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か・ゆ~い!

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か・ゆ~い!

リアクション

「ふぁあああんっ、やっ、た、助けてよ〜」
「ふぉおおおおっ、これは最高のシャッターチャンス!」
 クラゲに捕まったユーリ・ユリン(ゆーり・ゆりん)を前に、トリア・クーシア(とりあ・くーしあ)は歓喜の表情でデジカメを構えた。
 ぱしゃ。
 ぱしゃ。
 ぱしゃ。
 ユーリの痴態がトリアのデジカメに記録されていく。
 ユーリは何故かメイド服。
 海でもメイド服。
 その服の上に、クラゲの触手が容赦なく巻き付く。
 歪み、くしゃくしゃになるメイド服。
 更にはその服の下にまで触手は伸びていき……
「ひ、ひゃぁあああっ! へっ、変なとこ触るなぁっ!」
 ばたばたと手足を動かして抵抗するが、触手の進行は止まることがない。
 逆に、抵抗したユーリに攻撃を仕掛ける。
「ひゃうっ!」
 びくりと電流が走ったように痙攣する。
「あ、か、噛まれた……いた……痒い、痒い……っ」
「はぁあああ、ユーリ、ユーリってばあんなに痒がっちゃって!」
 ぱしゃ。
 ぱしゃ。
 ぱしゃ。
 トリアはマイペースでデジカメを操作している。
「と、撮ってないで助けてよぅ……」
「はっ、しまったあ!?」
 ユーリの声が聞こえたのか、ふと顔を上げ大声を出すトリア。
「トリア……」
「写真だけじゃなくて、動画も撮っておけば良かった!」
「あぁ……」
 ある意味お約束通りのパートナーの言動に、がくりと肩を落とす。
 そんなユーリの様子を見て、トリアは素敵な笑顔を向ける。
「大丈夫! 大丈夫よ! 後で私が愛情を込めて癒しまくってあげるから! うふふふふ……」
 触手の中でも開放されても、ユーリの安息の時はなかなかやって来ない、らしい。

   ※※※

「あったか?」
「ううん。見つかからない……」
 相沢 美魅(あいざわ・みみ)ディノ・シルフォード(でぃの・しるふぉーど)は、ハート・ビーチの砂浜で、名物のハートの砂探しをしていた。
「ここら辺にありそうなんだけどな」
「そうね……あっ」
「あっ……すまん」
「い、いえ」
 砂浜を探る手と手が触れ合う。
 慌てて手を引き、赤くなった顔を見合わせる。
 砂探しに誘ったのは、ディノだった。
 美魅に少しでも自分を意識して欲しくて、男として意識して欲しくて、誘ってみた。
 しかし美魅は、どこかいつもよりそっけない。
 仲間以上としては、見てもらえないのだろうか…… そんなディノの悲哀を余所に、美魅は美魅で心中多忙だった。
(ディノと二人きりなんて、初めてじゃないのに……なのに、どうしてこんなに緊張するの?)
 砂を探すはずの指が、いつの間にか砂の上でハートマークを書いている。
 そのハートマークの上に、ピンクのハートが現れた。
「ん?」
 何、と思う間もなくクラゲに絡み付かれた。
「え、え、きゃああああっ!」
「美魅っ!」
「いや、嫌、嫌っ……あ、かゆ、痒〜いっ!」
 抵抗した美魅は、あっけなく刺された。
「美魅っ!」
 走ってきたディノが、素早くクラゲの触手を美魅から払う。
 お姫様抱っこにして、その場から離れる。
「あ……ありがと、ディ……あ、か、痒いよぅ」
「礼は、助かってからだ! 今治してやるから」
(治してやる、って……)
 ディノのその言葉を聞き、美魅は急にドキドキする自分を感じた。
 美魅はこのクラゲも、その治療法も知っていた。
(治すために必要なのは、愛情、よね。愛情……ディノは、どうやって愛情を与えてくれるの、かな……)
(ああ。こんなにもドキドキするのは何故なんでしょう)
「あっ……」
 痒さと緊張で強張る美魅の体を、ディノは抱き締めた。
 きつくきつく。
 美魅の体の力が、抜けていくのが分かった。

