天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

とりかえばや男の娘 三回

リアクション公開中!

とりかえばや男の娘 三回
とりかえばや男の娘 三回 とりかえばや男の娘 三回

リアクション


5 封印を解除せよ 
「つまり、やはりヤーヴェを倒すには、聖剣の封印を解くしかないという事ですね」
 蒼天の書 マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)の言葉に芦原 郁乃(あはら・いくの)はうなずいた。
「そうみたいね」
 そういうと、郁乃は竜胆に言った。
「竜胆、私に宝玉をくれない?」
「……封印を解かれるのですか?」
 竜胆は膝の上に藤麻を乗せたまま郁乃を見た。
「もちろん! ヤーヴェにとどめを刺して、二人に穏やかな日々を贈ってあげる」
「ありがとうございます。では、お願いします」
 そういうと、竜胆は宝玉を郁乃に渡した。
「まかせて!」
 答えると、郁乃は石像に向かって走り出した。
「では、露払いはあたしの役目ですね」
 言葉とともに、マビノギオンが郁乃の後を追っていく。
 そして、神の目を唱えた。物陰からライフルで郁乃を狙っていた奈落人の姿が露になる。マフィアの捨て石という感じの男だ。
「ちっ!」
 奈落人はライフルをマビノギオンに向けて発砲した。マビノギオンは、歴戦の防御術でそれを避けると、バニッシュを展開。神聖な力が奈落人を撃つ。奈落人は悲鳴を上げてその場に倒れた。

 石像にたどり着くと、郁乃はさっそく宝玉を捧げた。すると、どこからか声が聞こえて来た。

 ……汝は聖剣を求めるものか?

「そうよ」

 郁乃は答えた。

 声は言う。

 ……聖剣を持つ者はそれに値する者でなければならない。汝にその資格があるか?

「多分……あると思うわ……そんな事自分では言い切れないけど」

 ……では、汝が聖剣に値する者かどうか、確かめさせてもらおう。

  まず、問う。汝にとって生きる上で一番大切な事はなにか?
 
「ええ?」

 郁乃は少し面食らったようだが、しかし、少し考えて、答えた。

「愛するときに、その一部じゃなくて全てを愛すること。わたしは恋人や友人を愛してる。そして、出会いをたくさんの思い出を作ってくれたこの世界を愛してる」

 ……では、生まれてから一番嬉しかった事はなにか?

「そうね。心から愛する人ができたこと。心から愛する人ができたことで、わたしが生きる世界は彩りを増した気がするんだよ」

 ……最後の問いだ。生まれてから一番悲しかった事はなにか?

「それは……夢の中とはいえ、恋人や友人に「嫌い」だと言われて一人になったことかな。みんなから拒絶されることは自分の生きるこの世界から拒まれることと同じ……それは恐怖以外の何物でもない……くさいというか、人にはそうそうは聞かせられない内容だけど
本当にそう思うんだ。」

 すると、声が答えた。

 ……汝の言葉、胸に響いた。聖剣の欠片を受け取るがいい。

 『言葉』とともに石像が光り、コウモリの翼が天使の翼にかわる。そして、一人の美しい天使が錆びた聖剣を郁乃に手渡して言った。

「これを5つ集めよ。5つで本物の聖剣になり、もはや魔剣になる事はない。6本目からは、聖剣の力に変わる。本数が増えるごとにその威力は増していく。9本揃った時聖剣は本来の力を取り戻すだろう」

 それだけ言うと、天使は姿を消し、石像も消えて無くなってしまった。剣の守護者である石像達は、用事が済むと消えてしまうようだ。

「5本で本物の剣に変わる? つまり、本物の聖剣を手に入れるには封印を少なくとも5つ解かなきゃいけないってことかな?」
 錆びた聖剣を見ながら郁乃が言うと、
「そういうことでしょうね。5つの封印を解けばその錆もとれ、真の双宮の剣になるということでしょう」
 と、マビノギオンがうなずく。
「5つか……」
 郁乃はたたずむ石像達を見つめてつぶやく。


 郁乃の達のやりとりは、竜胆達のところまで聞こえていた。
「少なくとも5つの封印を解かなくては聖剣にならないのですか……」
 竜胆がため息をつく。
「後、4つ……先は長そうですね」
 すると、カレンデュラ・シュタイン(かれんでゅら・しゅたいん)が竜胆の肩を叩いて言った。
「大丈夫だよ、リュンリュン。残りの封印は俺たちが必ず解いてみせるからさ」
「そうだよ、僕たちをもっと信用してよ」
 リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)が言う。
「そうですね。みなさんなら必ず封印を解いてくださいますよね」
 竜胆はうなずき、笑顔を見せた。
「もちろん。と、いうわけだから、リュンリュン(竜胆)、俺たちにも宝玉をくれるかい?」
「はい。でも、くれぐれもお気をつけて……」
 そう言って、竜胆がカレンデュラに宝玉を渡すと、
「ところで、封印を解くには3つの質問に答えなきゃいけないみたいだね」
 と、リアトリスが言う。
「答えは用意してあるかい?」
 すると、カレンデュラは答えた。
「1 リュンリュンに出会えたこと!!
 2 リュンリュンみたいなかわいい子にあえたこと!!
 3 リュンリュンが牢屋に閉じ込められたこと!!」
 その言葉に、竜胆が赤くなった。
「……バカ。下心が見えすぎているよ」
 と、リアトリスが苦笑。そして、
「さあ、とにかく行くよ! ヤーヴェから藤麻さんを開放しよう! ヤーヴェよりも速く聖剣を手に入れないと!」
 と、駆け出す。
「よっしゃ!」
 カレンデュラは頷くと、リアトリスの後を追って走り出した。心の中では、こう叫んでいた。
「リュンリュンに辛い思いをさせやがって! ヤーヤー(ヤーヴェ)の野郎ゆるさねえ!! 捕まえてぶん殴って、封印してやる!!」

