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アキレウス先生の熱血水泳教室

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アキレウス先生の熱血水泳教室

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「肝心のアキレウスが何処かに消えてしまったようだが」
 と、アルビダ・シルフィング(あるびだ・しるふぃんぐ)は冷静に続ける。
「これこそが最終……上級訓練だ。
 海獣の魔の手を避けて全力で向こう岸まで泳ぐ。
 スピードと俊敏さ、忍耐力と持久力の向上が目的だ」
 胸元結びの白のパーカーを脱ぎ捨てると、赤の紐ビキニに黒のホットパンツ姿になったアルビダが手本を見せる為プールへと飛び込む。
 スタートからゴール迄大体50メートルの距離を、海獣の触手攻撃を全てはね除けてアルビダは渡りきった。
「そう、この訓練をクリアする事は不可能ではない。
 さあ、皆向こう岸を目指せ!!」

「皆! こっちだよ!」
 岸の近く。ルカルカがプールの上から、ダリルが水中からそれぞれ銃を撃って訓練生の帰還をサポートする。
 二人の正確な射撃により、訓練生に近付く触手は寸での所で撤退させられていた。
「私達が道を作るから! そのまま進んできて!」
 ルカルカの声に導かれて、プールの中に残された者達は触手に絡めとられない様に密集体形を取り始めた。
「ジゼルさん!」
「姫星、無事だったのね」
「ひ、酷い目に遭いましたがなんとか……
 皆さんお揃いで何よりです」
「おい、挨拶は後だ。もう向こう岸にはもう辿り着いているヤツも居る。
 俺達も行くぞ!」
 海の合図で密集していた陣形が一斉に向こう岸に向かって動き出す。
「動き出したわ
 ランプの魔人よ、皆を守りなさい!」
 ルカルカは魔人のランプから魔人を呼び出す。
 魔人は彼女の命に従って一直線に海獣へ向かうと、その頭を両腕で押さえつけた。
「これで追ってくるのは触手だけ。
 今のうちに逃げ切って!」



 ルカルカの思いや虚しく、逆走していく訓練生がいる。
「むうっ!
 皆が水泳の特訓をしている時に人々を襲うとは不届き千万!
 この蒼空戦士ハーティオンが相手だ! 行くぞ!」
 コア・ハーティオンは剣を手に、相変わらず水中に沈みながら進んで行く。
「ゆっくりと歩いていては誰かが被害にあってしまう!
 スピード……今こそ教官達から教わった水泳の技術を使う時だ!」
 コアはクロールをすべく身体を沈めて両手を前に突き出し足をばたつかせようとするが、その足が動かない。
 見てみると足に、触手が絡み付いていた。
「む! なんだこの触手は?!
 むおおーっ!」

 キュ。 ポイ。

 コアは流れるプールまで飛んで行き、矢張り流れないまま沈み続けた。



――海くんの動きをまねして、私も速く泳がなきゃ!!
 杜守 柚は海の斜め後ろを泳ぎながら進んでいた。
 そうする間にも触手は迫ってくる。
 海は痺れを切らして、柚に向かって叫んだ。
「柚、いいから俺の肩に掴まれ!」
「え、でも……」
 困っている柚に向かって、次百 姫星の首根っこを掴みながら泳いでいた鬼道 真姫は言う。
「あんた、訓練は大事だ。でもコレは流石にやり過ぎだよ。
 ここはそいつの言う事を聞いてさっさとゴールしちまいな」
「はい!」
「真姫さん優しいんですね」
「上達する気があるやつにはね!」
「私の方は全然上達してませ……ちょっ、スピードあげないで、溺れる!
 ごほっ 溺れ……
 ぎゃっ!? ちょ、えっ、何ですかこれ!? いや、そこは駄目!?」
「はああ……情けないねぇ」
 真姫は神速のスピードで全力ダッシュをすると、海獣の懐に入りアッパーカットを食らわせ姫星を助ける。
「あああ、学校指定の水着がぁ……」
「今は逃げる事が先だろ!」
 真姫に言われて一度は自分の水着を諦めた姫星――気遣いの人咲耶のお陰で光り渡し状態――だったが、優秀な教官アルビダがいつの間にか剥ぎ取られた水着を回収してくれていた上、
恥辱を乗り越えて渡りきった訓練生に祝福を込めて渡そうと、向こう岸で待っていてくれた。
 無事に着替えをすませ一息ついたところで、姫星は真姫に聞いてみる。
「そういえばあれ、”食べられそう”でしたか?」

