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取り憑かれしモノを救え―調査の章―

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●真実の一片・蒼

 何か少しでも情報が得られればと、高峰雫澄(たかみね・なすみ)は広場で聞き込みを続けていた。
 大声で事件のことを叫んでいた子は、老婆と一緒にどこかへ行ってしまってから戻ってきていない。
 何か有力な情報を得られたのだろうかと、思う。
「とは言っても……情報が少なすぎるよ……」
 村を調べれば何かわかる。
 そりゃあ、何かわかるだろうさ。
 投げっぱなしじゃないか、なんていうつもりは毛頭ないけれど。
 聞き込みをした限り、村長はここ2年ほどで就任した人らしく、何も知らなくて当然だった。
「あ……あのおねえちゃんに、ゆうれいのおはなしすればよかったー」
 さきほどお菓子を貰っていた子供たちがそんなことを言っていた。
 この子供たちに話しかけていた人は、何かつかんだかの様子で歩き去っていっていた
 だから雫澄は藁にもすがる思いで、子供たちに声をかける。
「ね、ねえ、幽霊のお話って何かな?」
「おにいちゃんは、さっきのおねえちゃんのしりあい?」
 少しだけ怪しむように子供たちは雫澄を見ている。
「うん、そんなところかな」
「じゃあ、おしえてあげるね!」
 お菓子を食べながら子供たちは話し始めた。

 森の中で遊んでいるとふとしたときに、知らない場所に出てしまうことがあるそうだ。
 歩いても歩いても同じ場所に出てしまい、途方にくれていると女性の幽霊が道案内をしてくれるという。
 子供たちの間では、肝試しがはやっており、年に1度は必ず森に入るそうだ。
 そして、必ず一人は迷子になり、幽霊に村まで送り届けてもらうということがある。
 幽霊はしきりに、何が好きなのかとか、なんでこんなことをしているのかとか、面白おかしく話しかけてくれる優しい幽霊らしい。
 それから一人で帰ることができるくらいまで道が分かるようになったら、いつの間にか消えているという話だ。


「それでね、まいごになるときはかならず、いせきみたいなところか、おおきなぬまがあるところか、おはかがぽつんとあるところにでるんだよ!」
 興奮した様子で、話をするこどもたちに、雫澄は情報として有力なものがあるだろうかと考える。
 一応メモを取りはしたが。
(優しい女の幽霊、ねぇ……)
 半信半疑ではある。
「たぶんね、さっきのおねえちゃんにもはなしたんだけど、おはかにすんでるゆうれいがこまってるひとをたすけてくれるとおもうの!」
 お墓に住んでいる幽霊。
「お話聞かせてくれてありがとう!」
 雫澄は子供たちの頭を一人ずつ撫でながら、その場から去る。
 情報としては確証はないけれど、地図を見て考える。
 この辺りには遺跡は一杯あるが、結界の範囲内に、遺跡や沼、墓なんて見ただろうかと。
(……一度ナインと合流するべきか)
 雫澄はパートナーとあらかじめ決めておいた合流場所へと急ぐ。