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【怪盗VS探偵】煌めく船上のマジックナイト

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【怪盗VS探偵】煌めく船上のマジックナイト

リアクション


―警備中―



 パーティー会場の外。
「あー、ちょっと良いかな?」
 船の右側を警備している男性に話しかけたのはタキシードを着た七尾 蒼也(ななお・そうや)だ。
「なんでしょう?」
「聞きたいんだが、この仕事の報酬はきちんと支払われるのかな?」
「はっ?」
 さすがに思いっきり不審な目で見られる。
「いや、こういう仕事って大変だよね? 俺の知人もやってたんだけど……契約書を交わさなかったみたいで、賃金を支払われなかったんだって。だから気になって」
「本当ですか!? そんな話しがあるなんて……気をつけないとですね……。いやぁ、オレ、この仕事は始めてなんですけど、ちゃんと契約書を交わしたので大丈夫じゃないかと……それに運営は商人のタノベさんですから」
 相手の心を開く事には成功したが、今の言葉で次の質問の答えが見えてしまったようだ。
「えっと……それって、今回のパーティー主催者には会ってないって事?」
「はい、お会いしていませんね」
「ちなみに、主催者の名前は聞いてる?」
「たしか……紫水青太様だったような……」
 その名前を聞き、ひとまずは情報収集成功と言えるだろう。
「そうか、ありがとう。仕事頑張って。これ、差し入れ」
「有り難うございます!」
 蒼也は警備員に持ってきていた温かいウーロン茶を渡すと、かなり喜ばれた。
(怪盗パープルバタフライが主催者なのは判明したな。あとはこれを火焔達に連絡……はぁ……せっかくのパーティーだし、どうせならデートが良かったな……さ、連絡するか)
 警備員から見えないところまで移動すると、火焔達とペルディータ・マイナ(ぺるでぃーた・まいな)と舞達推理研のメンバーに連絡し、今回の情報収集の結果を伝えた。

「むむむ、やっぱり怪盗パープルバタフライのパーティーでしたか……わかりました、会場内の捜索は任せて下さい!」
 電話を切ると、軽く頬を叩いて自分に気合を入れ直す。
 ペルディータはパーティードレス風のアイドルコスチュームを着ていて、捜査するにはかなり派手だろう。
 本人も少し気にしていたようだが、怪盗パープルバタフライが関わっていると確定した今、気にしてもいられなくなったようだ。
 パッと見た感じでは会場内に怪しい人物は見当たらない。
 そこで、ペルディータも聞き込みを開始した。
「すみません、紫の衣装を着た美女を見ませんでしたか?」
「見てないな」
「そうですか……ありがとうございます!」
 美緒と会話していたメイコは空振り。
「すみません、紫の衣装を着た美女を見ませんでしたか?」
「そんなの目立つんじゃないのか? 見てないぜ?」
「ありがとうございます」
 またドレスに逆戻りした椎名も空振り……このあと、何人もに聞き込みを行ったが、何も情報を得る事が出来なかった。
「ん? これは……!」
 しかし、ふと目にした料理テーブルのところにある箸袋に何かを発見した。
 箸袋には『ぱーぷるばたふらい』と書かれていたのだ。
「さっそく連絡ですね!」
 1つでも情報をゲットしたペルディータは嬉しそうだ。


ーーーーーーーーーーーー


 スーツを着て、船の警備に当たっているのはロイ・グラード(ろい・ぐらーど)だ。
 その手には常に常闇の 外套(とこやみの・がいとう)を持っている。
 傍から見れば、ただの上着にしか見えないので、誰にも怪しまれてはいない。
(警備として潜り込めたのは良いが、本当に怪盗パープルバタフライは来るのか、また何を盗むつもりなのか……詳しい連中に話しを聞くとしよう)
 会場内に入ると、火焔が丁度、電話を受けているところだった。
「そうですか……ええ、やはり怪盗パープルバタフライがこのパーティーの主催者だったんですね。ええ、貴重な情報ありがとうございます」
 電話を切ったところで、つかつかと近付き、話しかける。
「何か騒がしいようだが……怪盗パープルバタフライ?」
「あ、警備の方ですか。お疲れ様です。ええ、怪盗パープルバタフライが美緒くんの大切な物を盗もうとしているようなんです。それだけじゃなく、情報によると、怪盗パープルバタフライを盗もうとしている者もいるようなんですよね……」
「なぁにぃー! 俺様を差し置いて……ふごふご」
 今の話しを聞いていた外套が急に話しだしたので、慌てて、その口を押さえた。
「ん? 何か今聞こえましたよね?」
「いや……、しかし怪盗か、こちらも注意する。では」
「ああ、宜しくお願いします!」
 火焔を別れ、会場の外へと戻ると、外套の口から手を放してやる。
「俺様の真似すんじゃねぇー! おい! 何が何でも俺様達が怪盗パープルバタフライを盗むぞ! ウヒャハハハハ!」
「……」
 外套の言葉だけが海上に響いた。


