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波乱万丈の即売会

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波乱万丈の即売会

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終章 諸行無常

 楽しい時間というものは、あっという間に過ぎ去ってゆくものだ。
 即売会は予定通り、閉会の時を迎えた。
 山葉校長が壇上でマイクを握り、いささか疲れた色を浮かべながらも、閉会の挨拶をスピーカーに乗せて会場内に送り出す。
「今日は皆さん、本当にお疲れ様でした。特に大きな事故も無く、こうして無事に閉会の時を迎えられたことを大変嬉しく思います」
 しかし、誰も聞いちゃいない。
 いや、厳密にいえば、ごく一部は律儀にも耳を傾けていたのだが、ある者は己の戦利品を愛しげに並べて歓喜の溜息を漏らしてみたり、ある者は上々の売り上げにほくほく顔になっていたりと、大半が好き勝手なことをやっていたのが実情である。
 要するに、挨拶なんて壇上の本人が気持ち良く勝手に語っていれば良い、というのがこの場に居る全員の共通した認識だったのだ。
 そんなこんなで山葉校長による閉会の辞が終わると、今度はリカインが壇上に登り、後片付けの段取りと会場全体のタイムスケジュールを説明して、一連の作業は終了となる。

 この後、山葉校長が風紀委員達を控え室に呼び集め、夜に慰労会としてちょっとした食事会を催す用意があることを告げると、それまで疲労困憊だった風紀委員達の面に、この日一番の笑顔の華が咲いた。
 これぐらいの役得が無ければ、嫌われ者の風紀委員などやっていられないだろう。
 解散までに少し時間がある為、風紀委員として働いた者達は控え室のそこかしこで談笑している。
 と、その中でひとり、アストライトだけはいささか神妙な面持ちで山葉校長の脇に、すすーっと滑るように近づいていった。
「……旦那、例のブツですぜ」
「おぅ、ご苦労」
 控え室の隅っこで、あからさまに怪しげなやり取りを交わすこのふたりの様を、鞆絵の邪念看破が見逃す筈も無かった。
「あのおふた方……少し締め上げて差し上げる必要がありますわね」
 すると、その時。
「はい、これは一体何でしょう?」
 突然花音が、山葉校長とアストライトの間に割って入ってきて、アストライトが山葉校長に手渡した重い紙袋を、ほとんど一瞬で強奪してしまった。
 山葉校長の面に、ヤバイ、と恐怖に慄く蒼白な色が張りついた。
 何故ここに、花音が居るのか? 確か彼女は、発禁ものの同人誌を売りさばこうとしていた不埒な生徒達を処罰する為に、処刑部隊の編成に取り掛かろうとして、忙しかった筈なのに。
 だが、実際に花音は山葉校長の目の前に居る。
 死して屍拾う者無し。
 何となくそんなフレーズが、山葉校長の頭の中で、殷々と響き渡った。そして更に、間の悪いことに。
「やほ〜♪ 涼司ぃ〜、頼まれていたブツを届けにきたよ〜」
 ルカルカが、大量のエロ同人誌を紙袋にすら入れず、裸のままで積み上げて山葉校長のもとへ届けに来たのである。
 最早、絶体絶命。
「それじゃあ、ちょっとあっちでお話を伺いましょうか〜」
 花音がにこやかな表情で素早く山葉校長の背後に回ると、燃える闘魂もかくありやといわんばかりの的確なチョークスリーパーで山葉校長の喉元を締め上げ、そのまま別室へと引きずっていってしまった。

 ところで、近遠、イグナ、ユーリカ、アルティアの四人はあの後、どうしていたのか。
 実はこの四人、結局のところ即売会会場には一歩も足を踏み入れることなく、そのまま会場の外で閉会の辞を聞かされる破目に陥っていたのだという。
「う〜ん、残念……即売会に参加するには、体力も必要だったんですね。ひとつ勉強になりました」
「そういえば、誰かに聞いたことがある……コミケは格闘技だ、と。今回の即売会が、そのコミケなる催しと同等なのかは知らぬが、少なくとも待った無しの真剣勝負であることだけは、間違い無さそうだ」
 イグナがしたり顔で、何度も深く頷いている。
 この後、イランダ発案の『DJCヘビー級選手権』なるタイトルが設置されたとの噂を聞きつけ、近遠達は次回の即売会に向け、猛特訓を開始したのだという。
 勿論、そんなものは真っ赤な嘘っぱちであることは、疑いようの無い事実なのであるが。


『波乱万丈の即売会』 了

担当マスターより

▼担当マスター

凪社奏真

▼マスターコメント

 こんにちは、代筆担当の革酎です。
 今回は凪社奏真マスター体調不良の為、下名が代筆をさせて頂く運びとなりました。

 実は途中まで凪社マスターが書かれていたリアクションに、下名が追記するという形で代筆させて頂いたのですが、文調が全然違うので、どこから下名が書き始めたのかがもろ分かりですね。
 ここは是非、凪社マスターには早く元気になって復帰して頂き、リベンジということで、再び皆様方を楽しませて差し上げるリアクションを書いて頂きましょう。
 どうぞ皆様、凪社マスターの復帰に向けて、暖かいご声援の程、宜しくお願い致します。

 尚、今回は代筆の為、称号及び個別コメントは無しとさせて頂きます。あしからず、ご了承くださいませ。

 それでは皆様、ごきげんよう。

▼マスター個別コメント