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リアクション
――掘って掘られて、また掘って〜
坑道の奥から聞こえてくるのは、トゥマスの楽しそうな歌声と岩盤とつるはしがあたる金属音。
トゥマスたちの掘り進めている坑道からさほど離れていない位置に、食用モグラの牧場があった。
「うわぁー、ちょっと可愛いなぁー!」
モグラにエサをあげながら笹奈 紅鵡(ささな・こうむ)が声を上げた。
「正直もっと怖いかと思ってたんだけど、こうやって見ると何だか可愛いね」
「ふふ、パラミタモグラも案外可愛いものでしょう? 食用だから、いつか食べられちゃうのはちょっと可哀想だけど……その分心を込めてお世話するようにしているのよ」
年配のドワーフとともに牧場で世話をしながら、東 朱鷺(あずま・とき)が一匹のモグラを抱えていた。
「ここではモグラとともに生きているのですね。朱鷺は何かを飼ったことはありませんし、モグラを飼ってみたら楽しいでしょうか?」
モグラが鼻をヒクヒクさせながらも東の手の中で大人しくしているのをじっと見つめていた。
笹奈と東がドワーフと話をしながらモグラのお世話をしている間も、トゥマスの楽しそうな歌声は、遠くから聞こえていた。
「なぁ、あんたたちが住んでたところってどんなところだったんだ?」
「ちょっとルルド、そんな言い方失礼だよ」
ルルドとトリネルが毎日変わらずにティータイムを過ごしているエルサーラの元を訪れていた。
「あら、そんなに地上のことが知りたいの?」
「もちろん」
「……あなたも?」
即答したルルドの隣で、どう答えたものかと悩んでいる表情のトリネルを見て、エルサーラはいいこと思いついたと手をたたいた。
「せっかくだからお茶会をしましょう! 地上の話もできるし、あぁ、ノートパソコンに写真も入っていたはずだわ。壊れてないといいのだけど」
「のぉとぱ、ぱそ?」
「シャシンって何だ?」
聞きなれない単語にルルドもトリネルも首をひねる。
最低限の機晶技術のみを使って生きる彼らには、最新の機械や技術がどれほど進歩しているのかなんていう情報が入るすべもない。
写真や映像を見せたら一体どんな反応をするのだろうか。そう考えるとますます楽しみが膨らむエルサーラだった。
「せっかくだし、ただ地上のお話だけではなんですから、美味しいお茶の入れ方や、簡単なお菓子の作り方くらいならきっと教えてあげられるわ。ペシェが」
「……やっぱり僕か」
ぽそりと呟きながらいそいそと準備を始めるために部屋へと戻っていくペシェ。
その背中が少し寂しそうに見えたとか見えないとか。
それからほどなくしてテーブルと椅子が並べられ、話を聞いた若いドワーフの女の子や外の世界に興味を持ったというドワーフが集まってきた。
「こんなに集まるようでしたら、毎日お茶会を開いても良さそうですわね。いい交流の場にもなりそうですわ」
「あー、お菓子たりるかなぁ」
予想以上の盛況っぷりに嬉しそうにするエルサーラを他所に、ペシェは増えたゲスト分のお菓子を新しく作ろうかどうかを考え始めていた。
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