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決戦、紳撰組!

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決戦、紳撰組!

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終章



00


 無事に鎮火した池田屋、そして紳撰組屯所の火災は周囲に広まることはなかった。
 少しの火傷と怪我を負った近藤 勇理(こんどう・ゆうり)の部屋に、その時橘 舞(たちばな・まい)ブリジット・パウエル(ぶりじっと・ぱうえる)が訪れていた。『新撰組』のマイト・レストレイド(まいと・れすとれいど)近藤 勇(こんどう・いさみ)も伴っている。
 布団から起き上がり姿勢を正した勇理は、勇をまじまじと見据えた。
「――『新撰組』の皆さんには、様々な面でご指摘いただいたというのにこのていたらく……」
 頭を垂れた勇理の前で、達観したような表情で勇が首を左右に振った。
「信じることは、悪いことではない。何度も信じて、そして何度も後悔してきた。ただその轍を、味逢わせたくなかったというのは、本心だけどな」
 組織は違えど、局長同士何か通じ合うことがあったのだろう。二人は目と目で会話をしているようだった。
 その様子を隣で眺めながら、舞が両手の指を組んで不安そうに、言葉をかける。
「都子さんはどうなったんですか?」
 討ち入り以来、勇理は何度か吐血した。
 だが、それがパートナーロストによるものなのか、荒れた扶桑の都の流行病なのか、ストレス性なのかは分からない。
「副長が、介錯したとは聴いている」
 だから肺を患い吐血するようになったのは、その弊害なのだろうと、勇理自身は考えていた。けれど、どこかで、生きていて欲しいと思う気持ちがあるのは、間違いがなかった。それは紳撰組の局長としては、間違った考えなのかも知れなかった。けれどパートナーとして、都子の闇を救ってやれなかったことを、後悔しない日はないのも事実だった。
「梅谷の遺体も、都子の遺体も、みつかっていないの?」
 ブリジットの率直な問いに、咳き込みながら勇理は頷く。
 都子がどうなったのか土方 歳三(ひじかた・としぞう)達経由で耳にしていたマイトは静かに俯いた。
 白い手ぬぐいに、勇理が吐血した。
「じゃあ、生きている可能性もあるのね」
 確かに致命傷を負わせたか不安に思っている勇理は、ブリジットの言葉に顔を上げた。
「分からない――ただあの出血量と傷だから……」
 おそらくは亡くなったのだろう。
 少なくとも勇理はそう考えていた。
 ただ――それでも良いと感じていた。この、扶桑の都を思う気持ちは同じだったのだから。それを少なくとも確認できたのだから。
「どうして、手を下したんですか?」
 その時、ある種残酷な問いを、舞いが投げかけた。
 暫し逡巡した後、勇理は口元の地を拭いながら微笑む。
「逆の立場でもそうしたからだ。――この諍いは、反転していても決しておかしくはなかった」
「だけど、大切だったんでしょう?」
 舞の瞳に、憐憫が宿る。勇理は、その眼差しを、目を伏せてみないことにした。
「私は、この都を守る、そのつもりだから」






 『扶桑』が噴花したのは、その数日後のことだった。
 ――初めは、目眩かと思った。
 大地が揺れている、その事実を人々が確認したのは、灯籠や花瓶が音を立てて破壊されたからだった。
「なんだよこれは」
 桜の花弁が舞い散る光景に、副長の棗 絃弥(なつめ・げんや)が声を上げる。
 屯所の扉を開けるとすぐに、揺れよりも煙る花弁の姿に紳撰組の隊士達の視線が絡め取られた。
「落ち着け!」
 いつもの紳撰組の装束ではなく、療養用の和装で姿を現した近藤 勇理(こんどう・ゆうり)が一喝したのはその時のことだった。
 凛とした勇理の声に、皆が動作を止めて視線を向ける。
 その目の前でも、何人かの隊士達が、桜の花びらに絡め取られるように姿を消していった。
「――噴花だろう。このままでは、皆が飲まれてしまう。私達の使命は、扶桑の都を守ることだ。分かっているな?」
「はい!」
 皆が規律正しく応えると、一時咳き込みながら、勇理が顔を上げた、
 口元を拭った掌には、血の色が滲んでいる。
「どうやら桜の花びらに捕まると、消えてしまうらしいな――屋内待避だ。扶桑の都の民を守れ!」
 局長のその言葉に、紳撰組の隊士達は皆は、走り出した。






 扶桑の都に散っていく花びら――。
 それを見ている女が一人、楠都子だった。
「綺麗……」
 彼女は、どこか恍惚とした表情で、その薄紅色の花弁に手を伸ばしたのだった。

 それが都子の掌を絡め取ったのか否かは分からない。
 けれど心を絡め取ったのは間違いがなかった。

 一方八神 誠一(やがみ・せいいち)が、梅谷才太郎と約束したその場所を訪れたとき、その居室にはただ桜の花びらが散っているだけだった。





担当マスターより

▼担当マスター

密巴

▼マスターコメント

この度は、遅くなりまして、誠に申し訳ありませんでした。
密巴です。
ご参加いただいた皆様、並びに読んで下さった皆様、本当に有難うございます。
また、様々な点でお世話になりました、
かのMSと識上MSそして、近藤勇理の絵を描いて下さったあるうぇ様、
本当に有難うございました。

今回も様々なアクションを頂き、書いていて本当に楽しかったです。

初めての連続ものの、それも最後と言うことで緊張しながら書いていたのですが、
なんとか書き終わり安堵の気持ちでいっぱいです。
心残りなのは、思わぬ所で急激に日々の生活スタイルや体調がかわり、
コメントや称号などをお送りできなかったことです。
本当にすみません。

最後に、また繰り返しになりますが、本当にご参加いただき有難うございました!
紳撰組のお話を書かせていただけた事、誠に大切な思い出になりました。
また機会がありましたら、ご参加いただければ幸いです。

▼マスター個別コメント