リアクション
■まつりのあとに
――その後、ミリアリアたちは空京警察の好意に預かり、空京内のホテルで一泊を過ごすことになった。モニカが逮捕され、クルスを狙う脅威はなくなったものの、まだ他に狙う者がいるかもしれないという見解で、警察と協力して護衛することになったのだ。
とはいえ、契約者のほとんどは警察からの指示で解散という形となり、ミリアリアとクルスのいる部屋を警察が厳重警備することとなった。そうなった経緯を雫澄はナギが持ってきたHCを通じてルカルカたちへ報告していったようだ。
「……今日は、色々と大変でしたね」
「ええ……」
ミリアリアとクルスは、お互いに元気がない。ミリアリアはモニカとクルスへの心配で、クルスはミリアリアの心配と自身の状況を再確認してのものだった。
……流れる沈黙。しばらく黙りこくっていた二人であったが、どちらともなく話しかけようとする……。
「えっと、クルス……」
「あの……」
同時に声をかけてしまい、気まずさの増す二人。と、その時部屋のドアがノックされた。
「――すいませーん。ヴィゼルさんに言われて、クルスのメンテしにきたんですけどもぉ」
「あ……そういえばクルスのメンテをしてもらえるって話だったの忘れてた……でも、どうしてここがわかったのかしら……?」
……クルスのメンテをしてもらえる話だったのを思い出したミリアリア。すぐにドアへ向かい、ヴィゼルお抱えのアーティフィサーを部屋にあげる。
「いやぁ、ミリアリアさんがここにいるってのヴィゼルさんから聞いて、すぐに小屋からここまですっ飛んできましただ」
「すいません、まさかここで一泊取ることになるなんて思ってなかったから。……クルス、今からメンテしてもらうんだけど、大丈夫?」
クルスへ問いかけるミリアリア。しかし、クルスは崩れるようにベッドに横になったまま動く気配がない。
「く、クルス!?」
「――ああっと、動かないでくだせぇ。クルスはあっしの仕掛けた遠隔起動操作パーツで起動状態を切ってあるだけなんで」
ミリアリアが気づいた時にはもう遅かった。アーティフィサーの手には遠隔起動操作パーツの起動スイッチと拳銃が握られており、その銃口はミリアリアに向けられている。
「……私をどうしようっていうの?」
「なぁに、簡単なことです。クルスを壊されたくなかったら、クルスと一緒にあっしに付いてきてもらうだけでさぁ」
――完全な脅迫だった。戦闘がからっきしなうえ、クルスという人質を取られてしまった以上、おとなしく従うほかない……。
「……わかったわ。その代わり、クルスには絶対に手を出さないで」
「ええ、ええ。手ぇ付けるつもりはありません。お二人とも大事な存在ですから。――さ、警察のほうもすでに始末つけてあります。いきましょう」
それほど重くないクルスを担ぎ上げたアーティフィサーに銃を突き付けられながら、ミリアリアはホテルの部屋を後にする。その表情には、数々の苦難を浴びせられたかのような、苦痛の表情を浮かべている。
――そしてこの日、ミリアリアとクルスは行方をくらまし、少しの後に……事件が起ころうしているのであった。
初めまして、もしくはこんにちは。柑橘類系マスター・秋みかんです。
今回もたくさんのご参加、ありがとうございます。今回もなかなか噛み応えのあるアクションが多数で本当にありがたく思います。
また、今回も満員御礼で非常に嬉しく思います。ミリアリアとモニカ、そしてクルスの行く末を最後まで見届けてもらえればこれ幸いです。
さて、今回も称号が増えているかもしれません。お楽しみに。
それでは、またお会いできることを願いつつ――。
〜次回予告〜
ついに黒幕が動きだす。二人の魔女と機晶姫を巻き込んだ野望が動き出す。
黒船の行きつく先は絶望か、希望か。そして、絡まる思いの行きつく先は。
姉妹の絆を取り戻す時、心優しき機晶姫のとる行動とは――。
次回、二人の魔女と機晶姫 最終話〜姉妹の絆と夜明け〜