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デスティニーランドの騒がしい一日

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デスティニーランドの騒がしい一日

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第8章 ふとどき観覧車

「あはは、楽しいねぇ鴉〜。たまにはこうやって遊園地デートもいいねぇ」
「そ、そうか……」
 満面の笑みで遊園地を満喫しているのは師王 アスカ(しおう・あすか)
 隣りにいる恋人の蒼灯 鴉(そうひ・からす)は、憔悴しきった表情をしていた。
(畜生、アスカのやつ……)
 恨みがましい目を恋人に向ける。
「次、あれいってみよう〜。絶叫限界コーヒーカップ!」
「あぁあ……」
 鴉をずるずると引きずるアスカ。 
 鴉は絶叫嫌い。
 そうと知りつつ、アスカはコースター系を中心に絶叫系のアトラクションを制覇しようとしていた。
(くそう、このままじゃ俺のライフはゼロ……ん?)
 青い顔で引きずられていく鴉は、二つの人影に気づいた。
 同時に、自分の服に付けられている機械にも。

「なあ、やっぱり止めた方がいいんじゃねえか」
「あら、何言ってるのよ。これからがいい所なんじゃない」
「だったら一人でやってくれよ」
「でもカップル限定のアトラクションもあるし……お願い、もうちょっとお姉さんに付き合って♪」
「けど……」
「後でサービスしてあげるから☆」
「……もうちょっとだけだぞ」
 アスカと鴉の後をつけているのは、オルベール・ルシフェリア(おるべーる・るしふぇりあ)とクラウド。
 鴉の落ち込んだ顔を見たいがために、オルベールは彼らを尾行していたのだ。
 運悪く、途中で巻き込まれたのは知人のクラウド。
 おかげで姉たちとは同行できず、しばらく彼女に付き合わされることになる。
 なんだかんだで彼女に逆らえないらしい。

「次は〜、あれだ!」
「まだ乗るのかよ……」
 びしりと観覧車を指差すアスカに、げそりとした声で答える鴉。
(まてよ、観覧車か……)

「ん〜、高い所から見たデスティニーランドはまた格別だねぇ。早速スケッチスケッチ……」
 恋人をほったらかして画材を取り出そうとしたアスカの手が、ふいに取られた。
 見ると、鴉が隣に座っている。
「ん?」
 鴉は、アスカの手を握りつつ視線を下に向ける。
(よしよし、ちゃんと乗ってきてるな)
 次の観覧車には、オルベールとクラウドの姿。
 服についている盗聴器を確認し、わざとはっきりした声でアスカに告げる。
「なぁ、アスカ」
「な、何?」
「せっかくの観覧車なのに、恋人そっちのけってのはあまりにもつれないんじゃねぇか?」
「え、と……」
「ちょっとは恋人らしいこと、しようぜ」
「きゃ……」
 鴉の唇が、アスカの首筋に触れる。
 舌が這い、耳へ。
「や、ちょっと、駄目ぇ……」
「今までずっと俺の言う事聞かなかった奴は、誰だ?」

『あっ……や、こんな所で……』
『やだ……ん、(耳に指を)入れない、で……』
『聞くからっ、何でも言う事聞くから、ぁ……』
『ぅん、イかない……もう、鴉の許可なく(絶叫系マシンには)イかないからぁ……』

「いやいやいやいやいや、ヤバい。あいつらもヤバいが俺もヤバい」
 アスカたちの下の観覧車でひたすら焦るクラウド。
 盗聴器から聞こえてくるアスカの甘い声。
 隣りにはやたら妖艶な美女、オルベール。
「……!?」
 殺気を感じ、隣を見たクラウドは恐怖で凍りついた。
「……バカラスめぇえ……」
 そこには、怒りと恥ずかしさと悔しさで燃え上がるオルベールの姿があった。