシールの数々。
郁乃が料理をしにいくとクラスメートが聞いて、灌にわざわざ持たせたのだ。
「デンジャラスなものを作っているのは……って準備が良いじゃないか。ちゃんと貼っておけよ」
大佐は落ち込んでいる郁乃とおどおどしている灌の2人を写真に撮ると、他の場所へと移動していった。
大佐の言葉を聞き、さらに落ち込む郁乃。
「あの……」
「気にしなくていいよ。悪いのはわたしの料理の腕だから」
そう言うと、郁乃は苦笑交じりに自分が今作った料理にクラスメートからのプレゼントを貼っていくのだった。
火村 加夜(ひむら・かや)はにこにこと笑顔だ。
笑顔になれるような料理を作るのなら、まず作っている自分が笑顔じゃないと、ということらしい。
「最初は茶わん蒸しですね!」
腕まくりをして、エプロンを装着。
髪の毛を後ろで一本に縛り、手をしっかり洗うと料理を作りだした。
初めに蒸し器の準備をしておく。
次に踊るシイタケと地鶏を適当な大きさにカットし、銀杏を半分に切り、小さめの紅葉型の器に入れ、溶き卵とだし汁、醤油、みりんを合わせたものを流し込んだ。
蒸し器から蒸気が上がったのを確認して、器を入れ、弱火にし、蒸していく。
その間に使い慣れたジャンボ七輪に炭を入れ、火術で火を起こすと、網の上に秋刀魚を載せ、焼いていく。
炭と秋刀魚の良い匂いと煙が辺りに漂った。
焼き上がったら火からおろし、皿へ。
カボスと大根おろしを添えて焼秋刀魚は出来た。
それと同時に茶わん蒸しも出来あがる。
「良い感じにふるふるになりました〜」
器の中でぷるんぷるんしている茶わん蒸しを見て、満足そうにした。
最後にイチョウの葉で箸置きを作ると、全ての工程は終わった。
鼻歌交じりに秋刀魚を捌いているのはテスラ・マグメル(てすら・まぐめる)、室内でも必ずサングラスをつけている。
「美味しいテリーヌの作り方〜♪」
テスラは歌って、秋刀魚の身と骨、皮を別々にし、フードプロセッサーに秋刀魚の身と卵白生クリーム、ジャガイモ、タマネギ、コンソメスープ、塩、胡椒をサイコキネシスで浮かせて次々に入れていく。
浮かせた食材がまるで、歌に合わせて踊っているかのように見えた。
その様子を大佐は動画撮影用のカメラでじっと撮影している。
油を塗った型に骨と皮を細かく砕いて入れ、撹拌して滑らかになったものを流し込む。
更に、隠し味として、表面を軽く炙ったギンナンをサイコキネシスで浮かせて入れた。
蒸し器の準備が整うとテリーヌを蒸していく。
「決めてのソースは慎重に〜♪」
蒸している間に秋刀魚のわたをバターで溶かしたソースを作った。
まだ時間があるのを確認して、今度はオスの秋刀魚が掛けているサングラスだけを集めて、素揚げにした。
それを小さなバケットにキッチンペーパーを敷いたものの中に入れておく。
次に飴を溶かし、何かを成形していく。
焼いたメスの秋刀魚に飴で作ったものを掛けると……オスに変身した。
そう、作っていたのはサングラスだ。
ここまで作り終わったところで、テリーヌが蒸し上がった。
取り出し、冷蔵庫で冷やす。
完全に冷えたところで、型から取り出し、薄く切った。
「ららら〜♪ 均等に切り分け〜見た目も鮮やかに〜♪」
皿に盛り付け、ソースを掛ければ秋刀魚のパテの完成だ。
わたで作ったソースは小皿に入れ、サングラスを素揚げしたものにも付けておく。
大佐がグッジョブと親指を立てて伝えると、サングラス料理人は1つ頷いたのだった。
「ほうほう〜……ふむふむ〜……料理上手な人がこんなに集まるなんて凄いよなぁ……しかも料理してるのはこんなに珍しい食材だし」
シャンバラ地鶏と踊るシイタケを手に料理している他の人達をまじまじとみているのは滝川 洋介(たきがわ・ようすけ)だ。
まな板の横に食材を置き、腕をまくると包丁を持ち……固まった。
「よし……大丈夫! 料理は好きだ……ああ、大丈夫だ!」
自分に言い聞かせると、シャンバラ地鶏をまな板の上に載せ、包丁を振り下ろした。
それなりの手つきではあるのだが……ところどころ危ない感じがする。
鶏のモモ肉を使っているせいか、鶏の脂が包丁に付き、滑りやすくなっており、時折肉が切れずに抑えている自分の指を切りそうになっている。
なんとかシャンバラ地鶏を一口大に切り終わり、バットに移しておくと、包丁とまな板を洗って、今度は踊るシイタケ、タマネギ、ホウレンソウを切りだした。
踊るシイタケの動きに翻弄されつつもなんとかこちらの食材も切り終わる。
ついでにニンニクも切っておく。
「えーっと……そしたら……」
フライパンに油をひき、温まったところで鶏肉を投入し、炒めていく。
「暇だよなぁ〜……ちょっと時間掛かるし。おお! あそこでは歌いながら料理を作っているのか……へぇっ!!」
フライパンそっちのけでテスラの料理に魅入られてしまったようだ。
