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リアクション
「ふぅ……さすがに疲れてくるわね」
慎重に、だが確実に掘り進めてきた岩盤を見ながらアリアンナはロレンツォの顔を見上げる。
掘り進めて崩した部分は、ドワーフが見回りに来たときに怪しまれないように少しずつトゥマスがいる元の作業場に運んでいる。長時間トゥマスを一人にするのも怪しまれるので、交代で第31坑道のほうにこっそりとやってきては少しずつ掘り進めているのだが、これがなかなか進まない。
人がいないのもあるが、隠れてこそこそ作業をするにはとても難しいものであることは確かだ。
――ハイホー、ハイホー!
「……トゥマスさん、とっても元気ね」
響いてくる楽しそうな歌声に、アリアンナもつられて笑顔になる。
「さて、今日はこれくらいにしてそろそろ戻りましょうか。あまり彼を一人にしておくのも危ないですしね」
第31坑道からの戻り道、周りを確認しながらロレンツォとアリアンナが戻ってくる。
トゥマスの歌声も次第に大きくなり、機晶ランプで照らしだされる彼の影が見えた。
その時だ。
――ホーホー! ホッホー!
トゥマスの歌が唐突に変わる。
「……やば、ロレンツォ!」
あらかじめ決めておいたサイン。
ドワーフが近くに戻ってきたぞ、という合図。
しかし今31坑道付近から二人一緒に出て行くのを見られては怪しまれてしまう。
もし31坑道の見張りが厳しくなって出入りすることも出来なくなれば、外に出られるかもしれないという可能性がなくなってしまうのだ。
「ん? あとの二人はどこに行ったんだ?」
見回りに来たらしいドワーフの影がトゥマスの影とともに揺れている。
どうしたものかと岩盤の窪みに身を潜めながら様子を伺っていると、
――モグラさああああぁぁぁぁぁん!
と声が響いてきた。
声の主はモグラ牧場にいたはずの笹奈だ。
「ど、どうしたんだ」
ドワーフが慌てている笹奈を落ち着かせるようにしながら尋ねる。
「牧場の柵が壊れてて、そこからモグラさんが逃げ出しちゃったんだ!」
「何だって?!」
「大体は捕まえたんだけど、こっちの方にも逃げて来てるかもしれないからって探してもらってたんだ。ね、トゥマス」
肩で息をしながら笹奈はちらりとトゥマスを見る。
「あぁ、それならアリアンナとロレンツォに見に行ってもらってたところだ。ここを全員で離れるわけには行かなかったしな」
ドワーフが納得している様子を確認して、アリアンナとロレンツォは顔を見合わせた。
「笹奈さーん、こっちにはいないみたいだったよ」
アリアンナがとてとてと走りながらトゥマスたちのもとへと合流する。
遅れてロレンツォも坑道の奥から顔を出した。
「もし見つかったら連れて行きますよ」
「ありがとう」
「あぁ、お嬢さん。捕まえたらこっちにも連絡してくれな」
「分かりました!」
ドワーフが他の場所に向かったのを確認して、四人とも顔を見合わせる。
「危なかったね」
「ふぅ……ドキドキしちゃったわ」
笹奈とアリアンナがホッと胸を撫で下ろしながら笑う。
「でも、よくとっさにあんな嘘が出てきましたね」
「ホントだよな。俺ももーちょっと来るのが遅かったら、ドワーフのおっちゃんに何言ってたか……」
小声で感心するロレンツォとトゥマスだったが。
「……実は、モグラさん本当に逃げ出しちゃって」
「ミラクルだぜ……」
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