駆け出した二人に向かって、奈落人達が襲いかかって来る。中世の西洋の騎士団のような風体をした連中だ。カレンデュラは碧血のカーマインでライトニングブラストを使用して多数撃破を狙った。騎士達が次々に倒れて行く。騎士達は弓を構えた。矢がカレンデュラに向かい、雨のように降り注ぐ。カレンデュラは柱隠れて弓を避け、そこから碧血のカーマインを撃った。
 一方、リアトリスは、ドラゴンアーツと、鬼神力、ヒロイックアサルト、超感覚を使用してあらかじめ自分を強化しておいた。そのために、右目は竜の瞳になり、頭に短刀のような角が生え、両手に織田家の家紋が浮かび上がり、大きな犬耳と1mもある長い犬の尻尾が生えた姿になっている。その姿でフラメンコを踊り、巧みに敵の矢を避けていった。
 矢がきかぬと見るや、敵は剣を持って襲いかかって来た。リアトリスは、戦法はフラメンコを踊り敵の攻撃を避けながら即天去私とサイドワインダーを組み合わせた技で攻撃をする。光の矢が裏拳で飛ばされて、光の矢が蛇に変わり敵を暗い付くように刺ささった。
 倒れた敵に向かってリアトリスが言う。
「蛇光神楽・瞬牙(じゃこうかぐら・しゅんが)だ」

 こうして、石像にたどり着くと、リアトリスはさっそく宝玉を捧げた。すると、先ほどの郁乃と同じように石像から質問がなされる。
 リアトリスは答えた。

「最初の質問の答えは、愛する人を支え、支えられ共に生きていけること。
 二つ目の質問の答えは、家族が増えたこと(家族とは契約したLC達の事である)
 三つ目は、友人や仲間と喧嘩してしまったこと」

 すると、石像は言った。
 ……汝の言葉、胸に響いた。聖剣の欠片を受け取るがいい。


「後、3本だ」
 セルマ・アリス(せるま・ありす)が言う。
「竜胆さん。俺にも宝玉をもらえますか?」
「行って下さるのですね」
「もちろん。過去2回とも竜胆さんに関わっている故、最後までお供します!」
「ありがとうございます。でも、お気をつけて」
 竜胆は、そういうとセルマに宝玉を渡した。
「行きますか?」
 リンゼイ・アリス(りんぜい・ありす)がセルマにたずねた。
「うん。一刻も早く聖剣を手に入れてヤーヴェを倒そう。もう竜胆さんに危険が及ばぬように。彼が辛い想いをしなくていいように」
「セルがその覚悟なら、私もついていきます。私は、セルも含め、聖剣の入手に向かう方々の護衛を務めましょう。私は私で侍修行にいい機会を貰っているようなものですし、これでも竜胆さんに恩義があるとは思っていますので、ここで彼を守ることで恩義を返すとしましょう」
「よし」
 セルマはうなずくと、竜胆から宝玉をもらって封印を解くべく石像をめざした。
 野武士風の奈落人達が、刀を振るって襲いかかって来た。
 リンゼイはつぶやいた。
「奈落人さん達は生前悪人だった方なのですね。それでは遠慮は無用ということで」
 そして【スクラマサクス】を構え、【実力行使】の体術で奈落人達に迎え撃っていく。
 自身も傷つきながら、リンゼイは次々に奈落人達を倒していった。しかし、野武士は雲霞のごとく増えていく。
「きりがありませんね」
 リンゼイは刀を収めると、野武士達にむかって【ヒプノシス】を唱えた。野武士達の動きが鈍くなり、一人一人崩れ落ちてきく。そして、みな大いびきをかいて眠ってしまった。
「よかった。効いたようですね」
 それから、リンゼイは野武士達の足の腱を斬っていった。
「後から起き上がってこられても面倒ですしね」

 一方のセルマは無事に石像の元にたどり着いたようだ。そして、宝玉を捧げて質問に答える。

 ……汝にとって生きる上で一番大切な事はなにか?

「冒険に溢れてたり、社会的に認められてるなんてことなくっていい。俺にとって1番大切なのは当たり前の日常を守ることだ。」

 ……生まれてから一番嬉しかった事はなにか?
「大切な人と一緒になれたこと。これからもこの幸せが続くように尽力したい」

 ……最後の問いだ。生まれてから一番悲しかった事はなにか?
「思い出せないことがある……俺の過去に本当に悲しくて悲しくて仕方なかったことがその中にあったらしい。それを忘れてしまったことが今の俺の生まれてから1番悲しかったことだ」

 実は、セルマは過去パートナーから昔失くしたぬいぐるみのことで話があり、それを聞いてもまるで記憶になかったことがあった。本人の意思に関係なく、脳が記憶を消してしまった状態のようだ。

「これで大丈夫かは分からない。けれど正直に答えた。もし、聖剣を手に入れたら、他の聖剣を入手した人達と協力してヤーヴェを討つ」

 すると、声が答えた。

 ……汝の言葉、胸に響いた。聖剣の欠片を受け取るがいい。

 こうして、セルマは3本目の剣を手に入れた。