「ん? なんだろう? 香ばしいような……臭いような……ってオレのか!! 肉焦げたぁ〜あわわわ〜……」
「まったく、しょうがないねぇ」
「お? アヴァネッサ〜ヘルプみ〜」
洋介の背後に立ったのはアヴァネッサ・クェイルーン(あばねっさ・くぇいるーん)だ。
「食材の見学がてら洋介の様子を見にきたんだけどねぇ……包丁貸しな、一緒にやったげるから」
「ありがとう〜!」
「で、何を作ろうとしてたんだい?」
「シャンバラ地鶏のクリーム煮」
「了解」
アヴァネッサは得意げな顔をし、包丁をくるりと回すと、シャンバラ地鶏のモモ肉を一口大に切り、バットの中へと入れた。
包丁に慣れた人が使うとこうも違う。
ほとんど滑ることなく、迅速に切り終わったのだ。
バットの中に入っている肉に小麦粉をたっぷりまぶしてから油をひき、熱したフライパンの中へと入れ、焼いていく。
「なんで、小麦粉をまぶしたの?」
「ふふん。こうしておくと、ホワイトソースを作らなくても、牛乳にとろみがつくのさ」
「なるほどねぇ」
焼けた鶏肉と取り出し、フライパンには油を足すと、ニンニクを入れ、中火で香りを出す。
香りが出たところで、タマネギ、シイタケを入れ、火を通す。
最後にホウレンソウを入れ、火が軽く通ったのを確認すると、フライパンの中に牛乳、コンソメ、塩、胡椒を入れ、先ほど焼いた鶏肉も一緒にぶち込んだ。
しばらくすると、本当にとろみがついてくる。
「ここで、チーズを入れると……さらにとろみがつくんだよ」
そう言うと、アヴァネッサはとけるタイプのチーズを入れ、かき混ぜる。
十分チーズが溶けたら、火を止め完成だ。
「どうだい?」
「さすが!」
洋介に褒められ、かなり嬉しそうだ。
「何こしらえるんどすか?」
「ああ、今日は素材の良さを活かして和食を作ろうと思ってな」
綾小路 風花(あやのこうじ・ふうか)が御剣 紫音(みつるぎ・しおん)の後ろから質問をすると、すぐに返答が返ってきた。
「主様、わらわは手伝うのじゃ」
「我も手伝うとするかのう」
アルス・ノトリア(あるす・のとりあ)とアストレイア・ロストチャイルド(あすとれいあ・ろすとちゃいるど)が名乗りを上げる。
「私ももちろん、手伝いますえっ!」
風花は紫音の制服の裾をぎゅっと握って、言った。
「頼むな!」
紫音がお願いすると、3人ともコクリと頷いた。
「それじゃあ、風花は調味料の棚からヒマラヤ岩塩、香川県小豆島産の濃口醤油を持ってきてくれ」
「了解どすえ〜」
紫音が指示を出すと、風花はすぐに動いた。
「アルスとアストレイアは食材のところから高知県馬路村産の柚子と辛味大根、干し椎茸、ミツバ、蒲鉾、小海老、焼き穴子、ユリ根、ハマグリ、人参、干し貝柱、油揚げ、八女茶、ブドウ、梨、柿を取ってきてくれ」
「うむ」
「かなりの量じゃが……ま、なんとかなるじゃろ」
アルスとアストレイアはそれぞれ大き目のバットを持って、食材のあるところへと足を運んで行った。
そして紫音自身はメインとなる食材のイケイケ秋刀魚とシャンバラ地鶏、スケスケ銀杏、踊るシイタケをチョイスしに行ったのだった。
紫音が戻ると、風花がもう調味料を持って、戻って来ていた。
「それじゃあ、シイタケに切り込みを入れてから手で割いてくれ。俺はこっちの秋刀魚に取り掛かるから」
「任せておくれやす」
紫音と2人でならんで料理をしている様を大佐がばっちり写真におさめたのは……気が付いていないようだ。
(ああ、このまんまどなたはんも邪魔せいでおくれやす!)
包丁を持ちながら、風花はだいぶ嬉しそうだ。
「これで良いのか?」
しかし、風花の願いは長くは持たず、すぐにアルスとアストレイアが食材を持って帰ってきてしまった。
アルスに言われ、紫音は食材が全て揃っているのかチェックする。
「ああ、大丈夫だ。それじゃあ……アルスは茶わん蒸しの手伝いで干し椎茸を水で戻して、蒲鉾、焼きアナゴ、ユリ根を切ってくれ、アストレイアは炊き込みご飯の材料を切ってくれ」
「構わぬ。主様、この大きさで良いのか?」
アルスは蒲鉾の大きさを確認する。
「主、こっちの大きさも見て欲しいのじゃ」
「んー……うん、これくらいの大きさで切ってくれれば良い」
2人の切り方を見て、きちんと確認すると、紫音は秋刀魚を終わらせ、デザートのブドウ、梨、柿を使ったフルーツゼリーに取り掛かった。
その後も3人に見事な指示を出しながら、紫音は秋刀魚の白塩焼き、柚子と醤油で味付けした踊るシイタケの炙り焼き、茶わん蒸し、ハマグリのすまし汁、釜で炊いた炊き込みご飯、フルーツゼリー、お茶は八女茶を用意した。
「これだけ出来れば上出来! みんな、お疲れ様!」
紫音が締めに労いの言葉をかけ、4人は無事に調理完了した。
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