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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 2/3

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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 2/3

リアクション



雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)

つまんないわねー。
男と男でいちゃいちゃされたら、私が遊びにくわわれないでしょ。
ほんとに指をくわえて眺めちゃうわ。
男同士のアレって、アレねー。
妄想や漫画だとそれなりにみられても、現物は、ムリがあるわ。
どんなにきれいな顔してても、って、目の前のコレはどっちもそんなにきれいな顔してないけど、にしても、においがかげる至近距離でみてても、なーんにも感じないわ。
地球外のエイリアンの儀式をみてるみたい。ブタの交尾の方が、見世物としては、まだHな感じがするかも。
ねぇ、ブタさんの○ニスは螺旋状になってて、ドリル並みに高速回転するのよ。人間には、絶対できない芸当ね。どなたか一度ためしてごらんになられたら。もちろん、箱入り娘で、慎み深いレディの私は、ご遠慮するわ。アッハハハハハ。○ニスってなーに? 誰かリナにおせーてぇ。なーんて。
あーあ。あんまり退屈だと、ろくなこと考えないわね。
なんで私が、素敵な殿方たちの秘め事(皮肉よ)を鑑賞しなくちゃいけなくなったかというと、そうそう、ここは刑務所なのよ、それがこの状況では唯一の救いね。私、犯罪のにおいがするところって大好き。私の生まれ育ったおうちもそうだったわ。犯罪者をのせた血まみれのゆりかごなんて、素敵よね。だから、舞台には文句はないの。問題は上演されている演目よ。
私のごひいきの俳優のシュリンプを観にここまできたのに、彼ったら、永久に死体役専門の俳優さんになったのねぇ、刑務所でサーベル持って、犯罪者が一人芝居…どんな演技をしようとしていたのかしら。
私のパートナーのベファは、命がなくても、少年犯罪王(笑)の坊やにいたずらされた挙句、コワーイ不良のみなさんにボコボコにされちゃってても、それでも、シュリンプの青あざだらけの体に興味があるらしくって、彼の死体を裸にしてどこかへ持っていってしまったけど、いったい、全裸の死体となにするつもりなんだろうねぇ。
死○や解剖したりするわけ?
グロテクスというか耽美ね。ごめんなさいね、私には、その趣味はないの。
ゆりかご内で、いつかどっかでみた連中と会った気もするし、今日はなんだか探偵したい気分だし。
シュリンプの死に秘められた謎を解いてあげてもいいかな、ぐらいの気持ちで彼の住処だった独房にきたの。
彼の独房があるブロックって、ゆりかごの住人のアレな人ばかりが収容されてる区域で、Gay cruising spot、つまり、ハッテン場だったのね。
あーら、差別用語じゃないわ。
実際、セクシーでスゥィートな女の子が一生懸命話しかけても、ここの人たちは、私を空気扱いして、そのうえ、目の前で、男同士ではじめちゃうのよ。
せっかくだし、めずらしい見世物だと思って見学させてもらってるとこ。
「ねぇ、あんたち、たまには女の子と遊んでみない?
いつも、凸同士じゃ飽きるでしょ。
私が未知への扉になってあげるから、どなたか鍵穴に鍵をはめる勇気がある人はいないのかな。
特別な準備はいらないわ。
実は、私、ぱんつはいてないのよねー」
スカートの端をあげて誘ってあげても見向きしないなんて、ガチって本当に自分の信念に忠実なのね、やっぱり、どんな分野でもまじめすぎる人はつまんないわ。
「俺はそんなつもりはないんだ」
「最初はみんなそう言うのよ。一度、試してみればわかるわ。
案外のノンケのつもりでいた人がハマっちゃうもんなのよ。
あの機晶妃の子とあたしとどっちがよかったか、終わったら感想をきかせて、ね」
「待ってくれ。おい。やめろ」
おや。痴話喧嘩かしら。
すぐ側の牢屋の中で男同士のカップルが揉めてるみたいね。
人の喧嘩を眺めるの、私、キライじゃないわ。
派手にやって、いっそ修羅場になってくれればいいのに。
牢では、いかにもそれっぽいたおやかな男の子と、なんとなく見覚えのある茶髪の子が、寝台の上でもつれあってた。私は、扉の開けっぱなしの牢に入っていったわ。
「あーら。楽しそうね。
お取込み中、悪いけど、私、あなたを知ってる気がするの。
誰だっけ」
「俺はイルミンスール魔法学校の七尾蒼也(ななお・そうや)だ。百合園推理研のメンバーとここへは調査にきたんだが」
「あー。そうそう。女子ばっかりの集まりの中にいたわね、たしかに。
ハーレムに飽きて、こっちに手をだしたってわけ。
だったら、思いっ切ってやっておしまいなさい。こっちの水は甘いかもしれないわよ。フフフ」
「勝手なこと言うなよ!」
ガチの子に抱きつかれ、ハーレムの王子様が情けない顔をしてる。
もしかして、私に助けて欲しいの。ごめんなさいね。ムリな相談よ。だって、自分に関係ない他人の不幸って、私、大好物なの。
「うわぁぁぁぁ」
私の方をむいてよそ見をしていたから、彼はベットに押し倒されちゃったわ。
さぁ、ここからどう料理されるのかしらねぇ。
シャツだの、ズボンだの、脱がすのに手間取るなら、手伝ってあげるわよ。

