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宝探しinトラップハウス

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リアクション


■ 探索開始から一週間後


「オーライ、オーライ」
 テノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)が手を振って、トマスが運転するショベルカーを誘導する。
 フランクリンの屋敷の取り壊し作業は順調だった。子敬が作った見取り図だけではなく、多くの人が作ったマップなども集める事ができたため、屋敷の構造も地下の様子もかなり詳細に判明していた。
 おかげで、取り壊し作業は滞ることはなく順調に進んでいた。
「よーし、休憩するか」
 離れの解体が終わったところで、テノーリオが声をかけた。
「そうだな、少し休むか」
 ショベルカーを降りると、子敬とミカエラがお弁当を持ってやってきていた。
「もうそんな時間か」
「どうですか、作業の進み具合は」
 子敬の質問に、
「大方予定通りだ。中身に気を遣わなくていいぶん、当初の予定よりはずっと楽だよ。これも、詳細な見取り図があってこそだ」
「それはよかった。それにしても、最初の話と随分このお屋敷は違ったもののようでしたな」
「フランクリンはゴーレムの職人だという話だったな。そういう事なら、最初っから取り壊しておいてもよかったか」
 蔵書などを調べた結果、ゴーレムの素材に鎧を買い入れ、それを加工して販売していたらしい。地下を歩き回っていたものは、売れ残りが自宅警備員だったのではないかと考えられている。
 探索していた人たちがほとんど全滅したらしく、さらにもう一つ偶然見つかった正規の入り口はもう潰しておいたので、逃げ出すことは無いだろう。
「トマスー、そんなところで話てないでお弁当食べようよー」
「おっと、そうだな………ところで、あの弁当は買ってきたのか」
「もちろんですよ」



「いらっしゃいませー。あ、ネリィさん、来てくれたんですね」
「お、久しぶりだね」
 ナギ・ラザフォード(なぎ・らざふぉーど)が店長を務める喫茶エニグマに、ネリィがやってきた。先日のフランクリンの屋敷の探索の時にネリィはナギにコーヒーを振舞ってもらい、この店の話を聞いていたのだ。
「あれ、お客? って、ネリィちゃんじゃん」
 奥からひょっこり出てきたアドラー・アウィス(あどらー・あうぃす)が目を丸くする。
「やぁ、久しぶり。あの時ずいぶん色んな女の子に声をかけてたみたいだが、うまくいったかい?」
「売り上げには貢献できたんですけどねー」
「あっはっは、そうかそうか。もっと宣伝して欲しいなら、請け負ってもいいよ。ただし、ちゃんと宣伝料は頂くけどね」
「その辺りは店長か、もしくはオーナーに聞いてやってくださいよ」
「そういうわけだ。宣伝して欲しかったらいつでも言ってくれて構わないよ。色々と飛び回ってる身だからね、それなりに人脈というものは持っているつもりだ」
「あはは、ではもし何かあれば。ところで、今日はどうしたんですか?」
「いや、うちの顧問弁護士さんが気分転換したいといらしくてね」
 と、ネリィに続いてガイアス・ミスファーン(がいあす・みすふぁーん)ジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)が入ってくる。
「それじゃあ、そうだな、あそこの席を借りるよ」
 ネリィは奥まった席を選んで、ガイアスとジーナもそれに続いた。

