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【神劇の旋律】三姉妹怪盗団、参上!

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【神劇の旋律】三姉妹怪盗団、参上!
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第9章 奪い合い

 正面入口の騒ぎを聞きつけ警備陣の間に緊張が走る。
 その隙を狙って、警備の中に潜入していたセリス・ファーランドが動いた。
 ストラトス・ティンパニが置いてある広間の中央。
 客を避難誘導するフリをして、仮面をした三姉妹をティンパニの元へ誘導する。
「ああっ、怪盗さん達ですね!」
 それを目ざとく見つけたのは六本木 優希。
 慌ててカメラを回すが、走っている相手を追いかけながらなのでなかなか映せない。
「怪盗さん、なぜストラトスの楽器を狙うんですかー? 怪盗さん、怪盗さーん!」
「あんっ」
「ご、ごめんなさい……」
「ノーコメントだよー」
 優希の質問に三姉妹は止まらず走り続けるが、周囲の注目を集めるには十分だった。
「あぁー!!」
 突然、富豪の側から悲鳴が聞こえた。
「スノちゃんが変態親父に襲われてまーす!」
 ヘル・ラージャの声。
 声のした方では、メイド服の上着を破かれた早川 呼雪が胸元を押えている。
 三姉妹の危機を見て取った呼雪が、自ら服を破り富豪に襲われたように見せかけたのだ。
 周囲の注意が分散される。
「そりゃあ、良くないねぇ」
「変態親父は死んでください」
 富豪の側から、更に声ふたつ。
「ぐ……ぅううっ!」
 声の中心には、首を絞められ青くなった富豪がいた。
 連れの伏見 さくらを眠らせた斎藤 ハツネが、マフラーで富豪の首を絞めていた。
「離れなさいっ!」
 吠える志方 綾乃。
「皆さん、聞いてくださいねぇ」
 綾乃の声を無視して、ハツネは笑顔で語りかける。
「大人しくストラトス・ティンパニを渡してください。でなければこの人がどうなるか……分かりますよねぇ」
「前持ち主が奪われた大切なモノ、返してもらいます」
 天神山 葛葉が進み出る。
「そうはいきません!」
「止めろ! 依頼主を……いや、周囲の人間を巻き込むな!」
 構わず攻撃しようとする綾乃をレオン・ダンドリオンが止める。
「そうはいかぬ!」
 突然、ティンパニの警備をしていた讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)がティンパニにしがみついた。
「今です!」
 フランツ・シューベルトが携帯で合図を送る。
 それに合わせて、遠方にいる大久保 泰輔が顕仁をティンパニと共に召喚するという手筈だった。
「はっ」
 顕仁は、消えた。
 ティンパニを残して。
「あ……」
 泰輔の元には、顕仁のみ召喚された。
「……余計な事はしちゃ駄目だよぉ。あとちょっとでこの人、死ぬよ?」
「ひ、ぐ……た、たすけてくれ……」
 富豪の顔がみるみるうちに青くなる。
 ハツネは、本気だ。
「止めて……! ティンパニは諦めるから、人を傷つけるのだけは、止めて!」
「皆も動かないで頂戴!」
 ハツネの脅しに、三姉妹も足を止める。
 警備陣も動けない。
 しかし、富豪の安否など全く気にせず動く者たちがいた。
「おぉおおおお! ティンパニが俺を求めている……!」
 警備に加わっていたアキラ・アキラ(あきら・あきら)だった。
 最初は大人しくティンパニを監視していたアキラだが、次第にその美しさ希少価値に魅了されたのか、ティンパニを自分の物にしたいという欲求にとうとう自分を抑えられなくなってしまったのだ。
「ティンパニは、俺のような繊細で深くて美の分かる芸術家が持ってこそ価値のあるものだ! 誰にも渡さん、俺が持ち帰る!」
「ふざけるな!」
 アキラの言葉にレオンが怒鳴りつける。
「いや、ティンパニはオレがいただく! 理由は――暇やからやっ!」
 無駄に勿体付けて現れたのは瀬山 裕輝(せやま・ひろき)
 しかしその間に、ティンパニに向かって走る、影。
 それは獣か魔物かと誤認されるような影だった。
「いただきっ!」
 ロア・ドゥーエがティンパニを抱えると、走り出す。
 しかしその前に立ちふさがる4つの影。
「はぁ……ふぅ。影に生き、闇より忍び寄る、怪盗シャドームーン、参上っ!」
 肩で息をしながらずぶ濡れになって立っているのは、高塚 陽介。
「どの道お披露目会場に入るなら、何で崖登ったりしたんだ?」
「ま、面白かったから良いですぅ」
 納得いかない表情の新城 咲和と九断 九九。
「三姉妹、いた! 俺をお兄ちゃんと呼べッ……って、二人はオバハンかよ!」
「……誰がオバハンですってぇ?」
「む、殺気! ここはひとつ陽介を身代わりに……」
「悪いけどそれどころじゃない!」
「む……ぐぎゃ!?」
「こんな時に悪い冗談を言わないことね」
 混乱の内にトレーネに殴られたクレイ・ヴァーミリオン。
 陽介たちはティンパニ争奪戦に参入し、身動きが取れないので倒れたクレイは放置されたまま。
「いい加減にするのだ!」
 進み出たのはクロウディア・アン・ゥリアン。
「そのティンパニは私が買う予定だったもの。つまり私のものである!」
 少々気の早い結論を出す。
「ククク、ストラトス・ティンパニは世界征服の為に我らオリュンポスがいただく!」
 ドクター・ハデスも参戦する。
 本当は屋敷外で待ち伏せて盗み出されたティンパニを強奪する予定だったのだが、騒ぎに我慢しきれず出てきてしまったのだ。
「俺のだ!」
 叫ぶアキラ。
「オレのや!」
 怒鳴る裕輝。
「俺のだっ!」
 ロアが声をあげる。
 ヂヂ……
「俺だ!」
 陽介が手を伸ばす。
 ヂヂ、ヂ……
「私だ!」
 クロウディアが胸を張る。
 ヂヂヂヂヂ……
「我らがいただく!」
 笑うハデス。
「どうぞどうぞどうぞ」×5
「え?」
 ハデスの手に、ティンパニが渡される。
 そこには、導火線と……爆弾!
 どっかぁあああん!
「おぉおおおお!?」
 見事なタイミングで爆発し、ハデスを巻き込んで四散するティンパニ。
 ティンパニの欠片と共にハデスは吹っ飛んでいく。
「ぅあああ、あ……ワシの、ティンパニが……」
 ハツネに首を絞められながら、呻く富豪。
 ティンパニの入手と共に破壊を目論んでいた裕輝とクロウディアの仕業だった。
 取り合う最中に、爆弾を仕掛けたのだ。