   ※※※

「あのぉ……ねーさま?」
「ん? なんですの?」
「これって、本当に……応急処置なの?」
「勿論ですわ」
 クラゲに刺された久世 沙幸(くぜ・さゆき)は、藍玉 美海(あいだま・みうみ)に治療と称して岩陰へと連れて来られた。
 その上、ロープで後ろ手に縛られていた。
(き、期待なんかしてないんだもんねっ)
 痒みと共に湧き上がってくる体の中の熱に、沙幸の体はじっとりと汗ばんでいた。
「きゃ……!」
 美海の舌が、沙幸の肌に触れる。
「ね、ねーさま、いきなり舐めないで……」
「唾液消毒ですわ」
「そ、それよりも治療を……あん、痒い……っ」
「もう、水着が邪魔ね」
「ちょっと、聞いて……あっ、水着っ」
 いつの間にか沙幸は一糸まとわぬ姿。
 いや、後ろ手に縛っているロープが唯一彼女が身につけているモノ。
 それから、彼女の全身に広がる美海の唾液……
「あっ、あああっ、やめ……っ!」
「大声を出すと、人に気づかれてしまいますわよ」
 美海の言葉に慌てて口を閉じる。
 それでも美海の治療を素直に受け入れ難く、何度も逃げるように身を捩る。
「大人しく治療を受けないなんて、いけない子ね……」
「は、うぅっ!」
 一際強く沙幸を刺激した後、美海は舌を離す。
「あ……」
 今まで体に触れていた暖かさ、刺激が急に消え、思わず沙幸は切なげな声を出す。
「途中ですが、ここで止めてしまいましょうか?」
「あ、あ……」
「くす。答えは聞かなくても分かってますわ」
「そ、そんな事……っ」
「そんな顔しておいて、誤魔化しても無駄ですわ」
「う、あ……」
「ひと夏の素敵な思い出、作って差し上げますわ」
「あ……は、ああああんっ!」
 美海の治療は、まだまだ続きそうだった。

   ※※※

「えへへへへっ。楽しいねー」
「……あ、ああ、まあ、な」
 波間に浮き輪がプカプカ揺れる。
 浮き輪に乗っているのはご機嫌な飛鳥 桜(あすか・さくら)
 久しぶりの恋人とのデートに、気持は浮き立ちついついはしゃぎたくなってくる。
 桜に答えるアルフ・グラディオス(あるふ・ぐらでぃおす)は常日頃と変わらずクールに無愛想。
 心の中では真逆なのに、表に出せない不器用なツンだ。
 さぱーん!
「きゃああっ!?」
「桜っ!」
 突然の波に、浮き輪ごとひっくり返る桜。
 慌てて助けるアルフ。
「うー、ありがと、アルフ。あれ、浮き輪がない……あ、あんなトコに」
 先程の波で外れた浮き輪は、沖の方へ沖の方へと流されていく所だった。
「どうしよ……って、あ、アルフ」
 アルフは無言のまま、浮き輪の方へと泳いで行く。
「うーん、無愛想なんだか優しいんだか……わかんないんだぞ」
 微笑みながらアルフを見守る桜。
 と、その足に何か絡みつくものが!
「え、な、何!?」
 ぐにゃりとした感触が、上へ上へと這い上がっていく。
「え、クラゲ? ちょ、やめ、あ、あはははは!」
 たまらない感触に、思わず身を捩って笑う桜。
「……させるかぁ!」
 その様子を見たアルフが、即座にクラゲに攻撃を仕掛ける。
「このクラゲ野郎、蒸発させるぞ!!」
 怒り心頭のアルフの攻撃に、クラゲは桜を離す。
「全く、俺もまだなのに……っと!?」
 桜を手放したクラゲは、次の標的とばかりにアルフにその触手の狙いを定めたらしい。
 にゅるり、ぐにょりとした感触が、足に、体に、顔にまで登ってくるのを感じる。
「くそっ、ちょ、調子に乗るな……ひあぁ!!」
 アホ毛を引っ張られ、思わず声を上げる。
「てめっ、そんな所を……ぅああっ、や、やめっ……」
 次々と絡みつく触手に、なすがままのアルフ。
「あ……アルフ……」
(……あの格好、なんてエロい…… アダルトなアルフアダルトアルフマジアダルフ!)
 アルフに助けられ安全な場所まで行った桜は、アルフの様子を恍惚とした様子で見守っていた。
「これが攻めの気持ちか……って、何考えてんだ僕は! 僕の彼氏に何やってんだよー!」
 一瞬あっちの世界に行きそうになった桜だが、なんとか踏みとどまってアルフの救助に急ぐ。
 クラゲはアルフを堪能したのか、ひと噛みするとアルフを解放した。
「アルフー、大丈夫!?」
「う……ぐっ、か、痒い……」
 肩を落とし、涙を溜めるアルフ。
(あぁ、ヘタれちゃったかな?)
 覗き込む桜に、アルフがぎゅっと抱き着く。
「うわわ!?」
「……桜ぁ」
「おおお?」
「……痒いよぉ」
 すりすりと、桜に抱き着き、頬を摺り寄せる。
(きょ、今日のアルフは甘えん坊さんだ……っ!)