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デスティニーランドの騒がしい一日

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デスティニーランドの騒がしい一日

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第10章 パレード準備

「あぁ……そうか。よし、急いでこっちに車を回せ。場所は……」
 携帯で何かを連絡していたマッキ―の着ぐるみは、にやりと笑うと電話を切る。
 マニーの着ぐるみがマッキーに駆け寄る。
「どうだ?」
「やったぜ。奴ら、要求通り逃走用の車を用意してくれるそうだ」
 とある小屋の中。
 デスティニーランドのマスコット、マッキ―とマニーの着ぐるみを着た強盗犯人は、人質を盾に逃走用の車両などの要求の最中だった。
「……何の話をしているのかしら」
「パレードの準備が整ったんだよ、きっと」
「そうなのかしら…… 」
 小屋の隅には、後ろ手に縛られた雅羅と魔威破魔 三二一。
 そして遊園地を楽しんでいた南天 葛とヴァルベリト・オブシティアン、そしてサオリ・ナガオ(さおり・ながお)たちが座っていた。
「わー、すごい精巧にできていますねぇ。まるで本物みたいですぅ」
「お、おいお前、ちょっと……」
 いつの間にか犯人のすぐ後ろに近づいていたサオリは、犯人の持つナイフや拳銃を見て目を光らせる。
「さすが、デスティニーランド。本物志向なんですねえ」
「そりゃそうさ! デスティニーランドのショーやパレードはいつも気合入ってるもんな」
 サオリの言葉に、我が事のように嬉しそうに答える三二一。
「こんな体験ができるなんて、よかったねー、う゛ぁる」
「お……おぉ」
 葛にほんわり笑顔を向けられ、なんとなく視線を逸らすヴァルベリト。
(いや……なんかおかしいだろこの状況)
 彼だけは、この状況がおかしいことになんとなく気づいていた。
 マッキーとマニーの様子もどこか変だと。
 だけど、もしかしたら自分の勘違いかもしれない。
 そうでなくても、徒に騒いで葛に怖い目を合わせたくない。
 とりあえず、何も言わず様子を見ることにした。

 こんこん。

 小屋の扉が叩かれた。
 緊張する犯人たち。
 マニーが人質の前に立ち、マッキーが警戒しながら小屋の扉を開ける。
「お、お迎えにあがりましたっ。パレードのお時間です!」
「は!?」
 高峰 結和(たかみね・ゆうわ)が立っていた。
 兎耳が緊張で小刻みに震えている。
 彼女の後ろには、カラフルな動物をあしらったパレード用のフロート。
「おいコラ待てや! 俺たちは逃走用の車両っつったよな? どこの世界にこんなド派手な逃走車両がある!」
「ああああのっ。ここは遊園地ですから。普通の車両だと逆に目立ってしまうのです」
 マッキーに首根っこを締め上げられながら、結和は必死で説明する。
「こちらとしても、お客様の混乱と失望を防ぐために通常の車は用意できなかったんです」
「それでもなぁ」
「騒ぎが大きくなるのは、お互いに本意ではないでしょう?」
「……」
「折角そんな恰好をしているのですから。パレードを装って移動していただけないでしょうか?」
「……くっ。遊園地内だけだぞ。外にでたら、改めてちゃんとした車を用意しておけよ」
「はい、もちろん」
 犯人の言葉に、ほっと胸を撫で下ろす結和。
(上手く納得させられたみたいだね。あとは、犯人の様子を見ながら人質を確保しなきゃね)
 フロート上、ヤギの乗り物に扮したエメリヤン・ロッソー(えめりやん・ろっそー)は、その様子を黙って見ていた。
 このフロート作戦は、彼の提案したものだった。
(夢を壊すような奴は放っておけないよね。……っていうか、パレードって一回やってみたかったんだ♪)
 エメリヤンの提案を受け、デスティニーランドは急遽フロートを用意した。
 それを、たまたまランドに来ていた木賊 練が整備しなおしたのだ。

「うわあー、パレードに参加できるんですかぁ!」
「ほら、だから言ったろ! これって新パレードなんじゃないか?」
「どうやらそうみたいね。こんなラッキーって、あるのかしら?」
 マニーが人質の手を取って、フロートに乗せる。
 煌びやかなフロートに大喜びの人質たち。
 それにぴったりと付き添うマッキ―とマニー。

(……くぅ。犯人め、ちっとも人質から離れようとしないよ)
 少し離れた所から、ルカルカ・ルーとダリル・ガイザック達がその様子を見て歯噛みしていた。
 彼女たちは、車両の受け渡し時に犯人と人質を分断し、犯人確保を目論んでいたのだ。
(仕方ない。もう少し様子を見ることにしよう)
(うん…… 人質の皆が楽しそうなのは、救いかなぁ)
 結和の少し震えた声が響く。
「ま、マッキ―とマニーのあにまるパレード、はっじまっるよー!」