「どうだろうね。少なくとも見た目は烏賊だったけど」



 姫星からめとられ事件があった時、密集体形は崩れ二つに分かれてしまっていた。
 ジゼルが必死に藻掻いて進んでいるのを、瀬山 裕輝(せやま・ひろき)はノロノロ泳ぎで見ながらアドバイスを投げる。
「ほら、
 バーッと泳いで
 グワーッと足掻いて
 ガバーッと息継ぎすればえぇ話やん」
「全くわけがわからないわ!
 というか裕輝いいの? あそこで妹さん何か凄い目にあってるけど」
「あー?」
 ジゼルに言われて裕輝はやっと振り向いて、自分の妹が触手に捕われて襲われている姿を目にする。
 古い言葉で言うといやーんばかーん的ハプニングが起こっているのは分かったが……


 こう言う時に兄として如何行動すべきか。

「じゃあもうちっとだけ追加しくか」
 とりあえずありったけのクラーケン娘。をバラまいておいた。
「何しとんじゃこのアホ兄!
 ここボケるとこちゃうやろ!」
 瀬山 慧奈(せやま・けいな)は足を掴まれ逆さまになりながらも、突っ込みをかかさない。
「そもそもこんなプールにあんたが連れてきたんやないの!
 兄としてきちんと妹を助けなあかんやろがこのボケ兄!!」
「いやいや、俺がプールで見たいのは妹のしょーもない姿やのーて、
 女性のでっかい……でっぱ………
 んっうん、尻も悪くないよ」
「ちょっ裕輝、私のお尻見てる!?」
「見てへんよジゼルちゃん。
 ちーとも見てへんし、あーこのコ胸より尻がええわなんてしみじみ思てへんし」
「やだもう!
 っていうかなんか……むずむず……」
 ジゼルは何かの異変に気づいて身体をくねらせる。
 暖かさを求めて。かどうかは知らないが、彼女の水着の中に裕輝がバラまいたクラーケン娘。達が侵入してきていたのだ。
「やっやだ、くすぐった……ひゃ!」
「へっへっへー。
 おっちゃんが取ってあげてもええんやでおじょうちゃん」
「棒っぽく笑うなー!
 あとエロいオッサンみたいな動きやめてー!」
「うーん、眺めたい。
 いや、やっぱ絡みたい」
「もうこの際どっちでもいいからイカさんたち退けてえ!」

 こんな具合でノリと勢いに任せてジゼルを弄っている為一向に助けに来ない兄に、慧奈の怒りが爆発した。
「こんんのアホ兄が!!!!」
 でも今日は特に何も装備していないので、彼女は逃げ出す事も出来なかったのでした。



 触手に吹き飛ばされたアキレウスは微睡む意識の中で、何かピンク色のもやもやを捉えた。
ラブ・リトル(らぶ・りとる)?」
「あ。目が覚めた?
 はろはろーん♪
 蒼空学園のNo1アイドル(自称)ラブちゃんよ〜♪
 あたしは今回はね〜♪

 ……見学に決まってんでしょ。誰が入るかこんなプール。

 てゆーかねアキレウス!
 海獣が”潜む”プールって触れ込みだけど、見えてるから!
 最初から隠れてないから海獣!
 めっちゃ女の子吟味してるから!
 せめて違和感を隠す努力をしなさいよ!
 これで入る気になると思ってんの?!」
「じゃあなんで水着を……」
「こういうシナリオでも無いと着る機会無いのよ!
 だいたい、水つったら沈める気満々のカオスなシナリオが多いのよ!
 触手率が高いのよ! 触手率が!
 たまには安心して泳がせなさいよ!」
「あ、ああ……すまなかった?
 ……
 そういえば他の参加者は!? 訓練生達はどうなった!!?」
「……今更ねー……
 当たり前だけど皆戦ってるわよ」