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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 2/3

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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 2/3

リアクション


茅野 菫(ちの・すみれ) 柚木瀬伊(ゆのき・せい)

ゆりかごで、あたしが超兵器の砲撃の標的になったわけを知りたいの?
ストーンガーデンで死んだ話は、前にしたよね。
ゆりかごの話は、あれより後の出来事よ。
一度死んだからじゃないけど、あの頃、あたしは、世界をコントロールしたい気分だったのよね。
神でも悪魔でも独裁者でもいいけど、そんな感じ。
本当の全世界じゃなくて、会社とか学校とか、自分で支配できる範囲の世界、例えば刑務所とかでもよかったわけ。

あんたがガッコのセンセだとして、担任するクラスに超問題児の生徒がいるとします。
そしたら、どうする。
繊細でか弱い女教師を演じて、まわりをすべて味方につけて庇護、フォローしてもらう。それもありかもしんないけど、いつかはボロがでるよね。あんたがホントにたおやかなおシトなら問題ないけど、毎日、就業時間中、ずっと演技すんのはメンドでしょ。あんたのたくらみを見抜いて、計算高い女って批判する人もいるだろうしね。長くやりすぎると、ストレスで頭おかしくなってキレるかも。
いつ暴発するかもしんない問題児とは距離を置く。くさいものにはフタってわけね。トラブルは回避できるかもしれないけど、あんたの人生、つまんなくないかな。あんた、器小さいね。あたしとは友達になれないタイプだ。せいぜい、草木のよーに人に迷惑かけずにひっそり生きなさい。直接の勝負からは逃げるこういうやつが自分の利益には、目の色かえたりすんのよね。
あたしはね、そいつをよーく見てあげる。弱点を探して、飼いならして利用できるやつなら利用して、ダメなら破滅させるわ。
「コリィベルを知るためには、あんたに会う必要があると思ったのよ」
「ふぅん。で、会って意味はあったのかな」
コリィベルの超問題児天ケ原明は、あたしの思ってたやつとは別人だった。
栗色の髪と深緑の瞳。人好きのするルックスは、血のような瞳の彼とはだいぶ違う。
でも、そんなのはどうとでもなるからアテにならない。
「あんた、あたしが想像してた人じゃなかったわ。
コリィベルを裏で支配するボスで、いろいろヤバイ実験をしてるんでしょ。
ショタ探と狼少女もいるし、あんたの役回りは、彼の担当のはずなんだけどね」
明は首を傾げたわ。
わかってないフリかしら。
「マジェの娼館“牝牛の乳房”の女将マダム・バルサモがここの運営団体にお願いされたの。
内部の実情を調査して欲しいって。
それで、あたしたちマフィア“スコット商会”が動いてるんだけど、はっきり言って、あんた、問題よ。
ゆりかごをヤバいしろもんに改造したり、蒼空第一幻影軍団(B・F・V・C)とかって連中を使って好き放題してるらしいわね。
あんたとこにお話をききにきた人権派の弁護士さん。私の知り合いなんだけどね、彼もあんたの行状について越権行為もはなはだしい、「ゆりかごの手」もここまでは許していない、って言ってたわ」
「時間がないんだ。
きみの望みを教えてくれかいか」
「望みというか、ゆりかごの実質的なコントロール権をあたしが頂くわ。
一般スタッフのところには、あたしのパートナーの菅原 道真(すがわらの・みちざね)が弁護士さんと行ってる。
「ゆらし手」からの業務委任状を持ってね。
けど、実際、ここを仕切ってるのは、あんたとベヨのセレマ団でしょ。
カルトくさいベヨよりも、先にあんたに会いにきたの。
ムダな血を流すケンカをせずに、お仲間とすみやかに、コリィベルをおりて、今後、一切、かかわらないと約束してくれれば、あんたたちの罪を追及する気はありません。
悪い条件じゃないでしょ」
「新カラスはどうする気だい」
「あの子たちは、街の不良の集まりよ。あたしのスコット商会のメンバーと似たようなもん。
誰が支配者になっても、反抗するのが好きなだけなの。
問題ないわ」
明は席を立ち、窓際に行き、外を眺めた。
雪が降ってて、暗い日だったわ。
「ここはきみにあげるよ」
「素直すぎるじゃない。どんな裏があるのかしら」
「ボクの騎士ためには一つあればいいんだ」
背をむけたまま、彼が片手をあげ、部屋は白い光に満たされ、あたしは意識を失ったの。
失神してたのは、時間にしてほんの数十秒。
起きたら明はいなくて、ゆりかごにはまだ揺れがわずかに残ってわ。
地震、なの。まさかね。
あたしは内線のインターホンで、第二スタッフルームにいる道真に連絡した。
「明は消えたわ。それより、そっちはどう」
「主要スタッフはすでにここにはいない。
逃げだした後ね。
こいつはブッ壊される予定だったらしいわ。
さっきのは、たぶん、砲撃よ。二撃めがくる前に、菫、安全な場所に逃げて」
「ありがと。また、後で会いましょう」
おそらく、明はお仲間とここから逃げたわけね。
「おい。いい加減にしろ。どうなってるんだ。天ケ原」
勢いよくドアを開け、入ってきたのは、東洋系の神経質そうなメガネ男だった。
「誰だ、あんたは。天ケ原はどこだ」
「知らないわ。あたしの名前を知りたいなら、先にあんたが名乗りなさいよ」
「俺は、柚木瀬伊(ゆのき・せい)。薔薇の学舎の技術屋のようなもんだ。
天ケ原に用がある。まったく、いまのはなんだ。攻撃を受けているぞ。
こいつのハイスペックは戦闘のためのものなのか。敵は何者なんだ」
瀬伊は、明への文句を言ってる。
「技術屋ねぇ。
役に立ってくれるかしら。
こいつを動かして戦いたいの。助けてくれない」
「戦う、だと」
お互いのレンズごしに、あたしたちが目を合わせた瞬間に、集中砲火がきたの。