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『ナイトサバゲーnight』

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『ナイトサバゲーnight』
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第二章 戦は始まる

 身を潜めて息を殺して。パッフェルの捕獲を目指すGA『銃撃戦闘研究会』の面々は、標的の発見という第一段階においては甲陣営と共闘した方が効率が良いだろうと、行動を共にしていた。そして今まさに白滝 奏音(しらたき・かのん)の視界の隅を、敵陣営が歩み過ぎて行こうとしていた。
「前方に敵影…迂回しますか?」
「いや、待ってくれ」
 奏音はパートナーである天司 御空(あまつかさ・みそら)に言ったつもりだったが、応えたのはソル・レベンクロン(そる・れべんくろん)だった。
「もう少し、引きつけるとしよう」
 そう言ってソルは長い髪をかきあげた。「それまでの間、敵を倒した時の華麗な決めポーズを一緒に考えてはくれないかい?」
 奏音が赤くも冷たい瞳を向けたのはヒイたからではなく彼女が強化人間だから……ということにしておきましょう。
 名誉挽回? いや、挑み向かう鋭き目をしているソルの姿こそが彼の真骨頂なわけで。
 乙陣営と思われる人影が十分に寄りた所でソルが弾け出た。
 掃射された弾雨にいち早く気付いたのはレイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)であった。
 瞬時に隊の前に立ちふさがると木製の大剣をかざした。『ブレイドガード』を駆使し、エアガンの掃射から隊を守ると、掃射の隙をついて『バーストダッシュ』で飛び出した。
 ソルとの距離を一気に詰めると、大剣を振りてエアガンを払い飛ばした。
 エアガンを奪われる、そう感じた佐野 亮司(さの・りょうじ)がエアガンの銃口を向けて駆けたが、撃つより前にレイディスが大剣の腹を銃口にぶつけたために、異種武具の鍔迫り合いがここに起こった。
「銃は奪わせねぇ」
「要らねぇよ! 俺にはこの大剣があるからなぁ!!」
「なら、大人しく退きなぁ!!」
 亮司レイディスの衝突の僅かな間にも戦脈は流れていた。
「パッフェルちゃん見ぃ〜っけ!」
 『空飛ぶ魔法↑↑』でその身をふわふわと浮かせた秋月 葵(あきづき・あおい)パッフェルたちを見下ろしていた。
 が次の言葉を発するより前に長原 淳二(ながはら・じゅんじ)が飛び出した。いつもは驚異的な反応を見せるパッフェルが動きを見せていない、その事が何よりも解せず、そして反射で彼の体を突き動かしてしまうほどの恐怖が彼に襲いかかったのだ。
 『木刀』を下段に構えたままに飛び上がった淳二の眼前を何かが通りすぎた
 通りすぎたのは淳二がそれを避けたからであるが、実際にすぎたのは師王 アスカ(しおう・あすか)が投げたスーパーボールだった。
「ダメだよ〜、そんな不用意に飛び出したりしたら」
 アスカが再びにスーパーボールを木々に向かって投げつけると、ボールは跳弾のように幾度か跳ね返りながら淳二に襲いかかった。
「くっ」
 不規則に向かいくるスーパーボールを次々に打ち落としていったが、一つだけ、右肩への直撃だけは避けられなかった。
 痛みはない。しかしこれは『サバゲー』である。エアガンの銃弾よりも速度はない、しかし弾ははるかに大きい。淳二は木刀を左手に持ち変えた。
「ふっ。右肩を打たれた程度では戦闘不能とは言えないな」
「なるほど〜」
 笑みながらのままアスカは先ほどの倍、いや4倍の量のスーパーボールを次々に放ってきた。
 それらの軌道はまるで網目の壁が迫ってくるように見えた。
「数が増えても同じこと!」
 右手をダラリと下げたまま左手で『木刀』を操ると、淳二はそれらは次々に打ち落としていった。
「器用だね〜、でも、多いだけじゃないよ〜」
 アスカが視線を横に流した。それを合図にルーツ・アトマイス(るーつ・あとまいす)が両手を突き出して手のひらを開いた。
 10を越えるスーパーボールが一斉に淳二に襲いかかった。
「なっ……」
 不規則だった動きが不自然なものに変わった。それは『サイコキネシス』によるものだった。
「そうだよ〜、あれだけ一度に当たったら〜」
「あぁ。わかってる」
 全身を打ち抜かれたといった所だろうか。淳二は『木刀』を雫し落としてから、膝から崩れて落ちた。
 その瞬間だった。たった一言を残してパッフェルが飛び出した。
「ここで待つのは、違う!」
「待て! パッフェル!!」
 氷室 カイ(ひむろ・かい)の呼びかけも届かず、パッフェルは戦の場に飛び込んでいった。
 亮司が銃口を上げた時も、が宙から見下ろしていた時もアスカがスーパーボールを投げつけた時もルーツがボールを操った時も。彼女はじっと待っていた、刻が来るのを機が熟するのを、サバゲーの醍醐味を味わうべく、迎撃の最高のタイミングと場面が整うのを待っていた、しかし。これ以上目の前で仲間がやられるのをじっと見ている事は、彼女には到底できなかった。
 堰を切ったように地を蹴り出したパッフェルは、あっという間に4人との距離を詰めた。切り落とされたばかりの枝のように跳ねながら亮司の銃撃を避けながら、それどころか4人を一カ所に誘導して集め―――
 その輪の中に自ら飛び込むと、片手に2丁ずつ、計4丁のモデルガンを一度に撃った。
 銃声は一つ。それでもアスカルーツを一度に撃ち抜いた。
「……やっぱり、難しい」
 パッフェルはこう漏らしたが、この光景を見ていたクド・ストレイフ(くど・すとれいふ)は「ったく、どういう事かねぇ」と漏らしてた。同じく『銃撃戦闘研究会』のメンバーである藤堂 裄人(とうどう・ゆきと)も驚きを表情に表していた。
「地球の女の子とは違って……なんというか、とんでもなく戦い慣れてるな」
「一度に4丁同時にって…。相変わらず、でたらめだねぇ」
「接近戦は苦手だって聞いてたけど、あれなら何も問題ないんじゃないか?」
「いや、精度はいまひとつみたいだよ」
 クドは楽しそうに言った。「ほら、ひとり残ってる」