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THE RPG ~導かれちまった者たち~

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THE RPG ~導かれちまった者たち~

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 その頃、当の勇者たちはと言いますと……。
 コツコツとレベル上げをしながらゲームを進めておりました。
 困っている妖精を助けたり、畑を荒らすモンスターを捕らえに行ったり、鍵を見つけたりしているうちに、そこそこ強くなり、仲間たちの絆も深まってきます。
「そろそろ手がかりもつかめて来たことですし、竜の洞窟へと向かいましょうか」
 小夜子は冒険の中で装備も一新し意気揚々です。
「見えてきましたよ。どうやらあれがそのようです」
 ルビーが指差します。毒沼に囲まれた丘の向こうに、洞窟への穴がぽっかりと開いているのが見えました。
 ゲーム画面では味気ない一マスのグラフィックに過ぎませんが、実際にこの世界の住人として歩いてみると、印象的な光景です。
「ヒュヒヒ〜ン! (毒沼は、全員馬車の中に入って通り過ぎればいいであります)」
 第七式・シュバルツヴァルドが教えてくれます。
 幸いなことに、洞窟の内部は広く、馬車まで入り込むことが出来そうです。
 どうやら馬車だけが毒を浴びながら洞窟まで運んでくれるようです。無茶しやがって、であります。
「……」
 勇者たちが洞窟へと足を踏み入れると、一人の女性がフロアをうろうろしていました。
「おお、勇者どの。こんなところで出会えるとは、なんたる奇遇」
 ゲーム口調の棒読み気味で答えてくれたのは、サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)です。
 彼女は、女王様の護衛の剣士としてゲームに飛ばされてきたのですが、女王様が捕らえられ困っている様子。
 ティセラカラーのシャムシエル風の容姿ですが、もっと目立つのは胸です。大きいです。それはさておき。
「やっと出会えた、勇者諸君。ちょっと手を貸してほしいんだよね。ウチのシリウスって女王が聖剣を持ったままドラゴンの洞窟に捕まっちゃってさ。ちょっとボク一人じゃ荷が重いし、手貸してくれない?」
「いや、それはいいんだけど、女王様なの? 捕らえられているのは王女さまって聞いたんだけど」
 さゆみは首を傾げます。
「いや、ドラゴンもいるみたいだけど、ウチのは別口で……」
「?」
「助けてくれたら聖剣を渡せると思うんだけど。かなり使える剣だよ」
「私に任せなさい。早速そちらに向かいましょうか」
 聖剣と聞いて、力強く請け負ったのは勇者の朱鷺です。これで棍棒ともおさらばできそうです。母には悪いですけど。
  
 サビクが仲間に加わった。

 勇者たちは、どういうわけかやたらと難解になったダンジョンを進んでいきます。
 敵も強い上に道がわかりにくいです。さっきまでのゆとり仕様はどこへ行ってしまったのでしょうか。
「それにしても、他に囚われている人がいるとは初耳だよね」
 とリアトリス。それに対してザビクは。
「まあ、その辺色々あるんだろうから空気を読むってことでオッケー。ドラゴンも一匹だけじゃないみたいだし……おっと、あそこだあそこ」
 ザビクが指差した先には、一目見て大きなフロアがありました。
 その奥で鎮座しているのは、見るからに恐ろしげな巨大な竜です。
「あれがそうですか。……強そうですね」
 ルビーがゴクリとのどを鳴らします。
「まあ、どっちにしろやるしかないよね」
 リアトリスが身構えたときでした。
「何の用だ、人間ども。痛い目を見ないうちに早々と立ち去るがいい」
 首をもたげた巨竜は、カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)です。
「女王様を帰せ!」
 ザビクはビシリと指を突きつけます。
「女王……? ……ああ、あっちの方か。勝手に入り込んできたので捕まえて閉じ込めてあるが」
 カルキノスの視線の先には、鎖で繋がれたシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)がいるのが見えます。このドラゴンが閉じ込めているようですが、どうしたのでしょうか?
「もういいから、開けて連れて行くといい。彼女も十分反省しただろう……」
「いいのですか?」
 それはいいとして(?)、カルキノスの言葉は何か引っかかるものがあります。
「あっちの方って……、別の方があるの?」
 さゆみが尋ねると、カルキノスは。
「俺は姫の番をしているだけだ」
「……」
 え〜っと、ちょっと待ってください?
 勇者たちは頭が混乱し始めます。
「囚われた姫様って何人いるのですか?」
「……さあ」
 誰も答えることができません。
 そんなことを言っていると。
「おお、勇者よ。ようやく出会うことが出来ました」
 先ほどまで戒められていたシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)が、解放され話かけてきます。特に戦ってもいないですし身の危険もなかったようですが、まあ目の前のドラゴンがいいといっているのですから言いのでしょう。助け出され自由の身になったようです。
「女王様、ご無事で何よりです」
 サビクが片ひざをついて出迎えます。
「私はシリウス女王。あなたに伝説の聖剣を授けるためにやってきました」
「ありがとうございます」
「さぁこの聖剣ジェファルコンを……え、あれ? 渡しちゃっていいんだっけ、ジェファルコン?」
「?」
「一応、これ天学の……天。そ、そうです、天の遣わした勇者のための聖剣。どうか魔王を倒し、世界に平和を……平和になるの?」
「……」
「……」
 なんでしょうか、このいやな感じの沈黙は。全員半眼です。女王様、残念な方のようです。
「あぁ、何を言ってるんですか私は! どうか世界をお願いします!」
「ご安心ください女王様。この私が世界に平和をもたらすことをお約束しましょう」
 さすがは勇者です。すぐに気を取り直して、承ります。
 そして聖剣ジェファルコンを受け取ると。

 棍棒は音もなく崩れ落ちた。勇者は聖剣を装備した。

「……きましたわ!」
 朱鷺は大喜びです。
「ところで、秘宝は?」
 思い出したようにルビーが言います。
「ここにある。あげてもいい。オマケを引き取ってくれるなら」
 なんともあっさりと、カルキノスは言います。
「ならいただきましょう、オマケごと。戦わなくいいんですよね」
「……ああ、無駄だからな」
 とカルキノス。もう、遠慮もなく朱鷺は秘宝をもらいます。早く片付けたい様子です。
 勇者は『ドラゴンの秘宝』を手に入れた。
 パラララッパラ〜ン! と効果音が響きます。
「ありがとう。もらってくれて。オマケは私よ」
 カルキノスが守っていた部屋の奥から女の子が出現します。囚われの姫の一人、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)です。
「よろしくね、勇者さま」
 彼女は、純白のドレス姿で一礼してきます。
「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」
 よくわからないままに挨拶を交わす朱鷺に、シリウス女王は言います。
「では、勇者様。あなたが本当に必要な武器を手に入れたところで、私のほうはお役ごめんです。……ごきげんよう。あなたの旅にご加護があらんことを……」
 そういうと、女王はザビクに連れられて帰っていきました。
「……」
「では、参りましょうか、勇者様」
 当然のようにルカルカが言います。
「え? ついてくるのですか?」
「何か問題でも?」
「いいえ」

 ルカルカが仲間に加わった。
 カルキノスが仲間に加わった。

 とは言うものの、何もしていないうちに話が進んで行くので朱鷺は釈然としない様子でした。