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「んー……見当たらないなぁ……」
「何を探しているのだ?」
 テーブルクロスをめくったりして、何かを探しているカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が声を掛けた。
 薄緑色のシフォンドレスがカレンを惹きたてている。
 お洒落な服をほとんど持っていないのだが、その中の数少ないお洒落なのだ。
 ジュレールの方は、カレンと似た感じのドレスを買い、着て来ている。
 色は薄い黄色だ。
 どことなくヒヨコを彷彿とさせる。
「探しているのは青太君!」
「はぁ……そんなところにいるわけが……いたのか?」
 なんと、テーブルクロスの下で見つからないようにご飯を食べていたのだ。
「怖くないよー! さあ、おいで!」
「……それはかえって怖いのでは?」
 実際、カレンが呼んでも、青太は首を横に振るばかりで動こうとしない。
「しょうがないなぁ……えいっ!」
 結局、無理矢理押さえつけて、ジュレールと一緒に青太を持つと、素早くパーティー会場を抜けだした。
 扉をくぐり、近くの部屋へと入る。
 中はがらんとしていて、誰もいない。
「よいしょっと……ふぅ……」
「それはなんだ? 大きな荷物を持っているとは思っていたが……」
「ん? 簡易更衣室だよ?」
「何故、そんなものが必要なのだ?」
「この中でお説教するから、ジュレは席を外してね!」
「む……説教なら仕方ない……って、この部屋を全部使えばいいのでは?」
「あ、そっか!」
 ジュレールはカレンに青太を任せ、部屋を出た。
「さ、とりあえず、着替えようか」
「な、なんで着替えっ!? 必要ないよ!?」
「やっぱり年相応の格好の方が似合うと思うんだよね」
「うわぁぁぁっ!!」
 カレンは問答無用で青太の服を引っぺがし、素早く着替えさせてしまった。
「う……う……見られた……お婿に行けない……」
「うんうん、やっぱりそっちの方が似合うよ!」
 出来あがったのは短パンにTシャツといういかにもな格好だった。
「って、別に下着は見たけど、全部見たわけじゃないよ!? それにお婿に行く気だったんだ?」
「下着でも恥ずかしいよ! それに……お婿っていうのは言葉のあやっていうか……」
「ああ、いきなりの事につい本音が出ちゃった感じかぁ」
「うん……って、だから違うよ!」
 2人の漫才のようなやりとりが、このまま続くかと思われたが、部屋の扉をノックする音でそれは終了してしまった。
「はーい」
「警備の者です。あの、この部屋から物音がすると言われまして……何かありました?」
 カレンは警備員という言葉を聞き、扉を開け、事情を説明した。
 中には未だに半べそ状態の青太がいる。
「なるほど、私が船室に責任もって閉じ込めておきましょう」
「え、あ、良いよ! だって、更生させるのが目的だもん! 閉じ込めるなんて可哀相だし」
 カレンはくるりと警備員の方から、青太の方へと向き直った。
「さーて、次はどんな服で――きゃっ!」
 カレンは後ろから足払いをされ、転んでしまった。
 その隙に警備員の人が中へと入り、青太の腕と元の服を掴むと部屋を飛び出してしまった。
「ま、待って!!」
 カレンは慌てて外に出たが、どこにも2人の姿は見当たらなかった。

 その頃、ジュレールは甲板等をあちこち調べ回っていた。
「何か……怪盗達が脱出に使うものは……む? これか?」
 探し当てたものはジェットモービルだった。
 他のものは普通の脱出艇なのに、これだけ違う。
 それに、ジュレールは細工を施すと、カレンの元へと戻って行ったのだった。


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「青太くんは相変わらずのドジっ子かな?」
「ど、ドジっ子じゃないよっ!? ……お姉さん、誰?」
 警備員の服を着た15歳くらいの女性にそう言われても、青太はピンと来ていない。
 カレンが居た部屋のすぐ近くの通路に隠れ、光学迷彩の布で姿を隠したのだ。
 青太に誰と問われて、ペッタンコな胸の女性はちぎのたくらみを解いた。
「あっ! えっと……円ちゃん!」
 現れたのは桐生 円(きりゅう・まどか)だ。
「んー、ボクは青太くんより年上だよ?」
「そ、そうなの? ごめんなさい。円さん」
「いやいや、細かい事は気にしないよ。で、おねーさんは何処に居るのー?」
「ああ、蝶子お姉ちゃんなら……」
 青太は今、蝶子がいるであろう場所を教えた。
「ふんふん……わかった、有難う。じゃ、この服渡しとくね。その服でも構わないんだろうけど……」
「ありがとう……助けてくれたし……この恩は忘れないね!」
「うんうん、それじゃ!」
 円は蝶子のいる場所へと飛んで行ったのだった。