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実録! 空京万博!

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■□■2■□■ 恋人たちとオペラ

同じころ、「オペラ上演会」の会場にて、
出演者によるリハーサルが行われていた。

題目は、ヴァイシャリーで上演された、
女王に忠誠を誓った女騎士の物語、
『騎士ヴェロニカ』である。

ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな) に招待された、
パッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)は、
桐生 円(きりゅう・まどか)と一緒に、
オペラに出演することになった。

「さっそくですが、
パッフェルさんには、
主人公の夫に使える従者の役どころをお願いしたいのですが」
「いきなり主役級とかもあれだし、妥当かもしれないね」
「わかったわ」
ロザリンドと円が言い、パッフェルは、オペラの衣装に袖を通す。
従者の衣装であっても、
オペラの衣装は豪華で、
パッフェルは普段とは違った雰囲気を見せた。
「うん、綺麗だよ、パッフェル」
「……ありがとう」
笑顔の円に、パッフェルがはにかむ。

「じゃあ、せっかくですので、記念撮影しましょうね。
皆さーん、頑張っていきましょう!」
ビデオカメラを設置して、
ロザリンドが声をかける。

「では、円さんを主人に見立てまして、
報告のシーン練習いきましょうかー」
ロザリンドが、パッフェルに呼びかける。
「円さんもそれっぽく会話お願いしますねー」
「えー主人? どんな感じの人だっけ。偉そうな人だよね」
できるだけ偉そうに見せるために、
踏み台に上った円がドヤ顔して見せる。

「花がなければ咲かせればよい」
「ご主人様……」
円が適当に台詞を言う。
パッフェルも、訥々とした話し方ではあったが、
従者を演じて、普段とは違う表情を見せる。

(うんうん、うまくいきそうですね)
ロザリンドが、うなずきながら、悪乗りして言う。
「さて、次は、円さんがパッフェルさんに愛の告白のシーン。
いきなり本番ですよー」

「ちょ、ええっ!?」
「愛の告白……」
円とパッフェルが驚く。

驚きつつも、円はパッフェルを見つめる。
「えっ、とその、大好き……だよ……」
もじもじしながら紡がれた言葉に、
「私も……」
パッフェルも恥らいつつ返す。

そうしていると、外で騒ぎが聞こえてきた。
イナンナが誘拐された騒ぎだった。
「ランスに事件感知、悪人は許しません!
ということで、後で詳しいお話は
じっくり聞きますので、練習とかお願いしますね。
ハイパーランサー!」
ロザリンドは、そう言い、
槍を構えてドタバタと走り去っていった。

「あれ? ロザリン?」
「私たちは練習しててって……」
「まあいいや。まだ時間あるしちょっとゆっくりしようか」

その場に残り、
円とパッフェルは会話する。

(パッフェルは
何にでも興味持って社交的になって来てる気がする。
良いことだなぁ)
最近の想い人の変化を感じ取って、
円はほほえましく思いながら聞いた。
「パッフェルー。オペラはどうかな、楽しい?」
「ええ……今まで経験がなかったことだけれど……。
違う自分を演じるというのは、新鮮で面白いわ」
パッフェルがはにかんで言う。

「楽しいなら続けてみたらいいと思う、お手伝いするよー」
「ありがとう……円と一緒だから、余計、楽しい」

こうして練習を続ける二人だが。

至近距離で見つめていたパッフェルを、
円はとてもいとおしく感じていた。

「パッフェルー、キスしてもいい?
パッフェル成分が足りないー」
不意打ちのように、耳元でささやく。
「……!
……ええ」
急に言われて驚くが、パッフェルは円のおねだりに答える。
軽くキスして、
「パッフェル、大好き……」
円がパッフェルを見上げる。

「ねえ、パッフェルは、
恋人同士になるのって興味がない?
それともボクじゃ駄目かな?」
そう問われ、パッフェルは目を丸くした。
「私も……円が大好き……。
ずっとこうしていられたらいいと思う……。
恋人同士になれたらきっと素敵……」
「ほんとに!?」
「ええ。
これ、なんていうのかしら……。
そう……私たち……」
パッフェルが、頬を染めながら、微笑した。

「……両想い、ね」
パッフェルと円が、もう一度、口づけをかわす。

今度はさっきより深く。甘く。


後に、
ビデオカメラが回っていたということに気づく2人であったが、
今はただ、優しい時間が流れていた。