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パーティーは大失敗で大成功?

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終章 「終戦後のひと時を」

 足元には≪雷鳴の魔人使い――アンダ≫が倒れている。
 戦いが終わり、荒れ果てた芝生のあった敷地でジェイナスはただ一人佇んでいた。 
「あれが≪機晶可変武器――覇動槍ウルスラグナ≫か……」
 別荘近くでは、倒した≪猿魔エシュ≫や≪機晶ドール≫の一箇所に集められ、後に手当てを施すことになっていた。
 なんとも甘い奴らだとジェイナスは思う。
 その時、意識を取り戻して死んだふりをしていたアンダが、不意をついてジェイナスに向けて隠し持っていた小型の銃を発砲した。
 だが弾丸はジェイナスの仮面を掠って壊しただけで、当たりはしなかった。
 一発だけの超小型の銃は弾切れで、打つ手がなし。アンダは舌打ちして――
「なっ、貴様!?」
 ジェイナスの顔を見て青ざめた。
「大人しく寝ていればいいものを……」
「貴様、もしや俺達を騙し――」
 ジェイナスは躊躇なく、アンダの顔面にサーベルを振り下ろした。
 銃声を聞いた生徒達が心配してきた。
「大丈夫だ。問題はない」
 別荘から生徒達に招集がかかった。
 急いで生徒達が別荘へ向かう。
 ジェイナスはその後を追いながら、今一度アンダの死体が転がる荒れ果てた地を振り返る。
「なに、壊す必要もない。あれは所詮、古びた玩具さ」
 三日月のように口角を引き上げて不気味な笑みを作ると、ジェイナスは低い笑い声を漏らしていた。


 パーティーが無事に終わり、来賓は帰宅していった。
 来賓がいなくなったパーティー会場で、ミッツが生徒達に感謝を述べる。
「みんなご苦労さま! 親父から許可はもらったので、このパーティー会場で存分にはじけようぜ!!」
 生徒達は各々の飲み物が入ったグラスを掲げて乾杯をした。
 生徒達が談笑を始める中、ポミエラがテーブルの上に残った料理を眺めて言った。
「料理があんまり残ってませんわね」
 残念なことにパーティー後ということもあって、テーブルの上の料理は種類も数もあまり残っていなかった。
 するとミッツは笑いながら佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)に話しかけた。
「弥十郎。なんか今すぐ作れたりしないか?」
「そうだねぇ。材料さえあれば……」
「じゃあ、頼むわ」
 そう言うや否や、あゆむが廊下から移動式の調理台や食材を次々と運んできた。
 どうやら、最初からやらせる気で用意していたようだ。
 弥十郎は用意周到なミッツに少々呆れながらも生徒達を前に料理を作り始める。
 中華鍋の下で燃え上がる炎。周囲に美味しそうな匂いが広がっていく。
「やったぁ。本格中華料理だよ。だよ!! 楽しみ〜♪」
 緋柱 透乃(ひばしら・とうの)は涎が垂れんばかりに目を輝かせて、弥十郎の調理を眺めていた。
 そんな透乃の横で陽子が苦笑いを浮かべる。
「透乃ちゃん、はしゃぎ過ぎですよ」
「しょうがないじゃん。調理途中でもあんなに美味しそうなんだよ。そりゃあ、興奮くらいするよ。それとも陽子ちゃんは興味ない?」
「そんなことはありません。私だって食べたいですよ。いっぱい食べて透乃ちゃんの分がなくなってしまうかもしれません!」
「そ、そんなぁ〜」
 自分の食べる分が無くなることを想像した透乃は、本当に悲しそうな表情をしていた。
 そんな透乃を見て、陽子がクスクスと笑いを漏らす。
「ふふ、冗談ですよ」
 透乃が頬を膨らませて陽子をポカポカ殴りだした。
 二人がそんなやり取りをしている間に、出来上がった料理が皿に小分けされていく。
 弥十郎の周りには出来立ての料理を待つ生徒達が集まってきた。
 その様子を見て賈思キョウ著 『斉民要術』(かしきょうちょ せいみんようじゅつ)が呟く。
「きっとみんな喜んでくれますよねぇ」
 特別営業『料理☆Sasaki』は大人気だった。

 
 テーブルについた月崎 羽純(つきざき・はすみ)とあゆむの前に、遠野 歌菜(とおの・かな)が用意していたロールケーキを持ってきた。
「羽純くん、あゆむちゃん、今日はお疲れ様〜。よかったら食べてね♪」 
「あゆむも食べていいんですか!?」
「もちろんよ」
 あゆむはカットされたロールケーキを見つめながら、どの部位が一番美味しいか一生懸命悩んでいた。
 すると羽純が躊躇なく端から取ったので、あゆむが涙目になる。
「ところで勿論、美味い茶も付くんだよな?」
「あ、だったらあゆむが入れて、わっとっと……えへへ」
 何かお返しをしなきゃと思ったあゆむが紅茶を急いで用意しに行こうとして、転びそうになっていた。
 なんとか踏ん張ったあゆむは頬を紅潮させて、改めて紅茶を取りに行く。
 歌菜と羽純は顔を見合わせて、お互い苦笑いを浮かべた。
 

