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リアクション
「わー、ぎゃー、うわー!」
「絡まれてるなあ」
「絡まれておりますねえ」
海水浴を楽しんでいたセドナ・アウレーリエ(せどな・あうれーりえ)が、イソギンチャクに囚われ絡まれていた。
一番乗りだ! と調子に乗って海に飛び込んだのが良くなかったらしい。
待ち構えていたイソギンチャクに、即座に襲われた。
それを笑顔で眺めているのは、瀬乃 和深(せの・かずみ)とベル・フルューリング(べる・ふりゅーりんぐ)。
「見てないで、助け……うわっ!? か、噛まれ……あ、ああ、痒い……っ」
「なんか、あの姿はエロい以前にあざとい感じがするな」
「全くでございます」
涙目になって悶えはじめたセドナを見て、素直な感想を漏らした和深に深く同意するベル。
何しろ、セドナは紺のスクール水着。
胸には大きく「せどな」と書いてある。
その水着が触手に絡まれ歪みひしゃぎ、更にはその中まで侵略され内側から蠢いたり。
そりゃもう大変なことになっていた。
「き、貴様ら覚えておけよー……あっ、かゆ、痒いぃいい……」
助ける様子もないパートナーたちに怨嗟の言葉を吐こうとするが、それさえもイソギンチャクの触手と与えられた痒みによって阻止される。
「うぅう……」
「……うーん、さすがにそろそろ助けるとするかな」
えぐえぐと泣き出しそうになったセドナを見て、やっと和深が動き出そうとする。
「あら、行かれるのですか」
「まぁ、妹みたいなもんだしなぁ」
本当に?
「けど、どうやって助けたらいいもんだか……」
「そういえば、聞いたことがございます」
腕を組む和深に、ベルが都合よく以前見たサイトの記述をを思い出し、説明する。
「愛情? そんなんでいいのか?」
「そのようでございます」
頷くベルに見送られ、触手とセドナの元へ向かう和深。
「うわぁああん! 痒い、かゆいかゆいかゆいぃ……」
「はいはいもう大丈夫大丈夫」
無事、触手から救助され腕の中で悶えるセドナを、和深はよしよしと撫で続けた。
「は、ぅ、う……」
次第に動きが大人しくなっている所を見ると、痒みが治まってきているらしい。
「う……ぅ」
やがて、セドナの動きが完全に停止する。
そして、小さな声が漏れる。
「……くも」
「くも?」
「よくも、笑いながら見ていたな!」
じゃきーん!
セドナの体から光条兵器が取り出される。
「あ、いや、あれは……」
「問答無用!」
弁解しようとした和深を無視して、光条兵器を振り回す!
「ひぃいいいっ!?」
逃げ出した和深を、獲物を振り回しながら追いかけるセドナ。
「……これも、ひとつの愛情なのでしょうか」
そんな二人を見て、ぽつりと呟くベルだった。
※※※
「サニー達がクラゲに襲われたそうだ。大丈夫かねえ」
「……そうですか」
マスターのベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)の言葉に、ぼんやりと答えたのはフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)。
「どうした、フレイ」
「な、なんでもありませぬ!」
いつもと少し調子の違うフレンディスを気遣って顔を覗き込むベルクに、慌てて耳と尻尾をはためかせながら誤魔化すフレンディス。
「さ、さあマスター、貴重なハートの砂なるものを探しましょう!」
そんなフレンディスの格好は、ワンピースの水着……の上に、パーカーとパレオ。
肌を晒す気も泳ぐ気もゼロの重装備に、ベルクははぁと諦めの溜息を漏らす。
そんなベルクの横で、フレンディスの耳と尻尾は相変わらずピコピコしていた。
(何故なのでしょう…… マスターが、サニーさんの事を話すのを聞いただけで、こんなに重苦しい気持ちになるなんて)
(サニーさんのことは、心配です。心配な、はずです。それなのに……)
自分でも理解できない気持ちに困惑し、ただただ苦しい気持ちだけが募っていく。
その気持ちに、目をつけられたのだろう。
フレンディスの元へ、這い寄るモノがあった。
