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イルミンスールの割りと普通な1日

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イルミンスールの割りと普通な1日

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●午後からは幻獣の飼育です!

 飼育員が幻獣の飼育についての諸注意を行っていると、突然快晴だったにもかかわらずあたりには暗雲が立ち込めたかのように暗くなった。
 そしてゴウッと送れて突風がやってくる。それはまるでジェット機が低空飛行しているかのような音と暴風だった。
 真っ先に気がついたのはフレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛い)茅野菫(ちの・すみれ)だ。
「イース!」
 二人の声がハモる。
 それはロック鳥の子供だ。
 フレデリカと菫の声が届いたのか、イースと呼ばれたロック鳥の子供は広場の開けているところにゆっくりと止まる。
 それでもその巨体ゆえか、着地するときですらぶわぁっと風が巻き起こる。
 巨体のイースに目を見開いて、アゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)は驚いている。
「ソフィちゃん、驚かせちゃった?」
 フレデリカがアゾートに声を掛ける。
「この子、これでもまだ子供なのよ。だから許してあげて?」
「うん。こんなに大きいのに、まだ子供なんだ」
 アゾートは素直な感想を漏らす。
「こらっ、ちょっと重いってばぁ!」
 菫はいち早くイースのところに向かっている。
 口では重いなどと悪態をついているが、やはりその表情は穏やかな笑みを浮かべている。
 自体が収束してからは、ほかの生徒が一目散に駆け出し最早諸注意などしている雰囲気でもなかったのだった。



 騎沙良詩穂(きさら・しほ)は自分のワイルドペガサスの世話をしていた。たまには見聞を広めなければというのが建前だが、本音の半分は課外授業に参加すると単位が貰えるからだ。
 そしてもう半分はワイルドペガサスの飼育から学び、絆を深めこれから出現してくるであろう最新型のイコンに負けずに戦っていけるようになるためだ。
 そんな詩穂の所に、エリセル・アトラナート(えりせる・あとらなーと)はアゾートを連れてやってきていた。慣れた手つきでワイルドペガサスの世話をしているから、教えてもらいにきたのだろう。
「あの、ワイルドペガサスの世話の仕方、教えてもらってもいい?」
 アゾートが詩穂に尋ねた。エリセルはワイルドペガサスを見てアゾートの後ろに隠れてしまった。
「いいよー。まずは……」
 そういって、詩穂はワイルドペガサスと視線を合わせる。
「やっぱり、まずはこうやって相手に自分に害意がないことを伝えないとダメだね。動物もそうだけれど急に抱きついたりしたら暴れちゃうよ」
「な、なるほど……」
 エリセルがアゾートの後ろに隠れながら頷いている。
「後は動物にするように、毛並みを整えたり餌をあげたり、一緒に遊んだり、かな?」
 それから詩穂は銀の櫛を取り出しワイルドペガサスの毛を梳いていく。ワイルドペガサスは目を細め詩穂の行為を素直に受け入れている。
 アゾートは無言だがしっかりとその行動を目に焼き付けるようにしている。エリセルもだいぶ緊張が解けたのか、ワイルドペガサスを直視できるレベルまでなっていた。
「簡単に説明したけれどこんなところかな? できそう?」
「は、はい! 頑張ってみます!」
 エリセルが答えた。詩穂も嬉しそうに頑張ってねと言って二人を見送った。
「さて、ちょっと散歩でもいこうか?」
 二人が去った後、詩穂はワイルドペガサスに跨り空を翔るのだった。

 ぎこちないながらも、何とかエリセルとアゾートはワイルドペガサスの身の回りの世話をすることができた。
「ふふふ〜♪」
 アゾートと仲良く喋っているエリセルは気がつかない。
 ワイルドペガサスの後ろからギラリと瞳を光らせて近寄っている、トゥスクリィ・グラナトメット(とぅすくりぃ・ぐらなとめっと)に。
 じりじりとワイルドペガサスに近寄り、バッと飛び掛った。
「ああ、たてがみ良い匂い」
 首もとにがしっとしがみついて、ワイルドペガサスのたてがみに顔をすりすりしている。
 それに驚いたワイルドペガサスは前足を上げ、トゥスクリィを振り落とそうとする。
「きゃ!」
 短い悲鳴を上げ、エリセルとアゾートは事態に気がついた。
「ああ、うう……どうしよう……」
 エリセルは予想外の出来事にあたふたしている。
「全くあなたは……」
 トカレヴァ・ピストレット(とかれう゛ぁ・ぴすとれっと)がトゥスクリィをワイルドペガサスから引き剥がした。
 自分の当番のワイルドペガサスはすでに世話をし終わっており、エリセルがちゃんとやれているかどうか確認しに来たところでこの事態に遭遇したようだ。
 そして、今度は四人で気が立ってしまったワイルドペガサスを宥めるのだった。