天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

続々・悪意の仮面

リアクション公開中!

続々・悪意の仮面
続々・悪意の仮面 続々・悪意の仮面

リアクション

もし、彼女の欲望が刀狩に移行していたとしたら。
純化したエリザベータの剣技や速度、精度は龍滅鬼 廉(りゅうめき・れん)ナン・アルグラード(なん・あるぐらーど)と今や同等だったかもしれない。
だがいま彼女を突き動かす欲望は人が持ち得る生存戦略に不可欠なもの、故にその技は全てを越え、神速までの高みとなっていた。

その技の領域にもはや近づくものなどいない。

 「く、この俺の全速より早いだと!?」

【ゴッドスピード】でスピードを上げた貴仁もその速さに翻弄され【疾風突き】のタイミングを測れずにいた。
【名声】と【ファンの集い】で集めた人員による房内の物量作戦も通用せず、苦戦を強いられている。

 「イチかバチか……一気にこちらに注意を向ければ!」

長期戦を不利と判断した貴仁が隙を生み出すべく【その身を蝕む妄執】をエリザベータに発動させ、僅かに動きが止まった!

 「もらっ……!?」

だが次の瞬間、瞬間移動の様に彼女の姿が消え……

 「………濡れるッ!!」

どこかで聞いたような言葉とともに、【疾風突き】を出そうとした貴仁の剣が宙を舞った。

 「バカ者!変態に幻覚を見せてどうする〜!!」

房内の叫びも空しく、数メートル先に降り立った彼女の位置は全ての目標を仕留める格好の位置だった!
逃れられない獲物の殺気を感じ、貴仁が叫ぶ!

 「ちょまっ!俺は男……!」
 「知ってるよ!むしろ『男の娘』は御馳走っ!BL もな!」

もはや幻覚によって拡張された欲望は性別を凌駕し。欲望の風が駆け抜ける!!
誰も止められない怪物の疾走が男達にも悲劇を呼んだ!



そして悲劇は引き続き、さらなる悲劇を生む事になる。

 「オ、オリュンポスの騎士…じゃなかった、サンタクロース怪人アルテミス、参ります!
  って、きゃあっ、風がっ!」
 「あなたは私達が確保…きゃああ!」

エリザベータの前に立ち塞がった新たな刺客。
咲耶とアルテミスを目の前に、彼女の眼が見開かれる。

 「それで、私の隙を作ろうという作戦?……愚弄するな!
  今ここに宣言するっ!『はいてない』……は『原初の悪』だと!」

 『ふ?ふええええええええ!?』

予想外の反応に驚きながら十分に動けない『はいてない乙女』二人に
修羅と化した求道者がさらなる怒りの剣を振るう。

 「中途半端な露出なら、その全身を全てさらけ出せ!それが罰!はあああああああああああ!」
  
かくしてそこは壮絶な戦場。
後に追いついた彼女のマスターは言ったという
そこには地獄しかなかった……と。



そして数分後
欲望のためなら神をも殺してみせるほどの高みを得た、かつて『通り魔』と呼ばれた者
一人の求道者、エリザベータ・ブリューメルは一人の仲間と対峙していた。

 「へぇー、判ってるなお前…
  最後の1000枚目を俺にしてくれるなんて光栄だぜ…?」

オルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)はエリザベータの手にした袋を見ながら答えた。

 「私の中に眠っていた欲望…それは誰にも止められないの!あなたの色は何色かしら?」
 「黒だよ…てっ、お前な…俺のアンダーは見せパンだからいつも見ているだろ…?
  ま、いっか。仮面かなんだかしらねぇが俺の肉欲をなめんなよ?」

思えば、彼女を最後の標的にしたのは本能だったのかもしれない。
彼女こそ、仮面の力無くてもエリザベータの欲望に対抗できる唯一の相手だったのである。

 「悪いが一瞬で終わらせてやるよ。
  本気で相手してやる。俺が勝ったら後でたっぷりお仕置きしてやるから覚悟しておけよ…」

オルフィナの挑発にエリザベータが跳躍する!彼女の剣をオルフィナの【バスタードソード】が迎え撃つ!
激しい衝撃とともに、轟音が鳴り響く!

刹那……オルフィナの剣は天高く弾かれ、彼女の腰の物はエリザベータの手に収まっていた。

 「……勝ちね、私の」

越えるべき壁を乗り越えた勝利の美酒に、エリザベータは奪った黒い布を強く握りしめた。

 「試合の勝ちはお前にやるよ…だが勝負に勝つのは俺だ!」 
 「え?……ふぎゃっ!?」

動揺を少しも見せないオルフィナの声にエリザベータが振り向いた瞬間、
オルフィナの鉄拳が彼女の顔にめり込み、仮面を粉砕した!
そのまま倒れて動かない彼女を見てオルフィナは溜息をつく。

 「露出が怖くて見せパンなんかはいてられるかっての?
  悪いが俺が興味あるのはパンツより中身なんだよな〜。さてと……」

気絶したエリザベータを担ぎあげ、オルフィナはセフィーに連絡を入れる。

 「お、マスター?ああ、ちゃんと確保したよ。ってか、やられるなんて情けねぇなぁ。
  まぁ仮面ごときの欲望に負ける俺じゃねぇって、あっはっは。
  あ〜で、いつ戻ってくる?いやホラ迷惑かけた分ちゃんとお仕置きしないといけないだろ?
  何なら一緒に仲間に入ってきてもいいぜ〜?……冗談だよ、そう怒るなって、ほんじゃ♪
  ……さぁ〜って、どんなことしてやろっかな〜、へへへへへへ♪」


通信を終えて、鼻歌も軽やかな上機嫌でオルフィナは担いだエリザベータごと宿に消える。


………あとの運命は想像にお任せするとしよう。