三船 敬一(みふね・けいいち)

コリィベルについて知るためには、当然、情報収集が必要だからな。
俺はスタッフとして内部に潜入することにしたんだ。
パートナーのエアハルトは、【狂血の黒影爪】で俺の影に潜んで所内に入り、そこからは影から影へと移って調査するらしいな。俺はスタッフとしていわば表の顔を探るので、エアハルトがそうして隠された裏の部分を調べるのは、いい作戦だと思う。
ゆりかごの揺らし手にスカウトされた俺は、見習いスタッフとしてコリィベルに配属された。
まず、俺が任された仕事は、所内の巡廻だ。
パトロールなんてたいしたものではなく、新人の俺がコリィベルの施設に慣れるためには、この仕事が最適だという配慮らしい。ありがたいな。
先輩スタッフたちと五人で決められたコースを歩いていたんだが、さすがコリィベルとでも言おうか、行く先々で暴行、恐喝、あわや殺人といったトラブルが発生しており、先輩たちはその対応に一人、二人と抜けてゆき、コースの半分も進まないうちに俺は、一人きりなってしまったのだ。
「三船は教導団の出身だから、普段から鍛えられているだろうし、しっかりしているよな。
ゆっくり先に進んでいてくれ。俺たちはすぐに追いかける」
とかなんとか言われて、俺は一人で歩いているんだが、先輩たちこそ大丈夫かな。
この刑務所にいる連中は更生不可の烙印を押されているだけあって、一クセも二クセもある曲者ばかりらしい。さっき通路でみた、喧嘩をしていたやつらも、どこかから調達したらしい剣や銃で武装していたし、本当に危険だな。
「助けてくれぇ」
牢の中から悲鳴がした。しかも、扉は開いている。誰が開けたんだろうか。まったく、コリィベルは怖ろしい場所だよな。
例え、囚人同士の喧嘩だとしても助けを求める人を放っておけない。俺は、標準装備として渡されたマシンガンを構えて、牢にむかった。
中には三人がいたんだ。寝台の上に男が二人がいてもみあっている。後の一人は女で、二人が争うのを寝台の横に立ってにやにやと笑いながら、眺めていた。
「おまえら、ここでなにをしている。いまの悲鳴はなんだ」
「あーよかった。ようやく、まともそうな男の人がきてくれて、私、ほっとしたわ。
スタッフのお兄さん、毎日の激務でお疲れでしょ。
私が癒してあげるから、どこかでそこらへんの空いてる牢屋で、休憩しましょう。
私、こんなに若くてかわいいのに、テクニックはたしかなの。お兄さん、とけちゃうわよ。
お代はいらないから、お礼にここのお話をいろいろ聞かせてくれるとうれしいわ。
亡くなったシュリンプのこととか。
私、ミステリやサスペンスが好きなの。
お兄さんの着てる制服も素敵よ。刑務所の看守って大変よねー」
女が近づいてきて、首に手をまわし、背のびをして俺の唇を奪った。
「お、おい」
あわてて俺は女を押し離す。
「なぁーに。照れなくていいじゃない。キスは挨拶よ。
挨拶の次は自己紹介よね。
私は、百合園女学院の雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)
今日は、お芝居をみにきたんだけどね。
ごひいきが死んじゃったの。
お兄さんのお名前は」
「俺は三船 敬一(みふね・けいいち)だ。教導団に所属している。ここでは見習いのスタッフだが」
雷霆から目そそらし、俺は寝台に視線をむけた。