 席につくなり、ガイアスはアタッシュケースから大量の書類と、分厚い本を取り出して広げ始めた。そのどれもが小さい文字でびっしりと何か記入されている。
「はぁ、見るだけで目が疲れてきますな………」
 ガイアスはこめかみを抑えながら、疲れた声をもらす。
「今回は色々とややこしい話になってしまったからね。いやぁ、まさか自分から売り込みに来てくれるとは思わなかったから助かったよ」
 今回の探索で集められたものは、ネリィの所有物であるが同時にフランクリンの遺品でもある。回収された収集物の価値によっては、遺族がいちゃもんをつけてくる可能性があるのではないか。
 そう考えたガイアスは、ジャスティシアとしてこの件に関われないかとネリィに売り込んでみたのである。そうして、今回の件に限って顧問弁護士として関わることになったのだ。
 ネリィが交渉していない遺族からの抗議や、もしくはネコババした相手への正統な判決などの仕事をネリィもガイアスも予想していたのだが、実際は少しばかり違っていた。
「お屋敷の解体は今日でしたね」
 淹れてもらったコーヒーを頂きながら、ジーナはネリィに話しかけた。
 ジーナはガイアスの助手として一緒に雇われている。しかし、実際さほど手伝える事も多くなく、ネリィの話し相手が主な仕事になっているような気がしないでもない
「あ、もうそんな日か。あの屋敷を壊すのは少し勿体無い気はしたんだけどね」
「遺族の方もすぐ納得してくれましたね」
「家族にとっては、変人だったんでしょうね。変なところに屋敷を構えて、挨拶に行くと本人じゃなくて罠が出迎える。そりゃ嫌われて当然だわ。しかも、罠を乗り越えるた先には地下迷宮、自作のゴーレムが闊歩してたなんてね」
「ゴーレムといえば、一箇所たくさん残骸が見つかった場所がありましたね」
 レティシア達から報告のあった場所で、突然上からゴーレムが飛び降りてくる用途不明の場所だ。
「さぁね、本人に聞いてみない事にはわからないけわね。まるで墓場みたい、って話だから本当にゴーレムの墓場だったんじゃない?」
「墓場ですか。報告では近づかない方がいい場所らしいですし、そうかもしれませんね」
 二人はコーヒーを飲みながら、のんびりとしていた。
 今仕事をしているのは、ガイアスである。
 今回の件がややこしくなったのは、まさに二人が話題にしているゴーレムだ。罠だらけの屋敷を解体処理する、というだけなら土地の利権の処理さえ済ませてしまえば問題ない。しかし、危険地帯であると色々と話が変わってくる。
 土地の権利そのものは、一番近い蒼空学園に移譲することで話がまとまった。しかし、話はネリィと蒼空学園では終わらなかった。今回の探索には多くの学校の生徒が参加しており、それに便乗して情報を公開して欲しいだの、危険な場所であるという報告を入れておいて欲しいなどとの要望が積み重なっていった。
 ガイアスの作業をややこしくしているのは、それだけではない。シャンバラ地方ごとに、内容はほぼ同じ書類であっても記入ルールなど細かいところに差異があり、非常にややこしい。既に蒼空学園に提出した基盤となる書類があるので、考えるべきところは少ないものの、単調な事務作業が延々と続いている。そのうえ、本人もしくは資格のある人物以外の書類作成はみとめていないとのルールがあるため、ジーナに手伝ってもらうこともできない。
「ジャスティシアとは、これ程にも厳しく辛い道のりであったとは………」



 こうして、罠だらけの古い洋館は解体され、地下の施設も蒼空学園に移譲されることでこの小さなお仕事は終わりを告げた。
 参加者の多くは危険に見合っただけの報酬を手に入れることができ、ネリィも多くの商品を手に入れた。
 洋館の持ち主であるフランクリンが一体どんな人物であったか、という些細な謎は残ったものの、遺族ですら興味を抱かない事柄をわざわざ掘り返したところで意味はないだろう。
 もう洋館は無く、地下への入り口も全て封印されてしまうのだから。
 いずれこのトラップハウスは人々の記憶から消え、各学校にささやかな資料が残る。
 もしかしたらこれは、あれだけの罠を仕掛けて人を遠ざけていたフランクリンにとっては、最も望ましい結末だったのかもしれない。


担当マスターより

▼担当マスター

野田内 廻

▼マスターコメント

 こんばんわ、野田内 廻です。
 はてさて、今回のリアクションはいかがだったでしょうか。

 今回多くの参加者から、たくさんの罠&お宝案を頂きました。大変ありがたく思っております。
 なるべく頂いた案は登場させようと試みておりますが、全てを使用することはできませんでした。
 まずここで、罠とお宝案をいただけたことに感謝を、そして私の力量が足らずにリアクションに使用できなかった事に関して謝罪をさせていただきます。

 さて、何を書こうかな。
 この欄に無理して文章を書く必要は無いかなぁ、とも思うのだけれども、謝罪だけ残すのも重苦しいかなと思うので、少し無駄な事をば。
 今回のリアクションを書くにあたって、最大の敵となった相手の愚痴でも書こうかな。

 そいつはアキって名前の子猫。今月で産まれて四ヶ月目、動くものにはとりあえず飛び掛っておきたいお年頃。
 これが、私の腕や足に噛み付いてくるわ、机に飛び乗ってキーボードの上を右往左往。好き勝手してくれます。
 体力を消耗させれば、すぐに丸くなって落ち着くのですが、子猫の体力はバカにできません。ある意味、大人の猫より性質が悪いかもしれない。
 可愛いんですけどね。うん、可愛いんだよ。だからね、乱暴にもできなくて。

 これは愚痴………なのかな?

 それでは改めて、参加者の皆さんと読んで頂いたあなたに感謝を。
 もしまた機会がありましたら、その時はよろしくお願いいたします。

 ではでは