なし

リアクション

　　　決勝戦

『決勝に進出した選手は三名。グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー選手のＨＭＳ・レゾリューション。セレンフィリティ・シャーレット選手のクェイル。そして辻永翔選手のストライクイーグリット。この三名の総当たり戦で、より多く勝った者を優勝とする！』
　アリサの興奮を隠し切れぬ声が、会場内に響く。と、割れんばかりの歓声が三人を襲った。
　さすがの翔も緊張した面持ちで――、
「よおしっ、やるぜ！」
　――訂正。やる気満々だ。

○第一試合　ＨＭＳ・レゾリューション−クェイル

　ラウンドガールの特権とばかりにセレアナ・ミアキスは観客席を降り、大鋸の傍を陣取った。大鋸は、聊か居心地が悪そうだ。
　正直言えば、セレン自身、ここまで来るとは全く思っていなかった。何しろ、教導団のイコン戦闘演習でも合格点ギリギリの成績だったりする。
　が、この大会でセレンは大いに自信を持った。
「取り敢えず、この戦闘方法で間違いなし！　ってことよね！」
　セレアナは苦笑した。

「ファイッ！」
　大鋸の掛け声と共に、己の作戦に自信を持ったセレンは猛ダッシュをかけた。クェイルがたちまち距離を縮める。
　だが、グロリアーナは敵の攻撃を大人しく待っているような女性ではなかった。
『ＨＭＳ・レゾリューション、大型ビームキャノン！』
「ヒット！」
　しかしセレンは諦めない。一歩も引かない。
『クェイル、アサルトライフルを撃った！　しかしこれをレゾリューションは避ける！』
「待ってました！」
『クェイルの必殺技！　ライフルとバズーカの乱撃だ！』
　ＨＭＳ・レゾリューションは弾を受けるたび、堪え切れずに後ろへ下がっていく。
『しかしレゾリューションも負けてはいない！』
「ダークネス・パーティクル・キャノン！」
『必殺技の炸裂！！　クェイルの防御を吹っ飛ばす！』
「まだまだあ！」
　セレンは弾切れを起こしたライフルとバズーカをぶん投げた。だが、グロリアーナは冷静にそれを捌き、ＨＭＳ・レゾリューションが勝利した。

　　○ＨＭＳ・レゾリューション−クェイル×


○第二試合　クェイル−ストライクイーグリット

　十分の休憩を挟んで、次の試合が行われることになった。
　クェイルはアサルトライフルを葛葉　杏から借り受けていたが、今の試合で破壊されてしまった。
「……ま、まあ、あなたの優勝に役立ったと思えば……」
　バラバラになったライフルを見下ろし、杏は引きつった笑みを浮かべる。
　こういった大会において、ライバルに己の武器を託すのは、定番だ。それで壊されて、どうして文句を言えようか。そう、杏は自分を納得させた。
　今度はアサルトライフルに加え、バズーカもない。高峯　秋と天貴　彩羽に借りに行ったセレアナは、さてどうやってお願いしようかと考えた。
「あの子、壊し屋だからねえ……」
　多分、無事ではすまないだろう。

　桐生　理知はお守りを握って目を瞑った。これは、いつも戦いの前に行う儀式だ。この時には大切な風景を思い浮かべ、この景色を必ず守ると誓う。
　今は翔の顔を思い浮かべた。
　お守りを握る手がじっとりと汗で湿っている。

『試合開始と同時に、クェイルとストライクイーグリットが走り出した！』
　ストライクイーグリットがビームサーベルを振り下ろそうとしたが、そこにクェイルが突っ込む。
「何て力技だ！」
　翔はクソ、と呟いたが、すぐに次の行動へ移る。
　ストライクイーグリットが空高く飛び上がり、直滑降でクェイルへ突っ込む。
『クェイル、まともに食らって吹っ飛ぶ。だがそのまま、アサルトライフルとバズーカの乱撃！　ストライクイーグリットが吹き飛ばされる！　大丈夫か！？』
「翔くん！！」
　理知はお守りを握ったまま、ストライクイーグリットから目を離さなかった。今必要なのは、ただ祈ることではない。言葉にし、思いを翔へ届けることだ。それが彼の後押しに少しでもなれば。
『ストライクイーグリット、立ち上がってビームライフル！　クェイル、避けた！』
「負けるかあ！」
「こっちだって！！」
　翔とセレンが怒鳴った。それに呼応するかのように、ストライクイーグリットはビームライフルを、クェイルはバズーカを投げた。
　二体の中央で爆発が起こり、共に地面に倒れる。
「クェイル！」
「ストライクイーグリット！！」
『二体とも動かない！』
「セレン！　どうなの！？」
　セレアナがセレンの横顔を見つめる。真っ青になって、唇を噛んでいる。
　大鋸が二体のダメージを調べる。
「翔くん……」
　もはや理知に出来ることは、祈るしかない。
「引き分けだ！」
　客席がどよめいた。この期に及んで引き分け。この時点でクェイルの優勝は消えた。だが、次の試合で翔が勝てば――？

　　クェイル−ストライクイーグリット　引き分け