男同士の争いはまだ続いている。
「スタッフの人。早く助けてくれよ」
「了解した」
俺は寝台にいる二人のうちの片方を背後から羽交いじめにした。こちらの男がもう一人の服を執拗に脱がそうとしているようにみえたからな。
「ちょっと、離しなさいよ。
なんであたしがこんなことされなきゃなんないの。
ここは、あたしの部屋よ。あんたなんか呼んでないわ。さっさとでていって」
俺におさえられた男は、声を張り上げ、激しく体をよじって逃げようとする。
なるほど。
この口調で俺は納得してしまった。
やつはあちらの趣味の持ち主らしい。
嫌がる相手をここに連れ込んで、襲いかかっていたわけだな。
つまりこれは強姦未遂だ。
「離すわけにはいかないな。
さあ、俺がこいつをおさえている間に早くここをでるんだ」
「あ、ああ。けど。
助けてくれてありがとう。
でも、俺は、まだ彼に聞きたいことがあるんだ。
俺は七尾蒼也(ななお・そうや)
百合園推理研と協力してコリィベルを調査している。
その彼は、シュリンプ殺害事件についてなにか知っているみたいなんだ」
被害者である彼、七尾は、どうやら探偵らしいな。百合園推理研とは過去に協力したことがある。優秀な警察犬のいるチームだったよな。
「だったら、協力しよう。
俺もここいる目的は、七尾と同じだからな」
俺は腕に力を込めた。
「おまえが知っている、シュリンプ殺害事件についてのすべてを話してもらおうか」
「痛い痛い痛い痛い。首が折れるわ。離してよ」
「うふふふふふ。どうせ、拷問するんなら、もっと本格的にやりましょうよ。なにか、いい道具はないかしら」
男は悲鳴をあげ、再び雷霆が俺の体にまとわりついてくる。うっとりした表情で俺を見上げ、色っぽく息を吐く。
こんなところで俺はなにをしているんだ。
細められた雷霆の瞳をみていたら、一瞬、いまの自分の置かれた状況を忘れかけてしまった。
いつでもヘシ折れそうな首を両腕で圧迫して、傍らではグラマラスな美人がほほ笑んでいる。
「おい。それ以上やると彼が」
七尾に止められて、俺は我にかえった。
絞めをほどき男を解放して、雷霆を突き放す。
「キャッ。
なーんちゃって。
惜しいわね。もうちょっとで殺すとこだったのに」
床に尻もちをついた雷霆は、いたずらっぽく笑い、舌先をだした。
こいつは、すごく怖しい女だな。
七尾は、倒れて苦しがっている男の介抱をしている。俺も男の横にしゃがんで謝罪をした。
「すまなかった。やりすぎたな。
俺は、ただ情報を知りたかっただけなんだが、力を入れすぎてしまった」
「うっさいわね。いまさら、謝っても遅いわよ。もう、あたしの側に寄らないで。暴力ゴリラ」
男は身をよじり俺から離れ、上体だけを起こした格好のまま、七尾にしがみつく。
「いや、あの、さっきの続きは」
「ええ。それはまた今度でいいわ。あんたはあたしの命の恩人だし。
あなた、優しいのね。
そんなに知りたいんなら、シュリンプがどうしてあんなめにあわなくっちゃいけなくなったのか、原因を知ってるはずの子のところへ案内してあげる。
本当に危険だから、あたしは途中まで連れて行くだけよ。
ここの秘密を知りたいなら、覚悟はいいわね」
少し間をおき、七尾が頷くと、男は立ち上がり、牢をでた。
男と七尾の後を追って、俺、そして雷霆がついてゆく。