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【怪盗VS探偵】煌めく船上のマジックナイト

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【怪盗VS探偵】煌めく船上のマジックナイト

リアクション

 蝶子はリースをひきつれて、走り出す。
 とりあえず、盗むのは正悟が成功させてくれているからあとは逃げるだけだ。
 突然、天井近くにある窓から空飛ぶ箒に乗った男が現れた。
 光学迷彩と隠れ身を使って、見えないようにしていたらしい。
 フォンだ。
 箒に乗って、蝶子の背後に周り込み、ザイルで蝶子をぐるぐる巻きにしてしまった。
「何するの!」
「さて、夜空に舞う美しい蝶の怪盗パープルバタフライさん。怪盗シリウス二世が貴方を盗ませていただきますよ。貴方は火焔にとってライバル……大切な人でしょ?」
「確かに……ライバルではあるわね」
「ちゃんと予告状も出したんですよ? 美緒に届いた招待状に細工をしておいたのは僕ですから」
「怪盗シリウス二世が!?」
「そう……そして、僕の大切なものは盗んだもの……つまり貴方ですね」
「あら、嬉しい殺し文句かしら? でも……盗むのは好きでも盗まれるのはまっぴらごめんだわ!」
 蝶子はザイルを解こうとするが、なかなか外れない。
 リースも手伝うが、どうにもうまくいかない。
「真の怪盗に相応しいのは……この俺様だァー!」
 どこからともなく声がした!
 この3人の前に現れたのは外套を着たロイだ。
 頭はパンプキンヘッドになっていて、誰だかわからないようになっている。
 ちなみに、喋っているのは外套とのこと。
「怪盗パンプキラー参上! 俺様はなァ、その昔ザナドゥじゃちったぁ知れた怪盗だったんだぜ! 俺様をし置いて怪盗名乗るたァいい度胸だ!」
「そんな人……聞いたことないですけど?」
 外套に素早くツッコミを入れたのはナギだ。
 これで、外套の言葉が嘘だということがばれてしまった。
「ちっ! そんなこたぁ、どうでも良いんだよ! さ、怪盗パープルバタフライを盗ませてもらうぜ!」
 ロイと外套が蝶子達の元に突っ込もうとしたその時――
「させませんよ!」
「蝶子お姉ちゃん!」
 陽太と青太の声が聞こえ、辺りは煙幕ファンデーションで視界が悪くなってしまった。
 煙幕が晴れると、怪盗シリウス二世の手に落ちていた蝶子の姿もリースの姿もなかった。


「ねえ、ねえ、行かなくて良いの?」
「はっ! つい!」
 無邪気にロキに聞かれると火焔は呆然としていたのから復活した。
「はや――」
「早く行かないと出番がなくなっちゃうわよ?」
 橙歌が言おうとしたのを遮り、シオンが火焔にツッコミを入れた。
「む……」
(ああ、良いわね、やっぱり……人をからかって遊ぶのって大好き)
 橙歌が少しむくれたのを見て、シオンは大変満足気だ。
 とにかく、火焔と橙歌は怪盗パープルバタフライを追いかけに行った。


「乙女の心高ぶる時……」
 エミリアが両手で円を描くように動く。
「あ、現われたる正義の女神!」
 繭がその後ろで伸びをするような姿勢になった。
「マジカルエミリー!」
「み、ミラクルコクーン!」
 2人は名乗りを上げるとメイド服を脱ぎ捨てた。
 下から出てきたのは、スク水にマント、それに仮面を付けた衣装だ。
「少女の想いを奪う悪い子は!」
「えっと……逮捕しちゃうぞ?」
 2人でポーズをとって、ワイバーンに乗っている正悟達にアピールするのだが、気付かれてすらいない。
「わー、凄いね、こんな怪盗さんもいるんだね。このパーティーめちゃくちゃ過ぎて凄いかも」
 手を叩いたのはタキシードを着たエールヴァント・フォルケン(えーるう゛ぁんと・ふぉるけん)だ。
 さっきまで料理をつまんでいたらしい。
 飲み物も持っている。
「……いや、あの……ショーじゃなくて、本当に怪盗が盗んでるんですよ?」
「え……? 本物?」
 繭はコクリと頷いた。
「それは笑いごとじゃないよね。大切な物を土足で踏みにじるという事なんだよそれは。犯罪は許せない。アルフ行こう。探偵さんに協力するよ」
「良いぜ。俺もケバイ若造り風おばさんに協力するよりは、来年辺り射程内に入って来る探偵助手ちゃんのいる方が良いからな」
 エールヴァントの言葉にタキシードを着たアルフ・シュライア(あるふ・しゅらいあ)も心情は違うが同意し、探偵達のもとへと走っていった。
「私達はどうしますか?」
「……逃げとくわよ!」
「えー!」
 繭とエミリアはそそくさと船の脱出艇を使って逃げたのだった。


 煙幕を使って、逃げた蝶子達は会場の中をまだ走っていた。
「暗き闇あるところに輝く知の光あり。推理研、見参!」
「逃がさない! モチッドミスト!」
 蝶子達の姿を発見した、ペルディータが口上を良い、蒼也からは、白い物が飛び出し、蝶子の足と床をくっつけてしまった。
 バランスを崩した蝶子は勢いよくずっこけ、裾がおもいっきりめくれて黒い紐パンがまる見えとなってしまった。
 蒼也が投げつけたのはよくこねられた餅だったのだ。
「目のやり場がー!」
「……普通にサイコキネシス使えば良かったのでは?」
「はっ……!」
 ペルディータからどこか冷たい視線を受けた。
「いや! あいつには言わないでくれ! そんなつもりじゃなかったんだぁぁ!」
 どうやら大切な人に知られるのを恐れたらしい。
 蝶子達はそんなやりとりをしている2人をいつの間にか放置して、先を急いだ。


「……何故かわたくし、貴女とは対決しなくてはならないような気が致しますわ……」
 そう言い、蝶子の前に立ちはだかったのはミルフィだ。
 リースは蝶子とミルフィを交互に見て、何かを納得したようだ。
「ああ、胸ですね。対決しなくちゃいけない理由」
 リースの言葉に皆、手をぽんっと打って納得した。
 ミルフィ自身もスッキリしたようだ。
「それじゃ! 先急いでるますから!」
 リースがそう言うと、怪盗達はまた走り出してしまった。
「絶対にミルフィの方が大きいですよ♪」
「ありがとうございます……」
「気になるなら……今度こそ、決着を付けたら良いんですよ!」
「そうですね! 大きさだけじゃなく、形でも負けはしないですよ」
「うんうん!」
 次回の対決の理由が明確になったようだ。