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続々・悪意の仮面

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続々・悪意の仮面
続々・悪意の仮面 続々・悪意の仮面

リアクション

 「おいおいおい、なんか随分面白い事やってるんじゃないか?」

街の上空を見上げて後藤 又兵衛(ごとう・またべえ)はニヤリと口元を歪ませる。
そこには先程から戦いを繰り広げているセシルとルシェン、そして雫澄の姿があった。

偶然マスターの天禰 薫(あまね・かおる)達と共に街に来ていた又兵衛は、戦いの気配に気付き
一行と離れて熊楠 孝高(くまぐす・よしたか)と共に様子を見に来ていたのである。
セシルについている仮面を見かけて、孝高が事態を察する。

 「また例の騒ぎか……まさか三度も遭遇する事になるとはな」
 「楽しそうだな、どれ…ちょっと様子でも見てこようかねぇ」
 「やめておけ、まずは騒ぎに巻き込まれないよう天禰を……」
 「そういうのはお前の役目だろ?俺は安全確保って役ってね」
 「おい!……わかってるな!仮面には手を出すなよ!」

派手な戦いの様相を見ながら前線へ足を進めようとする又兵衛を孝高が勇めるも
聞き入れずにさっさと又兵衛は街中に消え、孝高はその姿に声をかけるしかなかった。



 「……さて、さっきの連中は……?うおっと!?」

改めてセシル達を探しはじめた又兵衛。
だが激戦を繰り広げる彼等の後を追うのは容易ではなく、見失った所に爆音が聞こえた!
急いで駆けつけると、大きなリュックを背負った少女が一人倒れている

 「おい?大丈夫かね?何があった。あんた名前は?」

うつ伏せに倒れたまま、マジカルな衣装をした少女が口を開く。
その顔は暗くてよく見えない。

 「私、ツカサ…急に仮面の人に襲われて……」
 「何?ひょっとしてさっきの連中か?どんな奴だったね!?」
 「それは……ね☆」

又兵衛の問いかけに少女は急に彼の腕から離れ、軽やかに彼の方へ顔を向けた。
そこにはセシルと同じ仮面が被さっていた。

 「こんな仮面の人☆アハハハハハ」
 「!?…おい!!」

突然逃げ出した少女<実は二章で仮面を被ってしまった月詠 司(つくよみ・つかさ)>を追って
又兵衛が大通りに飛び出す。
雑踏の中を軽やかに逃げる司…もといツカサに苦戦する又兵衛。
気がつけば彼女を誘導してる二人の子供の姿も見つける。

(もちろんそれは仲間のシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)イブ・アムネシア(いぶ・あむねしあ)だが
 又兵衛が知る由も無い)

段々鬼ごっこの様相になってきた中、不意にイブが転んだ。

 「チャンスかね!ってどああああああ!?」

好機とばかりに捕まえて事情を聞こうとイブに走り寄った又兵衛。
しかし不意に負けず劣らず派手に転倒し……それきり動かなくなった。

 「あは★ひっかかった!……あ、でも私がオトコだって言って驚かす事出来なかったな」
 「まさか大人がこうも簡単にひっかかるとはのう〜。
  っていうか、つくづく疑問なのじゃが、イブまでなんで転ぶのじゃ?何も無いところで」

ツカサのボヤキを聞いて物陰から仮面姿のウォーデン・オーディルーロキ(うぉーでん・おーでぃるーろき)が顔を出す。
又兵衛の足元には彼女の仕掛けたバナナの皮が置いてあった。

 「……まぁ、イブだからね。
  何にしても、ワタシの誘導は見事でしょ?
  みんなが持ってるリュックのスパイカメラさえあれば
  囮役の切り替えもトラップ場所への誘導も自在ってわけ。これで二人目だしね☆
  まぁ、イブが落とした拾い物の仮面にバナナの皮で滑ってダイブ……なんてミラクルがあるとは予想外だったけど」

そう語るシオンの傍には既に倒れている仮面姿の女性の姿があった。
(とりあえず彼女〜エリザベータ・ブリュメール(えりざべーた・ぶりゅめーる)〜の物語はもう少し後の話になる……)