「きゃっ!?」
「フレイっ!?」
ぶらーん。
ベルクの目前で、フレンディスは逆さになった。
イソギンチャクの触手に足を持たれ、逆さまに吊り上げられたのだ。
彼女の水着を隠すパレオとパーカーも、当然逆さに。
ひっくり返ったパレオの裾から、ちらりと。
パーカーの裾から、ちらりと。
「おぉ!」
ほんの一瞬だけ、触手に感謝するベルク。
「……ってそんな場合じゃねえっ!」
見る間にフレンディスを侵略していくイソギンチャクに向かって、ベルクは走り出す。
「はぁあっ、ま、マスター、すみませっ……んんっ」
「落ち着け、すぐ治してやる……っ」
イソギンチャクの魔の手から救い出したフレンディスを、ベルクは抱き締める。
「……っ!?」
「落ち着け。この触手の噛み跡の特効薬は、こうすることなんだ」
驚くフレンディスに、ベルクは耳元でそっと話しかける。
「え、ええ、で、ですが……あうっ、か、痒ぃ……」
「ほら、辛いだろ? すぐ癒してやるから……」
「も、申し訳……」
「しゃべらなくていいから」
ベルクの腕の中で悶えていたフレンディスは、次第に大人しくなっていった。
※※※
「うぅ……もう我慢できない。お願い、早くして!」
「あ、あぁ……」
「もう、限界なのっ!」
神崎 優(かんざき・ゆう)に、神崎 零(かんざき・れい)は懇願していた。
「お、お願いです。早く……もう画面できません!」
「お、おぉ……」
神代 聖夜(かみしろ・せいや)の前で、陰陽の書 刹那(いんようのしょ・せつな)は苦悶していた。
彼ら4人は、ハート・ビーチで夏の休日を楽しんでいた。
まずはお約束の水の掛け合い。
「きゃあっ、つめたーい!」
「ああ、今日は暑いから丁度いいな」
「ふふ。優と来れて良かった」
「……俺も、そう思う」
ピンクの健康的なビキニ姿で、優に微笑む零。
「綺麗なビーチですね」
「刹那の水着も、綺麗だ……」
「え?」
「ああ、いや、何でもない!」
「……水着だけ、ですか?」
「い、いやそういう訳じゃ!」
白いフリルのついたレースの水着で、聖夜に詰め寄る刹那。
夫婦の、恋人たちの甘い時間を満喫する。
その後は優と零、聖夜と刹那とに分かれてのビーチバレー。
幸せな、夏の一日は平和に過ぎていくかのように見えた。
だけど、そんな筈はない。
彼らにも平等に、イソギンチャクの魔の手は迫っていた。
「きゃああああ!」
「やぁああああ!」
ピンク色の触手は、的確に女性陣だけを捕え絡みついた。
目の前で、愛する女性が囚われていくのを目の当たりにする優と聖夜。
「な、何をする!」
「刹那を離せえっ!」
一瞬の驚きの後、即座に反応する二人。
優と聖夜、脅威のコンビネーション。
聖夜が触手を攻撃し怯んだ隙に、優が触手をこじ開ける。
零を抱きしめ脱出する優と、刹那を抱え上げ逃走する聖夜。
触手の魔の手から、二人は解放された、かに見えた。
しかし触手の毒は、確実に二人を蝕んでいた。
「あ、か、痒い……」
「痒い、です……」
絡まれた際、抵抗した二人はイソギンチャクに噛み付かれていた。
噛まれた痕を押え、呻く。
「うぅ……もう我慢できない。お願い、早くして!」
「お、お願いです。早く……もう画面できません!」
涙目で苦しむ零と刹那。
ぎゅうっと、零は優に、刹那は聖夜に抱き付く。
「あ、あぁ……」
「お、おぉ……」
愛する女性にあられもない姿で抱き付かれ、動揺を隠せない男性陣。
しかし、優も聖夜もこの症状を癒す方法を知らなかった。
「あぁ、掻くんじゃない。毒が回っている可能性もある」
「じゃあ、どうすれば……」
「辛いかもしれないが、我慢してくれ」
「う、うん」
「ん……っ」
弱々しげに頷く。
そんな彼女たちを見ていると、愛おしさと同時に己の無力さへの怒りがこみあげてくる。
「くそっ!」
普段見せない激高。
優は、零を抱き締める。
強く強く。
「必ず、必ず治してみせる!」
聖夜も、刹那を抱き締める。
「俺が、必ず助ける!」
二人の腕の中で、零が、刹那が、次第に安らぎを取り戻していった。
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