「ティー。わたくし、清浄化を試してきますわ」
「あ、待って私も行きます」
 ≪猿魔エシュ≫に【清浄化】を試しに行くイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)の後を追って、ティー・ティー(てぃー・てぃー)も会場を出て行く。
 その様子を見ていたダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)の元へ、ミッツが≪機晶ドール≫の回収と修理を頼みに来た。
「わかった。やっておこう」
「なるほどな。それなら、我も協力しよう! もちろん「これ」によるがね」
 快く承諾したダリルとは違って、いきなり話に入ってきたドクター・ハデス(どくたー・はです)は、親指と人差し指で○を作って金銭を要求してきた。
 金は悪の秘密結社オリュンポス維持のために必要なのである。
「あんまり多くは出せないがいいか?」
「いいだろう」
 ハデスは修理するついでに≪機晶ドール≫から面白いデータが取れれば、それは大きな成果になると考えていた。
「じゃあ、頼んだぜ。あ、そうだ。ダリルにはこれやるよ!」
 ダリルはミッツからハムとレタスが飛び出したサンドをもらった。
 ミッツはテラスの方に向かいながら、一度だけ振り返って叫んだ。
「食えよ! 絶対、食えよな!!」
「…………」
 ダリルは訝しげに渡されたサンドを見つめた。
「兄さん!」
 ハデスが≪機晶ドール≫の中には何が保存されているのだろうと期待していると、高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)が走ってきた。
「サクヤ、どうし――ゲッ!?」
「兄さんのためにケーキを作りました!!」
 咲耶が手に持った皿の上には、黒々したケーキらしい炭の塊が存在していた。
 期待の眼差しがハデスに向けられていた。
 ここは断ろうと考えたハデスだったが、頭の隅で今後のオリュンポスの活動に支障が出るかもという懸念が思い浮かんだ。
 ハデスの脳内で「生命の危機」と「オリュンポスの今後の活動」が天秤にかけられ――
「……いただきます」
 結局死ぬことはないはずだという思いで料理を口にした。
 瞬間――舌を構成する細胞が悲鳴を上げたような気がした。
 口から鼻と食道へ何か危険なものが浸食していく気がする。
 以前より増してひどくなっている気がした。 
「美味しいですか」
「オイシイヨサクヤ」
 ハデスはほぼ棒読みで答えたが、咲耶はそれでも嬉しそうだった。
「うっ、み、水くれ……」
「はい」
 胃に達した浸食が胃の中の物を逆流させようとしたので、ハデスは慌ててヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)から水の入ったグラスを受け取り、飲み干した。
 ……意識が朦朧とする。
 ハデスはこの黒い物体Xには毒薬が入っていたのではないだろうかと思った。
「そういえばヘスティア。例の薬はどうした……?」
「惚れ薬のことですか? それならここに……あれ、あれ?」
 ヘスティアは惚れ薬を探して、ポケットというポケットに手を突っ込んだ。
 だが惚れ薬はどこにも見つからない。
「はわわっ、ご主人様……じゃなかったハデス博士。すいません。落としてしまったみたいです」
「なにぃぃぃ!!」
 ハデスは声を上げると、白目を剥いて倒れた。


「僕に用事って用って何だろう?」
 生徒達がパーティーを楽しんでいる中。手紙で呼び出された未だにネコ耳メイドあさにゃんになっている榊 朝斗(さかき・あさと)は、別荘の一室の前までやってきていた。
 手紙には差出人の名前はなく、ただ来てほしいとだけ可愛らしい字がカラーペンで書かれていた。
 あさにゃんは少しだけ淡い期待を抱きつつ扉をノックしたが、返事はなかった。
 ドアノブに手をかけると鍵はかかっていない。
「……失礼します」
 あさにゃんは恐る恐る扉を開けると、部屋の中は真っ暗で静まり返っていた。
 ドア付近のスイッチを押したが、灯りはつかなかった。
 あさにゃんは手紙に指定された場所がこの部屋で間違いないことを確かめ、部屋の中央へと扉を開けたままで進んでいく。
「あの〜、誰かいますかぁ?」
「……いらっしゃい、あさにゃん」
「っ!? しまっ――」
 聞き覚えのある声に悪寒を感じたあさにゃんが逃げ出そうとすると、扉の前に複数のマントをスポッリ被った者達が立ち塞がる。
 扉が閉ざされ、真っ暗になった室内に周囲から蝋燭が灯る。
 ぐるりと周囲を見渡し、マントを被った者達があさにゃんの周囲を囲む中、ただ一人ルシェン・グライシス(るしぇん・ぐらいしす)だけがシスターの格好をして立っているのを見つけた。
「ルシェンの懺悔室にようこそ、あさ――」
「ぎゃあああああ!!」
「叫ぶはまだ早いわよ?」
 ルシャンがクスクス笑う。
 あさにゃんは過去の記憶から、すでに雷に脅える子猫のようになっていた。
「今日は特別編ということで罪深き子羊が大量発生です」
 周囲からあさにゃん呼ぶ興奮気味の声。
 すると、あさにゃんが声を上げる。
「この声、聞き覚えある! 海音シャにゃん。それに会場に来ていた人達も混ざってるでしょ!!」
 マント姿の罪深き子羊達が一斉に顔を背けた。
「みんなやめてよ! こんなことしていいと思ってるの!」
 必死に訴えるあさにゃん。
 するとルシャンが笑いだす。
「ふふふ、残念ながら、あさにゃん。この懺悔室では彼らは私の指示に絶対服従。つまり私の指示がない限りやめないのです。さぁ、罪深き子羊達よ。顔が見えないので気にする必要はありません。存分にあさにゃんでその罪を洗い流し、私に至福の癒しを与えなさい
 可愛らしいカチューシャやチャイナドレスを手にしたマントの者達があさにゃんに襲いかかる。
 あさにゃんが叫びをあげながら必死に抵抗する。