さて、そんなツカサ達一行の前に、激戦を繰り広げながらセシルが飛び降りてきた。

 「まったく!2体1はちょっと手厳しいですわよね……ん?その人は……」
 「私達が脅かしてみたの。良かったら好きにしていいよ」

ツカサの仮面を見て同類と判断し、好都合と倒れている又兵衛を仲間にするべく近づくセシル。
だがそこに、激しい斬撃が炸裂し、土煙が上がった。

 「ちょ?何?何なの?」

驚くツカサ達。そしてセシルを追って雫澄とシェスティンも駆けつける。

 「悪意の仮面……俺は破壊しないといけない!」

土煙の中から声と共に現れた見知った人物を見てセシルを追ってきた雫澄が声をあげた。

 「え?ちょ…和麻……さん?」

黒髪で長髪のウィッグをつけているが…
胸にシリコンパッドを入れて女装しているが…
黒スーツを身に纏っている仮面姿なのだが…
そこにいるのは、雫澄の知人である神条 和麻(しんじょう・かずま)その人らしい。

 「俺も協力するぞ雫澄。あの女の仮面を破壊する!」
 「あ、うん。助かるけど……」

仮面姿の和麻の宣言、加えてその容姿……真に受けていいのか突っ込んでいいのか雫澄が迷っていると
フォークナー文書が遅れて舞い降りてきた。

 「仮面は装着者の欲望を純粋化するわけだから、それが彼の欲望なんでしょうね。
  まぁ過激な正義…といったところ?協力者としては申し分ないと思うけど?」
 「何だっていい!我の足を引っ張らなければな!」

彼女の説明もそこそこ、到着したシェスティンの戦闘再開によりセシルとの戦いは再び幕を開けた。



 「ちょっと…なんだか過激な事になってるんだけど?やばくない?」
 「そ、そうね。ワタシ達は退散しましょうか?」

それを物陰で見ていたツカサとシオン達。
そのままこっそり引き上げようとしたところに、彼女達の可愛さに似合わない男が新たに立ち塞がる。

 「おいおいおい、どこに逃げる気なんだ?お嬢ちゃん達?」

彼の名はアキュート・クリッパー(あきゅーと・くりっぱー)……百合園女学園の潜入組と組んで仮面を破壊してる男である。

 「こんな可愛らしいナリでおイタかい、
  仮面に踊らされてるんだろうが、見境なくってのはいただけないな……お仕置きだ」

完全に寄り集まってガクブルと震えてるツカサ達に、容赦なく彼のバーストダッシュが炸裂した。
……まぁ、勝負の結果は明白なのだが、あえて勝負の行方をちょこっとだけ書く。

ツカサの真空波も彼のギリギリの回避で接近を許し、後方宙返りの蹴りが炸裂。
シオンのサポートも繰り出した分身の中に身を潜ませて回避して、分身越しの一撃で鎮圧

 「おっとあぶねぇ!」 

……と、一瞬ロキの撒いたバナナの皮にすべるも、それすら逆に彼のフェイクで
チャンスととびかかったロキとイブにヒプノシス発動…そして戦闘は終了した。

まぁ言える事は、ひとつ。
戦闘凶の気のある元神父には可愛いは正義でも何でもないと言う事か。


一方、セシルを取り巻くシェスティン・和麻・雫澄の戦闘は激戦のまま拮抗していた。

シェスティンの光刃宝具【深紅の断罪】や和麻の納刀状態とはいえ、愛刀の三尖両刃刀の斬撃に
セシルが素手で対応できているのは、仮面によって全力開放された【鬼神力】【金剛力】による【アイアンフィスト】
加えて卓越した武術も合わさり、時には力で押しているばかりかヒャッハーなんて喚起の声まで聞こえている。

 「困ったなぁ〜。均衡してるのはいいんだけど、みんな戦闘好きだから。
  このままだと街に被害が及んじゃうよ〜」
 「純粋な戦闘スペックならそうでしょうね。まぁ狙うなら彼女の詰めの甘さかしら、案外女の子だし、彼女」
 「……なるほどね〜。シェスティン!」

もはや手が出せず傍観気味になっていた雫澄にフォークナー文書の助言が入る。
それに閃いた雫澄がシェスティンに呼びかけ、どうやら彼女も意図を察したようだった。

 「……なら、訓練の成果を見せようではないか!行くぞ、シロ、クロ!」

シェスティンが【深紅の断罪】を抱え走り出し
お供のパンダ【コンビ名『パン・?』】のシロとクロがそれに続く!