 ここはルシェンの懺悔室。
 ルシェンが招集した天使(子羊)達によって、ルシャンの(あさにゃんを弄ぶことによって)心を清める(?)神聖(?)な場所である(たぶん)。

 弄ばれるあさにゃんを見ながら満足そうに頬を緩めるルシャン。 
 そこへ、マントから顔をだしたシャンバラ教導団所毒の弓彩妃美がやってきた。
「おや、どうしましたか?」
「お、お、お……」
 妃美の握った手が震える。
「お?」
「おねぇぇぇさま!!」
「うわっ!!」
 次の瞬間、妃美がいきなりルシャンに抱きつき、胸に顔を埋めてきた。
 顔が真っ赤になった妃美はまるで酔っぱらったかのようだった。
 ルシャンはしがみ付いてくる妃美を引き離そうとする。
「ちょっとやめなさい!!」
「い、嫌ですぅ〜。私、目つきが悪いですけど、こう見えても可愛い小動物が好きで、あと自分は背が低いから身長がある女性が好きで――」
「そんなこと知りません。いいから離しなさいっ!!」
 ルシャンは足で蹴飛ばしてどうにか妃美を引き離す。
 なおも抱きつこうとする妃美から逃げるようにルシャンは部屋をでていく。
「あ、待ってお姉様!!」
「ちょ、ちょっと待って、ルシャン!!」
 ルシャンと妃美が部屋を出て行く。
 この瞬間、懺悔室を管理する人間はいなくなった。
 マントを着込んだ者達の目が怪しく光る。
 扉がしまった。
 そして――部屋からあさにゃんの叫び声が一切聞こえなくなった。


「それは別の考えもあるんじゃないですか?」
「いやいや、俺はお前らより長く生きているから言えるんだが……」
 別荘のテラスで飲み物を手に源 鉄心(みなもと・てっしん)風羽 斐(かざはね・あやる)が何やら討論している。
 その話をミッツとジェイナスは二人に挟まれて聞いていた。
「お父様達は何を話しているのでしょうか?」
 斐を見つけた朱桜 雨泉(すおう・めい)が、隣に立っている翠門 静玖(みかな・しずひさ)に尋ねた。
「さあな。おっさんは腹を抑えながら結婚がどうとか言ってた気がするけど……」
「結婚!? それは楽しそう会話ですね。ぜひ私達も混ぜてもらいましょう!」
「あ、おい」
 走り出した雨泉を静玖が追いかけた。
 結婚は愛し合った者同士がするものだと熱烈に主張する雨泉。
 斐は胃が痛そうにしながらその話を聞いていた。
 ジェイナスは雨泉の話を適当に聞き流しながらミッツに話しかける。
「ミッツ、お前の研究についてなんだが俺も協力しようと思う」
「ほんとか!?」
「あぁ、色んな遺跡を回ってきたからな。その知識が役に立つだろう。どうだ?」
「ああ、もちろん。ありがたい。さすが我が親友だぜ!!」

 ミッツとジェイナスはしっかりと握手を交わした。

(続く……)

担当マスターより

▼担当マスター

虎@雪

▼マスターコメント

 皆様こんにちは。
 『パーティーは大失敗で大成功?』のリアクション製作を担当しました。虎@雪(とらっとゆき)です。

 今回は色んなキャラ(NPC)が登場しました。
 新キャラも二人。
 試しに結構喋らせて見ましたがどうでしょう?

 なんだかいつもと違う書き方になりましたが、楽しんで読んでいただけたらと思います。
 
 ではまた機会がありましたら、お会いましょう。
 どうもありがとうございました。

 素敵なアクションの数々をありがとうございました。
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