和麻の攻撃をかわしたセシルがそれを見つけて彼女等に飛び込み、拳を放つ!
真正面から拳で受け止め、衝撃に下がったシェスティンの脇を二匹のパンダがすり抜け、セシルの目の前に立った。

 「この小動物が!……って、え?」

たかが小動物、と容赦なく拳が振り上げられるかに見えたが
何せ目の前にはウルウルとつぶらな瞳で見つめるパンダ。
その凶悪的な可愛さの前に一瞬の隙が生じる!

そこに再びシェスティンの剣が繰り出され、セシルは正面から受けざるを得ない。
……つまり、両手が塞がっているわけで。
そこに背後から和麻の相手を半殺しにしてもおかしくない容赦ない攻撃が繰り出される!

……が、和麻の意志に反して雫澄の本命はそこではなくて……

 「もらったよ!友達だから!これで止める!」

シェスティンの背後から飛び出した雫澄の手に光条兵器【オース・オブ・アズール】が輝きを増す!

彼の目の前にはセシル、そして和麻が同一直線状に存在している。
光条兵器なら纏めて仮面に攻撃が可能なわけで…
和麻が文句を言う間もなく、二人の仮面に光の刃が炸裂した!



 「……終わったわね。十分楽しませてもらったわ」
 「やっと終わった。戦闘はもう十分だよ」

一部始終を見届けたフォークナー文書が満足げに微笑む中。雫澄も安堵する。
なんと言うか、自分の知人にはホント戦闘好きがいて困るのだが……。

 「あら?戦闘はどうかしら?まだ終わってないと思うわよ。
  特に仮面は欲望をさらけ出すだけで、別に操られてるわけじゃないし」
 「……へ?」

ニヤリと笑うフォークナー文書の意外な言葉に雫澄が素っ頓狂な声をあげた刹那。
仮面を壊され、倒れていたセシルと和麻がガバリと起き上がった。

 「さっきは良くもやってくれましたわね!まだバトルは終わってませんわ!」
 「これ以上の悪事は許さん!街は俺が守る!」
 「………ええええええええええ!?」

何ら仮面の時と変わらない戦闘の再開にパニックに陥る雫澄。
そしてもう傍らには戦闘凶気味のシェスティンというパートナーが一人声を上げた。

 「まだ闘うか!面白い!・・・まとめて我が相手になろう!」
 「ちょっと!もう戦いはいいよ〜!!」



そんな騒ぎの中、散らばったセシルの仮面の欠片を広いながらアキュートがぼやく

 「やれやれ、今回は毛色の違う仮面が混じってるみてえだから持ち帰ろうと思ったが。
  ま、欠片でも問題ない分析して貰うとするか、ん?どうした」

欠片をしまいながら傍らでアキュートにやられてのびている司達の手当てをしていた高峰 結和(たかみね・ゆうわ)の視線に気付く。
彼女は治療の傍ら膝元に拾って集めた仮面を指して口を開いた。

 「その、……無いんです。仮面が一枚……どこを探しても」



その仮面(実はイブがつけていた一枚)は街を駆け抜ける又兵衛の顔に納まっていた。
イブの天才的な不幸属性のなせる業か……アキュートの攻撃のはずみで顔からはがれた仮面が
奇跡的な確立で見事に倒れていた又兵衛の顔に乗っかってしまったのである。

仮面によって覚醒した又兵衛から普段からは想像できない声が疾走の吐息とともに漏れる。

 「どこだ……どこにいる徳川。いるなら姿を見せろ!一度、会ってみたいんだがね……」